返却用紙
試験最終日。最後の科目の終了のチャイムが鳴ると、教室中に大きなため息が漏れた。
「やっと終わった……!」
誰かが叫び、それに続くように数人が拍手をする。廊下からも他のクラスの歓声が聞こえてきて、学校全体が一気に解放された雰囲気に包まれる。
千尋も思わず伸びをしながら机に突っ伏した。
「終わった……終わったぁ……」
隣の奏汰を見ると、彼は特に感慨もなさそうに腕を組んで座っていた。
「そんなに疲れたか?」
「そりゃあ、こんなに勉強したの久しぶりだし……。奏汰は?」
「まぁ、普通?」
「普通って……試験だよ?」
「別に試験だろうが日常だろうが変わんなくね?」
千尋は「はぁ……」とため息をついた。彼のマイペースぶりには、もう何度驚かされたかわからない。でも、そんな奏汰がなんだか少し羨ましくも思えた。
周りでは、すでに「できた」「できなかった」の感想戦が始まっていた。
「俺、今回の数学マジでやばいんだけど」
村瀬が机に突っ伏しながら愚痴をこぼす。
「俺も。もう結果見たくねぇ……」
「次の休み、みんなで遊びに行かね?試験のこと忘れようぜ!」
「それな!」
少しずつ、試験明けの開放感が教室に広がっていく——。
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テスト返却の日
試験が終わった翌週、ついに答案が返ってくる日がやってきた。
「今から答案を返すぞ」
担任の先生がそう言った瞬間、教室は一気に静まり返る。みんな緊張した面持ちで前を見つめていた。
先生が一枚ずつ答案を配るたびに、教室のあちこちから「やった!」「終わった……」と様々な声が上がる。
「葦根」
悠人の名前が呼ばれると、彼は静かに答案を受け取った。そして、さっと目を通すと、特に表情を変えることもなく答案を重ねた。
「……まぁ、こんなもんか」
その様子を見ていたクラスメイトが、横から答案を覗き込んだ。
「え、すげぇ……!全教科90点以上じゃん!」
「マジかよ……さすが葦根……」
「天才か?」
周囲のどよめきにも、悠人は「別に」と言わんばかりの淡々とした態度だった。
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「夜桜」
千尋も答案を受け取ると、緊張しながら確認した。
「やった、結構いい点取れた!」
思わず小さくガッツポーズをする。しかし、次の瞬間、数学の答案を見た途端に微妙な表情になった。
「うーん……数学だけ80点台かぁ……」
隣で答案を見ていた奏汰が、何気なく肩をすくめる。
「それでも十分じゃね?」
「でも、あとちょっとで90だったんだよ……!」
千尋は悔しそうに唇を噛む。すると、奏汰が軽く笑った。
「まぁ、90点以上取れたら偉いわけでもねーし」
「それはそうだけど……」
「次、また頑張ればいいんじゃね?」
奏汰の言葉は、どこか軽いようで、妙に説得力があった。
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「呉挿」
奏汰も答案を受け取り、ちらっと目を通すと、適当に机の上に置いた。
それを見た村瀬が、「お前、どうだった?」と何気なく尋ねる。
「んー、まぁまぁ」
「ちょっと見せて」
村瀬が答案を覗き込み、次の瞬間、驚いたように目を丸くした。
「お前、意外とできるじゃん!」
「適当にやったわりにはな」
「適当って……これ、全教科85点じゃねぇか!?」
「まぁ、そんな感じ」
奏汰は特に気にする様子もなく、答案をしまう。
「絶対適当じゃない……」と千尋は内心ツッコミを入れたが、彼の性格的にこれ以上追及しても無駄だと思い、苦笑いするだけにとどめた。
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「小野寺」
咲良も答案を受け取り、すぐに中身を確認した。そして、ほっと息をつく。
「よかったぁ、赤点じゃなくて!」
隣のクラスメイトが「それでいいの?」と笑いながらツッコむと、咲良は元気よく答えた。
「十分だよ~!次も頑張る!」
しかし、そのやり取りの隣で悠人は何も言わずに答案を片付けていた。その様子を見た千尋は、少しだけ気になった。
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試験後の放課後、これからの話
試験が終わり、放課後。
「テストも終わったし、何かしたいよな!」
村瀬がそんな提案をすると、クラスメイトたちが次々に「いいね!」「カラオケ行く?」と盛り上がり始めた。
千尋もその話を聞きながら、ふと悠人と咲良の方を見る。
咲良はいつも通り笑顔を浮かべていたが、悠人はどこか上の空で、表情が硬かった。
(……やっぱり、二人、ちょっと変かも)
そんなことを考えながら、千尋は試験が終わったばかりの放課後の教室をぼんやりと眺めていた。




