近接終幕
文化祭も終盤に差し掛かり、校内の熱気は最高潮に達していた。
各クラスの出し物もピークを迎え、千尋たちのクラスのお化け屋敷も、相変わらず長蛇の列が続いている。
「あともう少しで終わりだね」
千尋が深呼吸をしながら呟くと、隣にいた奏汰が腕を組んだまま頷いた。
「ラストスパートだな」
クラスメイトたちも疲れを見せつつ、どこか高揚感に満ちていた。
「最後まで頑張ろう!」という空気が自然と生まれ、まるでひとつのチームのように団結しているのを感じる。
「じゃあ、俺は裏方のチェックしてくる」
そう言って、奏汰がすたすたと奥へ向かった。
彼は文化祭が始まってから、ただの出演者としてだけでなく、裏方としても的確な指示を出し、みんなを支えていた。
「奏汰ってこういうとき、めっちゃ頼りになるよね」
千尋がぽつりと言うと、受付でお客さんを誘導していた咲良が微笑んだ。
「うん、なんだかんだ言ってすごく気が回るよね。悠人ともうまく連携してるし」
「え、悠人と?」
「あれ、見てみなよ」
咲良が顎で示した先を見ると、お化け屋敷の裏手で奏汰と悠人が話していた。
「……なんか意外な組み合わせ」
今まで微妙な距離感があった二人だが、文化祭の運営においてはそんなことも言っていられないのだろう。
◆◇◆
「この仕掛け、少し動作が遅れてるな」
奏汰は懐中電灯を片手に、装置の動作を確認していた。
お化け屋敷の中には、扉が勝手に開いたり、突如大きな音が鳴ったりする仕掛けがあるのだが、どうやら一部がタイミング通りに動作していないようだった。
「それ、朝はちゃんと動いてたんだけどな」
悠人が少し眉をひそめる。
「たぶん、何回も使ったせいでセンサーがズレてきてる。ちょっと調整するから、支えてくれるか?」
「ああ、わかった」
悠人がしゃがみ込み、奏汰が慎重にネジを締め直す。
「これでいけるか……?よし、試してみるぞ」
悠人がスイッチを押すと——ガタンッと大きな音を立て、扉が勢いよく開いた。
「おお、ちゃんと動いた!」
「……やっぱり、お前こういうの得意なんだな」
悠人がぽつりと呟くと、奏汰は軽く肩をすくめた。
「まぁな」
二人の間に少しの沈黙が流れたが、それは不思議と悪いものではなかった。
◆◇◆
文化祭終了まであと一時間。
「よーし!ラストスパート、頑張るよ!」
クラスメイトたちの士気も最高潮に達していた。
そんな中——
バキッ
突然、嫌な音が響いた。
「……え?」
みんなが声のする方を見ると——
お化け屋敷の天井に取り付けていた装飾の一部が、崩れかけている!
「まずい!」
「早く支えないと!」
崩れた装飾が落下する寸前、悠人と奏汰が駆け寄り、それを支えた。
「なんで今崩れるんだよ……っ!」
「たぶん、何度も揺れて固定が緩んだんだ!」
クラスメイトたちが慌てて補強しようとするが、なかなかうまくいかない。
「ちょ、どうすれば……!」
「落ちる前に、ロープで固定しないと……!」
混乱するクラスメイトたちを見て、奏汰がすぐに指示を出した。
「悠人!俺が押さえてる間に、あそこのロープをこっちに回せ!」
「わかった!」
悠人が素早くロープを手に取り、装飾を支えるように巻きつける。
「咲良!ガムテープあるか?」
「ある!今持ってくる!」
みんなが息を切らしながら協力し、なんとか装飾を元の位置に固定することに成功した。
「……っ、なんとか間に合った……!」
みんなが安堵のため息をつく。
奏汰は最後にネジを締め直し、装飾の安全を確認すると、ようやく力を抜いた。
「……よし、これでいける」
「奏汰、悠人、ありがとう!二人がいなかったら大変なことになってたよ!」
クラスメイトたちが拍手を送ると、奏汰と悠人は少し照れくさそうに顔をそらした。
「別に、大したことじゃねぇよ」
「まぁ、無事ならそれでいい」
悠人も頷きながら、少し笑った。
(……珍しく、二人とも息ぴったりだったな)
千尋はそんな二人の姿を見て、少し微笑んだ。
◆◇◆
そして、ついに——
文化祭終了10分前。
お化け屋敷は最後の来場者を迎え、クラスメイトたちは一丸となって盛り上げていた。
終わりが近づいているという寂しさと、やり切る達成感が入り混じる時間。
「最後まで、全力で!」
そう言って、みんなが一致団結する瞬間だった。
そして、フィナーレへ——




