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補修昇華

 バチンッ!!


 突然、室内から大きな音が響き、クラスメイトたちがざわめいた。


「えっ、何!?」


「ちょっと待って! なんか仕掛けが……」


 直後、お化け屋敷の内部で誰かが転ぶ音が聞こえ、さらに悲鳴が響く。


「マズい! ちょっと見てくる!」


 奏汰がすぐさま中に駆け込むと、仕掛けの一部が意図せず倒れてしまっていた。そして、その近くで、後輩の男子が焦った様子で立ち尽くしている。


「ご、ごめん! ちょっとタイミング間違えて、糸を引っ張るのが早すぎたみたいで……!」


 彼の担当していた「幽霊が飛び出す仕掛け」は、強く引きすぎたせいで固定部分が外れ、結果的に倒れてしまったようだ。


「大丈夫か!? 誰かケガしてないか?」


「大丈夫、ぶつかってない!」


「でも、これ直せるの……?」


 クラスメイトたちが慌てる中、奏汰は素早く状況を確認し、冷静に指示を出した。


「壊れた部分は一旦使えないから、ここは別の演出でカバーする。お化け役は手持ちの懐中電灯を使って、不規則に光を当てることで不気味な雰囲気を作ってくれ。それから、仕掛けを手動で動かせるところだけ動かして、違和感を減らそう」


「なるほど……! わかった!」


「幽霊役、次のグループが来るまでに位置を変えて!」


 奏汰の素早い対応で、何とかトラブルは最小限に抑えられた。


 外で様子を伺っていた千尋と咲良もホッとしたように顔を見合わせる。


「……ほんと、こういうときの奏汰ってすごいよね」


「うん。なんか、頼れるっていうか……すごく冷静」


 その後、お化け屋敷は無事に再開し、来場者たちは何事もなかったかのように楽しんでいた。


 しかし、一つだけ違ったのは——


「ちょっと、なんで仕掛け壊れたのに、さっきのグループもめちゃくちゃ怖がってたの?」


「それはたぶん……」


 奏汰が、壊れた仕掛けの代わりに取り入れた新たな演出が、想像以上に怖かったからだった。



 仕掛けのトラブルを乗り越え、お化け屋敷は無事に再開した。


 奏汰の的確な指示で、壊れた部分をカバーするために手動演出を増やし、さらに恐怖感を高める工夫が施された結果——


 「きゃあああああ!!」


 「や、やばい! こっち来る!!」


 「ちょっ……待って、もうダメ!!」


 元々の演出以上にリアルな恐怖体験が提供され、来場者たちの悲鳴が絶え間なく響くことになった。


 クラスメイトたちも最初は焦っていたが、次々と怖がるお客さんの様子を見て、「これ、逆に成功じゃない?」と前向きに捉え始めていた。


 そんな中——


 「えっ、私も入るの……?」


 千尋が、顔を引きつらせながらお化け屋敷の入り口に立っていた。


 千尋はお化けやホラーが大の苦手だ。準備の段階でも、ホラーテストの時点で軽く絶叫していたほどだ。


 しかし、受付の当番が交代になり、次の役割として「実際にお化け屋敷の中を体験して、改善点を探る」ことを任されたのだった。


 「大丈夫、ちゃんと知ってる人がいるし」


 「そ、そういう問題じゃなくて……」


 千尋がためらっていると、奏汰がさりげなく声をかけた。


 「千尋、行けるか?」


 「む、無理……って言いたいけど、やらないといけないんだよね……?」


 「まぁ、一応な」


 奏汰は軽く肩をすくめながら、千尋の横に並ぶ。


 「一人じゃ怖いなら、俺も一緒に入るか?」


 「えっ……?」


 千尋が驚いたように奏汰を見上げる。


 「俺も中の演出、全部は把握してないしな。ちょうどいい機会だろ」


 奏汰はどこか楽しげな表情を浮かべながら、入り口に足を向ける。


 「……それなら、頑張る」


 意を決した千尋は、奏汰とともにお化け屋敷の暗闇へと足を踏み入れた。


 ——数分後。


 「きゃああああ!! ちょっと待って、無理無理無理!!」


 「おい、そんなに掴むなって……!」


 中から響く千尋の悲鳴と、若干困ったような奏汰の声。


 受付にいた咲良と悠人が、それを聞いて苦笑し合う。


 「千尋、大丈夫かな……?」


 「まぁ、奏汰がいるし大丈夫だろ」


 「むしろ奏汰が大丈夫じゃなさそうなんだけど……」


 二人がそんなやり取りをしている間も、お化け屋敷は順調に恐怖を提供し続けていた。

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