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屋敷開会

 文化祭の朝は、いつもの登校時間よりも少しだけ早い。

 教室に向かう階段を駆け上がると、すでに数人のクラスメイトが集まっていた。教室の扉を開けた瞬間、にぎやかな声が飛び交い、準備の熱気が伝わってくる。


「おはよう、千尋!」

 元気よく手を振る咲良の声に、千尋は笑顔で応える。


「おはよう、咲良。もう結構みんな集まってるね」


「うん! 開場まであと少しだし、最終チェックしないとね!」


 教室の中央には、昨日までの準備の成果が広がっていた。お化け屋敷のセットが完成し、ダンボールや黒い布で作られた通路が張り巡らされている。壁にはクラスメイトが描いた不気味な絵や、LEDライトで照らされた怪しげな装飾が施されていた。


 千尋は深呼吸をして、お化け屋敷の入り口を見つめる。


「……これ、本当に怖くない?」


 苦笑いしながら言うと、隣にいた奏汰が肩をすくめた。


「大丈夫だろ。自分たちで作ったんだから、驚く要素もだいたい分かるし」


「でも、昨日のリハーサルで悲鳴あげてなかった?」悠人が軽く笑いながら言う。


「そ、それは! あまりにもリアルだったから……」


 千尋が慌てて言い訳をすると、咲良も「確かに千尋の反応、一番良かったよね」と笑う。


「それだけ完成度が高いってことだな」奏汰が少し得意げに言った。


「それにしても、ちゃんとお客さん来るかな……」千尋は少し不安そうに呟く。


「そこは心配いらないよ!」咲良が力強く言う。「お化け屋敷は人気あるし、他のクラスも宣伝してたし!」


 悠人が頷きながら、スマホを見せる。


「ほら、もうSNSでも『〇〇高校文化祭・お化け屋敷』って投稿されてるぞ」


「本当だ!」


 千尋は思わずスマホの画面を覗き込み、期待と緊張が入り混じる。


 その時——


「開会式が始まるぞー!」


 誰かの声に、一斉に生徒たちが動き出す。みんなで体育館へ向かい、文化祭のスタートを迎える。


 そして、戻ってきた頃にはすでに校内には多くの来場者が訪れていた。教室の前に立てた看板には「お化け屋敷 開幕!」の文字が大きく書かれ、すでに何人かの生徒が並び始めている。


「よし、いよいよ本番だな」


 奏汰の言葉に、千尋は改めて気を引き締める。


「うん! 頑張ろう!」


 こうして、文化祭の一日が幕を開けた——。



 ついに文化祭が始まり、校内は活気に満ちていた。模擬店の呼び込みの声、ステージ発表のリハーサル音、お祭りムードに包まれた生徒たちの笑い声があちこちから響いてくる。


 そんな中、千尋たちのクラスでも、お化け屋敷のオープン準備が整っていた。


「じゃあ、いよいよ開店するよー!」


 咲良の声に、クラスメイトたちが大きく頷く。扉の前にはすでに来場者の姿があり、予想以上に盛況だった。


「すごい……もう並んでる」千尋は驚きの声を漏らす。


「人気出るとは思ってたけど、こんなに早く行列ができるとはな」奏汰も感心したように腕を組む。


「さぁ、最初のお客さんをご案内しまーす!」


 悠人が受付に立ち、最初のグループを中へと誘導する。最初にやってきたのは、他のクラスの男子三人組だった。


「おー! なかなか雰囲気あるじゃん!」


「まぁ、どうせそんなに怖くないんでしょ?」


 余裕そうな表情の彼らに、クラスのホラー演出担当のメンバーが不敵に微笑む。


「それはどうかな……覚悟して入ってね?」


 千尋は入り口で見送る側だったが、自分たちの作ったお化け屋敷の初めての反応が気になり、思わず息をのむ。


 ——数分後。


「うわあああああああ!!!」


 廊下に響き渡る悲鳴とともに、先ほどの男子三人組が教室から飛び出してきた。


「お、おい……! 聞いてねぇよ、あんなの!」


「マジで心臓止まるかと思った……!」


「ちょっと待て、後ろに誰かいる……!」


「は!? 嘘つくな!!」


 最後の男子が涙目で叫びながら走り去るのを見て、クラスの皆が大爆笑する。


「え、そんなに怖かった?」千尋は呆然としながら尋ねる。


「いやぁ、想像以上に成功してるっぽいな」奏汰がニヤリと笑う。


「やったじゃん! これは大盛況間違いなしだね!」咲良も嬉しそうに声を上げた。


 その後も続々と来場者が訪れ、どのグループも大なり小なり驚きのリアクションを見せていた。


「これならクラスの出し物、大成功だね!」


 千尋もようやくホッとしたように笑う。だが、この後、さらに予想外の出来事が待っているとは、まだ誰も知らなかった——。



 文化祭が本格的に動き出し、クラスの出し物であるお化け屋敷も予想以上の人気を博していた。次々と訪れる来場者たちの悲鳴と笑い声が廊下に響き、クラスメイトたちの士気も高まっていた。


「おい、次のグループ通して!」


「はい! じゃあ、三人組の方、どうぞー!」


 受付係の悠人が手際よく客を案内し、演出担当が内部の仕掛けを操作する。


 そんな中、奏汰は裏方として的確な指示を出し、スムーズな運営を支えていた。


「こっちのルートが詰まってるから、次のグループは右側のルートに回してくれ」


「お化け役、次のタイミングで出るの早すぎるから、もう少しゆっくりな」


「悲鳴が上がったら、一拍置いて次の仕掛けを動かせ。そうしたら驚かせる効果が倍になる」


 奏汰の的確な采配によって、お化け屋敷は想定よりもスムーズに回り始めた。クラスメイトたちも、彼の指示に従いながら、それぞれの役割をこなしていく。


 「奏汰って、こういうときほんと頼りになるよね」


 千尋が受付の片隅で感心したように呟くと、隣にいた咲良も頷いた。


「そうだね。普段はちょっと飄々としてるけど、こういうときはめちゃくちゃ冷静に仕切ってるし」


「本人は楽しんでるのかな……?」


 二人がそんな話をしていると——


 バチンッ!!


 突然、室内から大きな音が響き、クラスメイトたちがざわめいた。


 

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