文化祭準備
体育祭が終わり、学校は次の大きなイベント――文化祭に向けて動き出していた。
体育祭の熱が冷めやらぬまま、クラスでは文化祭の出し物を決めるための話し合いが行われていた。
「今年の文化祭、三年生以外のクラスは飲食系の出し物が禁止されてるんだよな」
「そうなんだよなー、焼きそばとかクレープとかやりたかったのに」
「だったら、お化け屋敷とかどう? 定番だけど、毎年盛り上がってるし」
クラスの中心で仕切る委員長が、そう提案すると、何人かが興味を示した。
「お化け屋敷か……楽しそうだけど、大変そうじゃない?」
「いやいや、逆に作る過程が面白そうだし、やるならガチで怖いの作ろうよ!」
「小道具とかも必要だし、結構準備大変そうだな」
「でも、体育祭のノリでみんなで頑張れば、絶対いいものができるよ!」
賛成派の声が徐々に大きくなり、自然とクラスの空気は「お化け屋敷」に傾いていく。
「反対意見の人、いる?」
委員長が確認するが、大きな反対はなかった。
「よし、じゃあクラスの出し物はお化け屋敷で決定!」
拍手が起こり、クラスの雰囲気が一気に文化祭モードへと切り替わる。
奏汰は後ろの席で話を聞きながら、隣の千尋の様子をちらりと見る。
千尋は少し浮かない顔をしていた。
「お化け屋敷、苦手?」
「……ちょっとね」
千尋が苦笑いしながら答える。
「ホラー映画とかもダメなタイプ?」
「うん、あんまり得意じゃない。怖すぎると本当にダメで……」
奏汰はふと思い出した。夏に一緒に観に行ったホラー映画のときも、千尋は終始ビクビクしていた。
(まあ、ホラー苦手な人からしたら、お化け屋敷もなかなかハードル高いか)
そんな千尋の反応を横目に、前の席では悠人と咲良が会話をしていた。
「お化け屋敷って、どんな演出する? やっぱりリアル系?」
「リアル系もいいけど、びっくり系もアリじゃない?」
「ふふっ、怖がってくれるといいね」
咲良は楽しそうに話していたが、悠人は少し考え込むように視線を落とす。
咲良が怖がる様子を想像して、何かを思ったのかもしれない。
「さて、それじゃあ準備を進めていこう!」
委員長の声が響き、文化祭の準備が本格的にスタートする――。
文化祭の出し物が「お化け屋敷」に決まって数日後、クラスではさっそく準備が本格的に始まっていた。
放課後、教室に残ったクラスメイトたちは、それぞれの役割に分かれて作業を進めていた。
「ねぇ、このクモの巣の飾りとかどう?」
「いいね! 入口のところに飾れば、それっぽくなるんじゃない?」
装飾担当の生徒たちがダンボールや布を使って、お化け屋敷に必要なアイテムを作っている。
一方、奏汰は工具を手にしながら、千尋とともに仕掛けの準備をしていた。
「この板、ちょっと押さえてくれる?」
「うん、こう?」
千尋が木の板を抑え、奏汰が釘を打ち込んでいく。
「お前、こういう作業慣れてるな」
「まぁね。小さい頃からこういうの好きだったし」
千尋が感心したように微笑む。
「でも、思ったより大掛かりなセットになりそうだね。これ、本当に完成するのかな……?」
「まぁ、時間はかかるかもしれないけど、みんなでやればどうにかなるだろ」
奏汰が楽観的に言うと、千尋も少し安心したように頷いた。
周りを見渡すと、悠人と咲良は別の作業をしていた。
「ねぇ悠人、この布をかぶったら幽霊っぽく見えるかな?」
「いや、それはただの白い布だろ」
「そっかぁ……もっとリアルな仮装を考えないとね」
咲良は楽しそうにしているが、悠人はどこか考え込むような表情をしていた。
そんな中、教室の前に先生が現れる。
「お前たち、文化祭の準備、かなり気合入ってるみたいだな」
「はい! 今年は絶対に成功させたいですから!」
委員長が胸を張って答える。
「よし、なら特別に許可を出す。お前たちがしっかり後片付けをするなら、夜遅くまで作業していいぞ」
その言葉に、クラスメイトたちは一気に盛り上がる。
「やった! これで一気に作業が進むね!」
「でも、夜遅くって……本当に大丈夫なの?」
千尋が不安そうに呟くが、咲良が元気よく答える。
「大丈夫だよ! みんなでやれば怖くないし!」
だが、千尋の表情は複雑だった。
(夜のお化け屋敷の準備……絶対に怖い展開になりそう)
こうして、文化祭準備の夜間作業が正式にスタートすることになった――。




