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団結応援

 午後の日差しが強さを増し、グラウンドには熱気が渦巻いていた。体育祭も終盤戦に突入し、クラスメイトたちは次々と競技に挑んでいる。

 そんな中、次の種目「借り物競走」のアナウンスが流れると、観客席からも大きな歓声が上がった。


「おっ、ついに咲良の出番か」

 奏汰がプログラムを確認しながら呟くと、隣で悠人も腕を組んだ。


「借り物競走って、運次第のところもあるよな」

「まぁ、そうだな。でも、咲良なら上手くやりそうじゃね?」


 二人がそんな話をしていると、スタートラインに立つ咲良が軽く準備運動をしながらこちらに手を振ってきた。


「頑張れよ!」

「お題次第だな!」


 応援の声に、咲良はニッと笑い返した。そして、笛の合図とともに競技がスタートする。



 各選手が一斉にダッシュし、ランダムに置かれたボックスから自分の借りるものが書かれた紙を引く。

 咲良はすぐにボックスに手を突っ込み、紙を開いた。そして、その瞬間──彼女の動きが止まった。


「……え?」


 僅かに目を見開いた咲良だったが、次の瞬間には表情を引き締め、すぐにグラウンドを駆け出した。


「お? なんかめっちゃ速いな」

「お題、何引いたんだ?」


 奏汰と悠人が目を細めて見守る中、咲良は一直線にこちらへと向かってくる。


「えっ……まさか……?」


 嫌な予感がした奏汰だったが、その予感は的中する。

 咲良は真っ直ぐ悠人の前で立ち止まり、紙を突き出した。


「悠人! 一緒に来て!」


 悠人が困惑しながら紙を覗き込むと、そこには──


 『好きな人』


 という文字が、しっかりと書かれていた。



「いや、えっと……」


 悠人が一瞬戸惑ったのを見て、咲良は少し頬を膨らませる。


「何迷ってんの! 早く!」

「あ、あぁ……」


 悠人は周りの視線を浴びながらも、渋々と咲良についていく。


「悠人、めっちゃ動揺してんな……」

「まぁ、こういうのは照れるよな」


 奏汰は半ば呆れながらも、どこか微笑ましい気持ちで二人の姿を見送った。



 最終的に咲良は悠人と一緒にゴールし、クラスメイトたちからは「すごい」「青春すぎる!」と歓声が上がった。

 ゴール後、咲良は悠人の腕を軽く叩きながら笑いかける。


「ちゃんと借り物になってくれてありがと!」

「……まぁ、ルールだからな」


 悠人は少し照れたように目を逸らす。その様子を見て、奏汰はふと、悠人の心の奥に隠された何かを感じた気がした──。



 借り物競走が終わり、グラウンドには熱気が立ちこめていた。次の競技の準備が進められる中、クラスの応援席もますます盛り上がっている。


「みんな、声出していくぞー!」


 応援団のリーダーが旗を振り、クラスメイトたちがそれに応えるように手を叩く。


「せーのっ!」

「「頑張れー!!」」


 千尋も友達と一緒に声を張り上げた。隣には咲良がいて、彼女も一緒になって応援している。


「いやー、午前中のの騎馬戦、めっちゃカッコよかったよね!」

「うん、奏汰、本当にすごかった!」


 そんな会話をしていると、前の方から悠人がひょいと顔を出した。


「お前ら、声枯れないようにな?」

「悠人こそ、次のリレー大丈夫?」

「問題ない。全力で走るよ」


 そう言って悠人は少し笑ってみせる。千尋はその表情を見て、やっぱり悠人はこういう場面に強いな、と感じた。



 続いて始まったのはスウェーデンリレー。色別の各クラスの代表がバトンをつなぎ、だんだん走る距離が長くなるリレーでゴールを目指す。悠人は第四走者を務めることになっていた。


「悠人、頼むぞー!」

「ぶっちぎってこい!」


 クラスメイトたちの声援を受けながら、悠人はスタート地点で静かに息を整える。


 ピストルの音が響き、一斉に選手たちが飛び出した。最初は接戦だったが、徐々に差がつき始める。バトンが次々とつながれ、ついに悠人の番が来た。


「悠人、いけーっ!」


 千尋が思わず身を乗り出して叫ぶ。バトンを受け取った悠人は、一瞬でギアを上げた。


(速い……!)


 他の選手を次々と抜き去り、一気にトップへと踊り出る。その走りはまさに圧巻だった。最後の直線でスパートをかけ、悠人は見事一番で次の走者にバトンを渡すことに成功した。


「やったー!!」


 クラスメイトたちは歓喜の声を上げ、応援席も大盛り上がりだった。



「悠人、すごかったね!」

「いや、マジで速すぎ!」


 競技が終わったあと、クラスの皆が悠人の周りに集まっていた。悠人は軽く息を弾ませながら、苦笑いを浮かべる。


「まぁ、やるからには全力でな」

「かっこいいなー、さすが運動神経抜群の男!」


 そんな和やかな雰囲気の中、奏汰も悠人のそばに来て、ポンと肩を叩いた。


「お前、マジでやばかったな」

「お前の騎馬戦もな」


 二人は軽く拳をぶつけ合い、言葉少なに讃え合う。


 一方、千尋と咲良は別のグループの会話に混ざっていた。


「ねえねえ、次の競技、私たちも出るよね?」

「大縄跳びでしょ?練習してたし、頑張ろう!」


 千尋は気合を入れ、咲良も笑顔でうなずく。



 次の競技はクラス全員参加の大縄跳び。制限時間内に何回跳べるかを競う団体戦だ。


「いくよー、せーの!」


 長縄が回り始め、クラスメイトたちはタイミングを合わせて次々に飛び込んでいく。


「いち、に、さん!」


 最初は順調だったが、途中でリズムが崩れかける場面もあった。だが、千尋は焦らずにみんなに声をかける。


「大丈夫!タイミング合わせて、もう一回!」


 彼女の声をきっかけに、みんなが気持ちを切り替え、再びリズムを取り戻す。


「……二十七、二十八、二十九……」


「三十!!」


 制限時間ギリギリで、クラスは見事な記録を叩き出した。


「やったー!」


 飛び終えたあと、みんなで歓声を上げながらハイタッチを交わす。千尋も自然と笑顔になった。




 競技が進む中、応援合戦の時間がやってきた。各クラスが応援のパフォーマンスを披露し、得点を競う。


「せーのっ!」

「「フレー!フレー!1組!!」」


 千尋たちのクラスも、一致団結して声を揃えた。熱のこもった応援が響き渡る。


 奏汰や悠人も、一緒になって声を張り上げた。普段はあまり応援する側に回らない彼らが、こうして全力でクラスのために声を出している姿は、千尋にとって新鮮だった。


 ふと、奏汰と悠人が目を合わせて、少しだけ笑い合う。まだぎこちなさは残るものの、少しずつ距離が縮まっているような気がした。


 そして体育祭は熱を上げたまま終わりへ近づいていく。

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