一色体育祭
九月に入り、体育祭の準備は本格化していった。
朝のHRでは係ごとの打ち合わせ、放課後は競技ごとの練習、さらには応援団やダンスのメンバーまでいて、クラスは体育祭一色になりつつあった。
そんな中、奏汰は騎馬戦の練習に参加していた。
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「おい奏汰、もうちょい重心下げろって!」
「無理! てか村瀬、動きすぎ!」
「は? 俺が動かねぇとバランス取れねぇんだよ!」
「はいはい、騎馬のやつら、息合わせろー」
グラウンドでは、騎馬戦の練習が始まっていた。
上に乗るやつはバランスを取るのが大変で、下で支えるメンバーも位置を調整しながら立ち回る必要がある。
「奏汰、お前ほんとに下でいいの?」
村瀬が苦笑しながら聞いてくる。
「まぁ、バランス取るの得意だし」
「じゃあもっと安定させろよ!」
「うるせぇ!」
そんなやり取りをしているうちに、他のチームも競技に慣れ始め、少しずつ動きがスムーズになってきた。
すると――
「悠人、バトン受け取るとき、もうちょい勢いつけたほうがいいよ」
千尋の声が聞こえてきた。
リレーの練習をしていた悠人たちのグループが、バトンパスの確認をしているらしい。
「わかってるけど、タイミングが難しい」
「じゃあもう一回やろう」
千尋はリレーの選手ではないのに、なぜか悠人の走りを真剣に見てアドバイスしていた。
それを見て、奏汰はふと視線を逸らした。
(別に、気にすることじゃない)
そう思いながらも、なんとなくもやっとする感情が残る。
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放課後、教室では装飾や応援の準備が進められていた。
「ポスター、もう少しカラフルにしたほうがよくない?」
「スローガン考えたけど、どう?」
「お前、意外と字うまいな」
そんな会話が飛び交う中、奏汰は少し離れた席で作業をしていた。
そこに、千尋がやってきた。
「奏汰、ここの飾り付け、一緒にやらない?」
「あぁ、いいよ」
二人で折り紙を折ったり、紙を切ったりしながら、自然と会話が生まれる。
「騎馬戦の練習、どうだった?」
「まぁ、普通。でも村瀬が暴れすぎ」
「ふふ、なんか想像つく」
「そっちは?」
「悠人、めっちゃ速かった」
その言葉に、少しだけ胸がざわつく。
「そりゃそうだろ。アイツ、中学からずっとリレーの選手だったし」
「うん。でも、すごく真剣で……なんていうか、必死だった」
「必死?」
「なんかね、勝ちたいっていうのが伝わってくる感じ」
千尋の言葉を聞きながら、奏汰は悠人の背中を思い出した。
確かに、最近の悠人は何かに突き動かされるように走っている気がする。
(……やっぱ、アイツ、何か変わったよな)
そう思いつつも、それを深く追及する気にはなれなかった。
悠人は悠人だ。
そう思おうとしている自分がいることに、奏汰は気づいていた。
「──ねえ、奏汰。ちょっと良い?」
「ああ……なんだ?──咲良」




