表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/62

遊戯型抜

――夜の帳が下り、祭りは佳境に差し掛かっていた。


無数の提灯が灯り、浴衣姿の人々が通りを埋め尽くす。屋台から立ち昇る煙と香ばしい匂いが混ざり合い、賑やかな笑い声が響く。


奏汰、千尋、悠人、咲良の四人は、そんな喧騒の中をゆったりと歩いていた。


「次、どこ行こうか?」


悠人が問いかけると、千尋が少し考え込む。


「うーん……あ、型抜きやりたい!」


「いいね。俺もやろうかな」


悠人が頷くと、咲良も「私も!」と賛同した。


「奏汰は?」


千尋が振り向いて尋ねる。奏汰は屋台の景色を一瞥し、「俺はいい」と肩をすくめた。


「えー、せっかくなんだからやろうよ!」


「俺、こういうの苦手だし」


「苦手なことにも挑戦するのが楽しいんだよ!」


千尋が腕を組んでじっと奏汰を見つめる。奏汰は少し戸惑ったが、しぶしぶ頷いた。


「……わかったよ」


「やった!」


千尋が嬉しそうに微笑むのを見て、悠人が僅かに眉をひそめる。


(……最近、なんかこいつら、やけに自然だよな)


そんなモヤモヤを振り払うように、悠人は型抜きの屋台に向かって歩き出した。



型抜きの屋台には、すでに何人かの客が挑戦していた。店主が「慎重にやれよ」と声をかけながら、型抜きのプレートを渡している。


「よーし、頑張るぞ!」


千尋が気合を入れ、慎重に針を入れる。奏汰も隣でプレートを眺めていたが、なかなか手をつけられずにいた。


「奏汰、ほら、ここから削るといいよ」


千尋が身を寄せ、彼のプレートを指さした。


(……近い)


ふわりと千尋の浴衣の香りが鼻をくすぐる。奏汰は無意識に視線をそらした。


「こう、優しく……って、あっ!」


千尋の手が滑り、プレートが割れる。


「ええっ、そんな……!」


「ははっ、ドンマイ」


悠人が笑いながら、型抜きを続ける。咲良は慎重に作業を進め、形をほぼ崩さずに成功させていた。


「……奏汰は?」


「……ダメだ」


奏汰のプレートも千尋と同じく、粉々に割れていた。


「奏汰も不器用なんだね」


千尋がクスクス笑うと、奏汰は肩をすくめる。


「向いてないって言ったろ」


「まぁ、そういうこともあるよ」


悠人が自分の型抜きを成功させ、店主から景品の小さなキーホルダーを受け取る。


「ほら、これ千尋にやるよ」


「えっ、いいの?」


「千尋、型抜き失敗したしな」


悠人が軽く笑って渡すと、千尋は頬を赤くしながら「ありがとう」と受け取った。


奏汰は何も言わず、その様子を見ていた。


(別に、どうってことない)


そう思うのに、心の奥が微かにざわついた。



「そろそろ花火、始まるんじゃない?」


咲良が腕時計を見ながら言う。


「いい場所、探さなきゃね」


千尋が辺りを見回し、四人は少し離れた丘の上へと向かった。


程なくして、夜空に大きな光が弾ける。


「おお……!」


千尋が思わず歓声を上げる。悠人は穏やかな笑みを浮かべ、咲良も感動したように花火を見上げていた。


奏汰も夜空を見つめながら、花火の音が胸に響くのを感じていた。


ふと、千尋が横を向く。


「……奏汰、なんか考え事?」


「……別に」


「そっか」


千尋は奏汰の隣に寄り添うように座り、「キレイだね」と微笑んだ。


奏汰は何も言わず、ただ空を見上げた。


悠人はそんな二人の様子を横目で見ながら、静かに拳を握りしめる。


(……やっぱり、俺の勘違いじゃないよな)


モヤモヤとした感情が、胸の奥で渦巻いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ