計画的カラオケ
「そういえば、もうすぐ夏休みじゃん?」
咲良がドリンクを飲みながら言う。
「何かみんなで遊ぶ予定立てない?」
「いいね!どこか行こうよ!」
千尋がノリノリで賛成する。
「海とか?」
「王道だね!」
「キャンプとかも楽しそう」
「おお、それもアリかも!」
みんなでワイワイ話していると、悠人がふと思い出したように言った。
「あ、そうだ。LINEのグループ作らない?」
「あ、確かに! そしたら予定立てやすいよね!」
「じゃあ、今作るわ」
悠人がスマホを取り出し、グループを作成する。
「みんなQRコードで追加して」
奏汰もスマホを取り出し、悠人のQRコードを読み取る。
しばらくして、千尋のスマホが振動した。
「おっ、入れた!」
グループ名はシンプルに「夏の計画」。
「これでバッチリだね!」
千尋が嬉しそうに微笑む。
「そういえば奏汰、夏休みはバイトするの?」
ふいに千尋が聞いてきた。
「ああ、親戚のカフェでな」
「そっか、じゃあ私とまたシフトかぶることあるかもね」
「……まあ、そうだな」
千尋は少し嬉しそうに微笑んだ。
それを見た奏汰は、なぜか心臓がドキッとした。
(……何だ、今の)
自分でも分からない感情を抱えたまま、カラオケの時間は過ぎていった——。
「そろそろラスト一曲かな?」
悠人が時計を見ながら言うと、千尋が「じゃあ、みんなで歌おう!」と提案した。
「おー、いいね!」
「何にする?」
「やっぱり盛り上がる曲がいいよね!」
咲良がリモコンを操作し、アップテンポな定番曲を入れると、みんなでマイクを回しながら歌い出した。
最後は全員で肩を組んで合唱し、カラオケルームは笑い声に包まれた。
「楽しかったー!」
千尋が満足げに伸びをする。
「また来ような」
悠人がそう言いながらスマホを取り出すと、「お疲れ!」とグループLINEにメッセージを送った。
カラオケボックスを出ると、夜風が涼しく感じられた。
「じゃあ、またな!」
それぞれの帰る方向が違うため、駅前で解散することに。
奏汰と千尋は同じ方向だったので、二人で並んで歩き出した。
「今日は楽しかったね」
千尋がぽつりと呟く。
「まあ、たまにはこういうのも悪くない」
「たまには、ねえ……。奏汰、もうちょっと楽しんでる感じ出せばいいのに」
「別に普通に楽しんでたけど?」
「顔がクールすぎるんだよ! もっとこう、ノリノリでさ!」
千尋が真似をして変な踊りをすると、奏汰は思わず吹き出した。
「お前、それただの変なやつだろ」
「えー、ウケると思ったのに!」
二人で笑いながら歩いていると、千尋がふと足を止めた。
「ねえ、夏休みの予定、何か決まった?」
「いや、バイト以外は特に」
「そっか……」
千尋は少し考えるようにしてから言った。
「じゃあさ、また一緒にどこか行こうよ」
「え?」
「だって、せっかくの夏休みだし!」
奏汰は一瞬迷ったが、千尋の期待するような目を見て、思わず頷いた。
「……まあ、考えとく」
「よし! じゃあ決まり!」
千尋は満足そうに笑う。
(……決まり、って。まだ返事してないんだけどな)
奏汰は苦笑しながら、それでもどこか悪くない気がしていた。
こうして、期末試験後のお疲れ会は終わり、夏休みへと物語は続いていく——。