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休息勉強

「ふぅー、ちょっと休憩しよっか」


千尋がペンを置いて、大きく伸びをする。


「そうだな、さすがに集中力が切れる」


奏汰も椅子の背にもたれかかり、軽く首を回した。


悠人は飲みかけのアイスコーヒーを口にしながら、スマホを取り出す。


「30分くらい休憩して、あともうひと踏ん張りするか」


「賛成!」


千尋が手を上げると、咲良も「私も〜」と笑顔で頷いた。


奏汰は店員に追加のドリンクを注文しに行くために席を立つ。


(……こういうの、なんか新鮮だな)


カフェの中を歩きながら、奏汰はふと考える。

前まで勉強は一人で黙々とやるものだった。

でも、こうして友達と一緒にやると、思ったより楽しい。


特に——


(千尋と一緒にやるの、悪くないな)


なんとなくそう思ってしまった自分に、奏汰は少し驚いた。



戻ってくると、千尋と悠人がスマホを覗き込みながら話していた。


「へえ、こんなのあるんだ」


「だろ?これ、勉強に使えるアプリなんだけど——」


悠人が千尋のスマホを軽く操作して、アプリの説明をしている。

千尋は身を乗り出しながら、それをじっと見ていた。


「……ふーん」


奏汰は無意識のうちに、彼らのやり取りを眺めていた。


悠人は昔から頭が良くて、こういう場でも自然とみんなをリードするタイプだ。

千尋も、そんな悠人の話を楽しそうに聞いている。


(……まあ、別に普通のことだよな)


そう思いながら、なんとなく胸の奥がチクリとするのを感じた。


「奏汰、どうかした?」


不意に千尋が顔を上げて、奏汰を見た。


「えっ? いや、別に」


「そっか? なんか考えごとしてるみたいだったから」


「あー……ちょっとぼーっとしてただけ」


奏汰が適当に答えると、千尋は小さく笑った。


「そろそろ勉強再開する?」


悠人がコーヒーを飲みながら言う。


「うん、あとちょっと頑張ろう!」


千尋がやる気を出し、みんなもそれに頷いた。



再び勉強を始めてしばらくした後、千尋が小さくため息をついた。


「うーん……やっぱり英語の長文、苦手かも」


「どれ?」


奏汰が千尋のノートを覗き込む。


「この問題、単語はなんとなくわかるんだけど、文の構造がよく分からなくて……」


「えっと、ここが主語で、こっちが動詞だから——」


奏汰はノートの端に軽く図を描きながら説明する。


「なるほど……あ、分かったかも!」


「お、いいじゃん」


「ありがと、奏汰」


千尋が嬉しそうに笑う。


その笑顔を見て、奏汰は思わず視線をそらした。


(……なんだよ、こんなの普通なのに)


ただ説明しただけなのに、千尋に感謝されると妙に照れくさかった。


(悠人だったら、こんな風に意識したりしないんだろうな)


そう思うと、なんとなく落ち着かなくなる。



「ふー! なんとか今日の分は終わった!」


千尋が伸びをしながら満足げに言う。


「いやー、意外と集中できたな」


悠人も軽く頷いた。


「みんなとやると、勉強もはかどるね」


「そうだな」


奏汰も軽く笑う。


「よし、じゃあ次の試験まで、また集まってやろう!」


千尋の言葉に、みんなが頷く。


「じゃあ今日は解散かな」


「うん、お疲れ!」


勉強会を終えて、それぞれ帰り支度を始める。


帰り道、奏汰は千尋と並んで歩いていた。


「なんか、今日楽しかったな」


千尋がふと呟く。


「そうか?」


「うん、みんなで勉強するの、いいなって思って」


「……まあ、たまには悪くないかもな」


「でしょ?」


千尋が嬉しそうに笑う。


奏汰はそんな千尋の横顔をちらりと見た。


(……なんでだろ)


その瞬間、ふとした違和感が胸の奥に広がる。


「……奏汰?」


「いや、なんでもない」


そう答えたけれど、その感情の正体は自分でも分かっていなかった——。

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