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犬系メイドさん、ブッ殺す  作者: とがわ
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3:VS『犬』 その2

 高本は砕かれた右腕を庇いながら立ち上がった。

 目の前では仲間の2人が戦っている。

 身体を回復させたいが、バケモノじみた動きの女を倒すには1人でも数がいる。助けに行かねばならない。

 痛みで意識が飛びそうになりながら、左手で拳銃を探すが、ない。

 ぶっ飛んだ時に落としたようだ。

 辺りを焦りながら見回す。


「よし、あったぞ!」


 道路の端に転がっていた拳銃を見つけた。

 仲間を助けに再度動こうとした瞬間、ドンッという大きな音とともに爆発が起きた。

 身体から煙を上げながら崩れ落ちる仲間を見た。


「くそっ!!!」


 高本のいる方向に振り返るメイドのユキノ目掛け発砲。

 またかわされる。


「やっぱありえねぇだろッ?!」


 吠えながら、距離を取る。

 この台風だ。

 相手の機動力も落ちている。が、それでもユキノのほうが若干速い。

 発砲。

 やはり当たらない。

 弾を装填している途中、水に足をとられ転けてしまった。


「やべぇな」


 後ろにはすでにユキノが接近していた。

 逃げ切れないと悟り、ナイフを左手で持つ。


「こっちは利き手じゃねぇんだよ!」


 横に払いながら切る。

 ユキノが右手に持ったナイフで受ける。

 ギリギリとした感触が手に伝わった。

 仮にも『犬』だ。

 武器は両手で扱えるが、それでも僅かな違和感は拭えない。

 痛みと違和感で女にナイフを受けられる事に怒りを覚えながら、押し込む。

 ユキノはそれを今度は軽く流し、回転切り。

 スカートや髪が円を描く。

 バランスを崩したせいで避けることは不可能。

 右側からの回転切りに腕を切断された。

 血が吹き出し、仰向けに倒れた。


 決着がついた。


「はぁッ、はッ、はッ・・・めちゃくちゃいてぇ」

「弱いですね」

「まじか」

「大まじです。『犬』と言ってもチワワでしたね。気が強いだけで実力は対してって感じです」

「・・・その呼び方知ってて、その強さ、・・・同郷か? にしちゃ甘いが」

「はい」


 今にも絶命しそうな高本はユキノとの軽口に何故か嬉しそうだ。


「『犬』にも当たり外れが多いからなー。俺としちゃ・・・結構強いほうだと思ってたんだがな・・・」

「3流かそれ以下ですね」

「・・・・・わかってたけどな。お前は強いな」

「はい」

「なあ、お前・・・好きなモノあったりするか?」

「へ? なんですか突然。まさか、私の好きなモノを買ってあげるから見逃せってことなら無理ですよ」

「けっ・・・やっぱそうだよな。・・・。こんないい女とナイフ持って殺り合うより、ベッドの上でヤリ合いたかったな」


 高本の首にナイフを押し付ける。


「・・・もう、おしゃべりはいいですか?」

「ああ、もう殺ってくれ。美人に殺されるなら本望だ。・・・でもよ、やっぱ俺たちの世界はイカれてるぜ。自分で選んだ道とはいえ・・・なーんにも知らねぇだろうー」

「はい?」



 ーてめぇみたいなガキを雇う主人もな



 ザクッ、という肉を切る音がユキノの耳によく響いた。

 ユキノの瞳から光が消えた。


「ご主人様への悪口は許しませんよ」


 その言葉を皮切りに、2度3度4度、10、20、30と数え切れぬほどナイフを顔に突き立てる。

 もはや人の顔の原型すら残っていないのに、それでも突き立てる。

 


 その瞳はどこまでも冷たく、暗かった。





 ピューピュー、ブヒブヒと鼻を鳴らしながら、台風の中の高速道路を全力疾走する影が1つ。

 大淀モーターズ社長、大淀俊彰(おおよどとしあき)だ。

 贅肉を揺らしながら必死に走る姿は捕食者に狙われる豚そのものだ。


「ぶひっ、ぶ、ぶひっ。くそっ! 完全に殺し屋だ。なんで俺をッ! だ、だが俺を舐めるなよ、高校時代は陸上部だったんだ」


 1人で叫ぶ内容通り意外にも足は速い。

 だがそれも長くは続かなかった。


「こんばんは」


 目の前にメイド服をきた女がいた。

 黒髪にピンクのインナーカラーの女。

 両手には斧を握っている。


「ひっひぃいいいッ!」


 その特徴的な服装に誰かを瞬時に理解した大淀は情けなく悲鳴を上げた。


「ユキノは?」

「お、お前もさっきの女の仲間だろう?! た、頼む! 「あ、私のお姉ちゃんなんだけど」 見逃してくれ! なぜ狙われるのか分からないんだッ!! 「話聞いてる?」 もしお前の! い、いやッ! 貴女様のご主人様が気に触ることをしたのなら 「おい」 直ぐにでも改善します!! 絶対だ! ・・・絶対です!! お願いします! 殺さないで下さい!!」

「聞けって」


  ズドッ、という鈍い音とともに大淀が血を流しながら倒れた。


「あ、やべ。ま、いっか」


  大淀の着ている服の襟を掴み、引きずりながら姉を探しに歩きだすリオ。


「電話も繋がらないしなー、なにやってるんだよバカお姉ちゃんめ」

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