2話
今の時代、ネットを使えばある程度のことは調べられる。
現住所、事故、ニュース。たったこれだけである程度のことがわかった。
俺は知らなかったが有名な事件だったらしい。
被害者や加害者の写真まで乗っていた。
深山あぐり。
享年十四歳。
……身体つきや態度から、もうちょっと年齢は下だと思った。
肝心な死因だが。若い未婚の母親の虐待による餓死だそうだ。どうやら、あぐりの育て方がわからず持て余しての犯行と裁判でわかっていた。
面倒を避けるために学校には病気だと偽り極力行かせず、部屋の中でパソコンやペットの犬と過ごしていたようだ。
そうか、だから、お菓子やコーラに驚いてたのか。
不覚にも目頭が熱くなった。
俺、こういう不幸な話に弱いんだよな。
彼女……あぐりの背景はわかった。
人が恋しいからいたずらをする。母を……もしくは愛情を求めているからこの部屋に固執する。
ただわからないこともある。
……前の住人を何人も追い出した悪霊というのは本当にあぐりのことか?
そこまで凶悪にはやはり思えない。
まだ知らないことがある気がする。
……ま、考えても仕方ないか。そんなことよりも食材が切れてきたな。そろそろスーパーに買い物に行くか。
財布を手に部屋から出ようとすると、
「くいくい」
引っ張られる気配。振り向くと、そこにはあぐりが幽霊のように佇んでいた。いや、幽霊なんだけどさ。
「うわお! ……って、あぐりかよ。脅かすなって」
あぐりはきょとんとした顔で小首を傾げる。
「名前……?」
最初は抱きしめた犬のぬいぐるみが。
「知ってる。なんで?」
次は本人が。これが彼女の話しかけるルーティンみたいなものなのだろう。
「不思議」
「不思議だね」
「ああ、調べたからな。あ、もしかして嫌だったか?」
「……」
無表情で俯く。うーん、あぐりの感情が読み取れない。
だが、嫌だったわけではないらしく俺から離れようとしない。
もしかして。
「またお菓子が欲しい?」
「そうかも」
「そうだね」
心なしか声が弾んでいる。どうやらお菓子のおいしさに目覚めたようだ。
「それなら一緒に行くか?」
誘っておいてなんだけど、この部屋から出られるのか?
あぐりみたいな霊って地縛霊だろ。土地に縛られて……みたいな感じだと思っていたが。
「行く?」
「うん、行く」
ついてこれるんかい。この場合は憑くだけど。
「できれば人前で消えないでくれよ。他の人が見たらびっくりするから」
ひそひそとあぐりとぬいぐるみが話し合う。
「疲れる」
「ね」
「チョコレートとか買ってやるから」
「「わかった」」
今、ハモった? 器用だな。
「お兄さんとの約束だ」
「約束だって」
「守らなきゃ、ね」
さすがに人前で消えられたら騒ぎになる。……ほんとはぬいぐるみを持つのも目立つからやめて欲しいんだけど。
「外、楽しみだね」
「ね」
大事に抱えた姿をみているとさすがに置いていけとは言えない。これくらいなら多めに見よう。
「じゃあ、行くか」