ねぇ!?説明書って知ってる!?
ノリと勢いは大事だと思います。
いきなり路頭に放り出された勇太と操子。
互いに何が何だか分からない様子でただ地面を見ながら会話をする。
「なぁ・・・これから・・・どうすんだよ・・・」
「わ、わかんないわよぉ・・・」
「とりあえず・・・なんか異世界っぽいし・・・」
「う、うん・・・」
沈んだ様子で小声でブツブツと会話する二人。
そこで勇太は閃いたかのように目を輝かせてこう言い放つ。
「ラ、ラノベとかアニメとかあんじゃん!?」
「そんな感じできっと俺達もうまくいくって!!!」
「アニメとかだと最初はキツイけど最後はつえええんだぜ!?」
「俺達も最強になれるって!!!」
そう自分と操子に言い聞かせるように勇太は言った。
すると状況は分からずとも勇太の言葉に勇気をもらった操子は元気よくこう言った。
「よ、よく分からないけど・・・そうよね!いつまでもクヨクヨしてらんない!」
そう言って二人はこれからの事を話し始めた。
「とは言ったものの・・・今の俺の恰好とかどうにかできねぇかなぁ・・・」
「そうね・・・私はまだともかく勇太は・・・服が必要だし・・・」
「まぁとりあえず盾は手に持つとして剣はトランクスの中にしまっとくか・・・」
「えっ!?」
そう言って勇太はトランクス(パンツ)の中に剣を入れた。
そしてトランクス(パンツ)のゴムに剣の柄の部分が引っ掛かり良い感じにしまう事が出来た。
しかしゴムは剣の重さでちょっと垂れている。
それを見た操子が恥ずかしそうに手で顔を隠しながら言う。
「勇太・・・ちょっとそれは・・・」
「ん?侍みたいでかっこいいじゃん!」
「んもう!勇太のエッチ!」
そう言って顔を赤くしてそっぽを向く操子。
そんな操子をよそに勇太はハート柄のトランクス一丁で侍っぽいポーズを連発していた。
そして操子は王様になんか持たされていたゲームパッドのBと書かれたボタンをなんとなく押した。
すると・・・
「ぎゃッ!」
「え!?なに!?」
勇太の変な声に驚き操子が後ろを振り返ると勇太のトランクスに引っかかっていた剣が凄まじく上下に揺れていた。
操子も勇太も何が何だかわからず、とりあえず操子は勇太の何とも言えない姿に悲鳴を上げながら大きく手を振りかぶり勇太をぶっ叩いた。
「きゃあああああああ!!!!!へんたい~~~~~!!!!」
バッチコォォォオオオンッッッ!!!!!
「ぎええええええええ!!!!!」
勇太の情けない叫び声と操子の悲鳴が辺りに響いたが、二人の恰好が恰好なので通りすがる人々は皆見ないふりに徹底していた。
そして何があったのかを勇太は操子に説明しようとする。
「いててて・・・お前すぐ叩くのやめろよなぁ」
「だってぇ、お尻まで見えそうなくらいだったんだもん・・・」
「そりゃあお前いきなり2mぐらい飛んで着地したらそれくらいなんだろ!」
「へぇ!?なに!?勇太2mも飛んじゃったの!?」
「何でか知らねーけどな」
「ふ、ふーん・・・」
そう言って操子は王様に渡されていたゲームパッドを見つめる。
そしてまた今度はAと書かれたボタンを押した。
すると・・・
「うおっ!」
凄い勢いで勇太が前に空振りパンチをしていた。
その様子を見た操子はちょっと嬉しそうな感じでこう言った。
「ナニコレ~やば~い!!面白~~~~!!」
そして操子はAボタンを軽く連打した。
するとそれに合わせて勇太も凄い勢いで空振りパンチをボタンを押した数だけ繰り返した。
「うお!うお!うううううおおおお!?」
「なななななんんんんだだだだだこここここれれれれれれれ!!!!」
あまりの連打のし過ぎで上手く言葉が出せない勇太。
そして今度は左右に揺れるハート柄の剣の引っかかったトランクス・・・。
物凄い楽し気な雰囲気で操子が話し出す。
「あのね勇太!このゲームのコントローラーのボタン押すと勇太が勝手に動くみたい!」
「ほらほらほら!」
そう言ってまたAボタンを連打する。
「わががががったたたたかかかららららおおおねねねねがががががいいいいいい!!!」
「ととととととめめめめめてててててて!!!」
若干辛そうに勇太が止める様に操子に言う。
そう言われてハッと我に返る操子ちゃん。
「あ!ごめんね勇太」
「・・・ハァハァ」
「やっと止まったか・・・ハァハァ」
「そのコントローラーで俺を操ってたのか」
「ちょっと貸してくれよ」
「いいわよ」
そう言って操子が勇太にゲームパッドを渡そうとすると・・・
ヒュイッ
「あれ?」
ヒョイッ
「んん!?」
ピョーンッ
「クソッ!」
「何やってんの勇太~」
勇太が操子からゲームパッドを取ろうとするとそれを華麗に避けるゲームパッド。
そんなおかしな様子を見て操子がゲームパッドを取り返す。
「ふざけないでよ~」
「い、いや違うんだ」
「なにがよ」
「そのコントローラーが逃げるんだよ!」
「勇太・・・あんたとうとう頭までおかしくなっちゃたんじゃないの?」
「ほ、本当だってば!」
半信半疑で操子は自分の手に持ったまま勇太の手に渡そうとした。
すると・・・
クルッ
「えっ!?」
操子の手が勇太から離れる様に後ろを勝手に向いた。
「だから言ってるだろ」
「ほ、ほんとだったんだ・・・」
謎のゲームパッドに二人は驚き。
状況を整理するために話し始めた。
「もしかして、私だけが勇太を操作できる?」
「俺が操作される勇者ってことか!?」
物凄いガッカリ驚いた様子で勇太がこう叫ぶ。
「うわあああ!!!冗談じゃねえええ!!!」
「俺の!俺は操り人形だってかあああああああああああ!!!」
「しかもゲームめちゃくちゃへたくそな操子のおおおおおおおお!!!!」
そう叫びながら挫折する勇太をよそに操子はBボタンを押して遊んでいた。
ピョーーーン
「うわああああ!!!なんで俺があああ!!!」
ビヨーーーン
「普通の勇者じゃねえええのかよおおおおお!!!」
そう叫びながら挫折したまま2m近くまでジャンプする勇太は中々にシュールであった。
そして操子は勇太に励ますようにこう言った。
「でも、活躍できるのは勇太だけだよ?」
「うう・・・」
「だから本物の勇者は勇太だけなんだよ!」
「・・・」
「・・・私は縁の下の勇者っぽい感じ?」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
そう励まされ勇太は気持ちを持ち直して雄たけびを上げた。
そして勇太と操子は二人でこの説明書のしょの字も無いゲームパッドを調べる事にした。
どうやらAボタンで攻撃、Bボタンでジャンプ、Lボタンで回避、Rボタンは分からず
スティック部分で移動等が二人で調べて分かった。
残る一つのメニューと書かれた中央にあるボタン・・・。
勇太は恐らくゲーム的なものが出てくるだろうと操子に説明した。
そして操子は何のためらいもなくメニューボタンを押した。
すると・・・
ビュイーンー・・・
「わ!」
「どうした!?」
操子の目の前にゲーム的に表示された勇太の情報が載っていた。
しかしそれは勇太には見えていない様子だった。
「ね、ねぇこれ・・・」
そう言って勇太に操子は出てきた画面を見せようとするが・・・。
「なんだ?」
「え!勇太これ見えないの?」
「だからなにがだよ」
「この勇太のステータスっていうか・・・ゲームみたいなの!」
「はぁ?何も見えないぞ?」
勇太には全く見えていない様子で嘘を言っている様子もなかった。
操子は自分だけにしか見えてない情報を口で勇太に説明しようとした。
「え、えっとね」
「おう!」
「今メニューのボタン押したら勇太のステータスとか装備情報が出て来てて・・・」
「おうおうおう!?」
「スキルとか・・・こまんどにゅうりょく?とか・・・」
「お・・・おう」
「勇太・・・」
「私、うまく勇太操作できるかな・・・」
「なっ!」
「もし私のせいで勇太が・・・勇太が死んじゃったら・・・」
説明していくうちに自信が無くなっていく操子・・・。
そんな操子を見て勇太が言う。
「俺を本物の勇者に出来るのは操子だけなんだろ!」
「縁の下の勇者が最初でへばってどうすんだよ!」
「俺を立派な勇者様にしてくれよな!」
ニカッと笑顔で親指を立てて笑いながら励ます勇太。
そんな様子を見て操子は弱気にな自分が情けないと感じつつも勇太の優しさに心の中で感謝した。
二人は幼馴染で昔ながらの腐れ縁・・・。
いつもどちらかがヘコたれたらどちらかが励ますのがこの二人の何となくあるやり取り。
「そ・・・そうよね!」
「勇太の言うとおりだわ!」
「私ゲームぜんっぜん上手くないけど・・・!」
「勇太を本物の勇者にする為に頑張る!」
そう勢いよく手を握り締めて言う操子。
そして互いにようやく冒険の最初の一歩の手前に来た感じであった。
―勇太のステータス―
勇太 職業:勇者 Lv1
HP 100
MP 50
攻撃 100
防御 100.5
魔法 5
魔防 100
速さ 10
器用 1
―装備―
・頭:無し
・体:無し
・右腕:無し
・左腕:勇者の盾 防御100 魔防100
・腰:ハート柄のパンツ 防御0.5 +勇者の剣 攻撃100
・背中:無し
・脚:無し
・足:無し
―習得スキル―
・無し
ありがとうございました。