俺は生きると決めたんだけど、いつの間にか自由が消えている。
無事完結です。まぁ、なんとか色々回収出来たかな? と、短編としてなので、急足ですが満足してます。
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「ジラハル様。また痩せられました?」
そう明るい笑顔で話しかけてきたのは、アリーシャ元第一王女であった。あれから三週間が経ち、監視も無くなり私室での会話には親しみが込められていた。
「まぁな。剣の稽古に、筋肉トレーニング、走り込みを続けているからな」
「お待たせ、ジラハル。紅茶で良かった?」
そう言い、当初のような棘の無くなった優しい声色と、柔らかな笑顔で紅茶を運んできたニーシャに頷き、一口啜る。
「おおっ、凄く美味しくなってるな。最初は渋かっただけだったのに……日に日に上手くなるなニーシャは」
「えへへ。アーシャ姉さんのようになんでもできるように頑張るよ?」
「……可愛いなぁもう。アーシャもだけどな、二人とも本当に後悔はしてないのか?」
「何にですか? ジラハル様」
「いや、ほら。きっとこの先、早ければ数年で事は成るだろ? なのに、俺と関係を持ったりして……」
そう、あの朝情けない姿を見せた俺にアリーシャは言ったのだ。『そんなに大変なら、ちゃんと私を使ってください』と。だが、断った。断腸の思いで、心で血の涙を流しながら。
ところが、だ。一週間ほど経ち、監視の目が無くなった頃に、再度寝室を二人が訪ねて来たのだ。それも、今度は一糸まとわぬ姿で。これには、本気で焦ったし、説得もした、聞かん棒がはち切れんばかりに『ここにいるぜ』と自己主張をしていたが、なんとか理性をフル動員して。
しかし、ここで思わぬ反撃にあったのだ。二人は涙を流しながらに、訴えて来たのだ。
「私たちは、いいえ、私はジラハル様の事をお慕いしてます。ですので、形だけでなく、本当の意味でこの身を捧げたいのです。専属侍女として、一人の女として」
「わたしもです。こんなに良くしてくれて、守ってくれて、父と母の事も考えてくれた、そんな優しいジラハル様にわたしも捧げたいんです」
「もし、計画がうまく運んだとして、私たちは女性。国の為に好きでもない殿方と結ばれたくはありません。これは、二人で決めた事なんです、もし、断られたら……私たちは何を心の拠り所に頑張ればいいのでしょうか?」と。
結局、俺はこう答えるしか無かったのだ。「主従関係でなく、ちゃんとした恋人として……なら」と。
そして、まだ見ぬ主人公に心の中で謝った。すまん、ヒロイン二人減らしたけど許せ、と。
さすがに元王族とあって、見事に二人とも無知だったので、色々と教え、仕込んだのは仕方ない。だって、二人共可愛いんだもの。行為の仕方すら知らなかったのだ。口付けだけで終わると思ってたニーシャに感動し、マジマジと聞かん棒を指の間から見つめ赤くなるアリーシャに興奮した。この時、アリーシャから、親兄妹などに呼ばれている愛称アーシャで呼んでほしいと身体を重ねながら願われ、今に至る。
ちなみにだが、あれから幾度と身体を重ねたが未だに恥じらう二人は最高です。そして、この世界独特の避妊法にも感謝しかない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
あれから、二年が経とうとしていた。俺直属の親衛騎士から武器などの流通、王城の兵力と敵となりうる貴族の情報を集め、アリーシャへと流していた。学園入学から半年の最初の死亡ルートは何事もなく過ぎ去り、俺は『まだ二人とイチャイチャ出来る』と内心喜び、二人をより一層愛でて過ごしたが、ここ二月ほどアリーシャとニーシャ、二人共時間が合わずキス位しか出来ていない。
もしかしたら、俺の死期は近いのかも知れない。なにしろ、既に学園を経営している公爵家と、アリーシャ側、つまり旧ホランド王国が手を組み、民を隠す事なく集め出したのだ。
そうなると、クーデターは近い。既に他国とは渡りをつけているらしく、ブラン王家の排除が終わり、平定するまでは不可侵と支援が約束されているらしい。なので、その情報をもたらしてくれた直属の親衛騎士隊全てに謝礼を多く渡して、解雇した。
その僅か数日後、王都は戦火に包まれた。かく言う俺はと言うと、父から王城へと呼び戻され、私室でその光景をただ見ていた。アリーシャとニーシャはここには居ない。
「人は死ぬときは一人……か。覚悟はしていたけど、寂しいものだな、まぁ二人の可愛い彼女と楽しく過ごせたから悔いはないな」
王城の門がけたたましい音と共に倒れ、窓が揺れる。
「最後は、どうしたもんかな……自刃、は嫌だなぁ。せめて、最後は愛する二人に殺されたい、いや、彼女の泣き顔は見たくないな。はぁ……本当どうしよう」
城内の至る所から、悲鳴と怒号、剣戟の音が聞こえて来て、徐々に私室へ近づいて来ている。そして、その時は遂に来た。
扉が蹴破られ、剣を抜いたままの騎士が五名突入して来たのだ。
先頭に立つ血に濡れた白銀の鎧と剣をそのままに、その老齢の騎士は尋ねてきた。
「ジラハル殿下ですな?」
「……あぁ、ジラハル•ウル•ブランだ。覚悟は出来ている、一思いに首を刎ねるといい」
そう答えた俺に、老齢の騎士は近づき剣を……納めた。そして、笑いながらに告げるのだ。
「何を仰るか、殿下。愛しの姫君がお待ちですぞ、さぁ早く行きましょう」と。
俺は、その後剣を渡され、五名の騎士と共に城を後にし、学園のある公爵領との境に敷かれたクーデター軍の陣へと案内された。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「アーシャ、ニーシャ、なぜ俺を殺さない」
「必要無いからですよ、ジラハル様」
「そうですよ! 久しぶりの再会に開口一番が、なんでそんなに酷い事言うんですか! 普通は会いたかった、とかじゃ無いんですか?」
俺の言葉に明らかに機嫌を損ね頬を膨らませたアリーシャと、激昂するニーシャに今後考えられる事を告げる。
「俺が生きてたら、ジラハル•ウル•ブランが生きてたら確実に俺を担いで内戦が起こるぞ? 今回のような局地戦でなく、国全土を巻き込んだ大規模なゲリラ戦になる。だから、後顧の憂いは摘めるなら摘むべきだ! 俺は満足している。二人を愛し、愛せた事を。だから——」
殺せと、言う前にアリーシャが涙を流しながら見た事もない怒りの形相で叫んだ。
「だから、私たちに愛する人を殺せと言うんですかっ! 出来るわけないじゃ無いですかっ! 苦労して、長い時間を掛けて臣下を諌め、説得して、私たちの良人として認めて貰ったのに! ジラハル様の私たちへの愛はその程度なんですかっ!」
「そうだよっ! なんで、なんでそんなに生きる事を簡単に諦められるのっ! 私は絶対に嫌っ! ジラハル様が死ぬなら私も死ぬからねっ!」
アリーシャに続くように、ニーシャも感情を爆発させ、俺の胸を叩きながら泣きついて来た。消えいるように「私たちを捨てないで……」そう言って力無く胸を叩く姿を見て、ようやく俺は生きてて良いんだ、と安堵し涙を流していた。
よく見ればアリーシャの眼の下には隈が出来ており、ニーシャも普段はしっかりと手入れをしている髪が乱れていた。
泣き止まないニーシャを優しく抱きしめ、あやすように「ごめん二人とも、ごめんな」と呟きながら手櫛で髪を整えて行く。いつの間にか、寝てしまったニーシャを抱え上げて、テントに置かれたソファに寝かせ毛布を掛ける。
もう一つのソファに腰掛け、アリーシャを手招きで呼び隣に腰掛けさせた。
「アーシャ、俺の為に無理させたな。すまなかった」
「許しません! 簡単に死を選ぶ人なんて知りません」
「ちゃんと、寝れてなかったんだろう? すまな……いや、ありがとうな。俺が死なずに済む為に頑張ってくれたんだよな。本当にありがとう。二人には一生を掛けてでも恩を返すよ」
「足りません」「え?」
「二人では足りません。お腹の子供にもしっかりと、愛情を注いでくださいね?」
「え? はい?」
「ふふふ、伝えられて安心したら、ちょっと眠くなってきました。まずは膝で恩を返してください……ね?」
そう言い、軽い口付けをしたあと、アリーシャは俺の太腿に頭を乗せ、直ぐに寝息をたててしまった。
◆◆◆◇◆◇◇◇◇
クーデターは次の日を迎える前に終了していた。そして、俺はと言うと——。
「なぁ、間違ってないか?」
「なんですか? 国王様?」
「ジラハル王、早くしないと国民がまってますよ?」
何故か王にされていた。愚王である父を排除し、ホランド王国の姫と結ばれた事により、新生ブランド王国として新たな国を興したのだ。主にアリーシャが。
よって、二人の彼女は嫁となり、今日は結婚式の披露パレードの日である。
だからこそ、間違っていると思うのだ。なぜ、ゲームのヒロイン全てが俺の嫁になっているのか? と。
学園の時から、公爵家の娘がやけにグイグイくるとは思ってた。思ってたけども……あと、平民の俺への期待と憧れが酷いのだ。別段何かしたわけでも無いのに……ただ、平民出の親衛騎士隊の解雇時のやり取りがどうやら琴線に触れたらしいのだ。
そして、あれよあれよと、ハーレムが築かれ、俺の意思とは関係なく今に至ったわけで……二人の可愛い彼女、いや嫁だけで満足どころか、死んでも良いとまで思ったのに。
アリーシャとニーシャ扇動によるハーレム計画が俺の自由を消し去ってくれた。
二人から言わせると「私たち二人では愛を受け止めきれません」と、つまり、言外に『精力すごすぎ』と、言われたのだ。
おかしいな、確かに可愛い彼女、もとい嫁が増えたけど……俺、好き勝手できてないじゃん!
そう心で叫びをあげたが、もちろん心の声など聴くものは誰も居なかった。
完
思い立ってなぜか、スルスルと文章になったので、短編系で書こうと書いてみました。
ゲーム知識はあっても、回避できない死亡フラグを持ってたらどうだろう? そこから、ならばチートも必要ないな。あとは、ヒロインはどう言う感じが、などと考えたら、チャートが完成してました。
楽しんでいただけましたか? 僕は自信を持って言います。楽しく読めるように書けた、と。
あらすじにもあるように、今日から一週間で1000pt越える評価を得られたら続き、というか、結末までの間を書きます。なんなら、一話目から手を入れブラッシュアップします。
どうか、応援よろしくお願いします。
今澤麦芽