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鈍色の時間を、彩りの時間に変えてみよう。

 私室で俺はペンを走らせ、教導師の言葉に耳を傾けていた。


 わかったのは、隣国との関係性、現在戦争中であり、我が国が圧倒している事。そして、近いうちに隣国の王を討ち取り侵略が完了するだろう事。理由は、前世の記憶の片隅から引き出したフレーバーテキストである。ヒロインに亡国の姫姉妹が居たのだ。名前はアリーシャ・スラ・ホランドと、ニーシャ・スラ・ホランド、憂いた淡い青の瞳と笑わない二人の姉妹、姉であるアリーシャは栗色の髪を背中まで伸ばし、妹のニーシャは金色の少しウェーブのかかった髪を肩口で揃えていた。


 ただ、ここで疑問が鎌首をもたげる。なぜ、亡国の姫が、祖国を滅ぼしたであろう、ブラン王国の学園へ入学したのか?


 そのジラハルの疑問に答えが出るのは、それからすぐの事であった。


◇◆◇◇◆◇◇◆◇

「父上、わたしをお呼びと聞き参じました」

「ふむ。ジラハルよ、なにやら最近剣の稽古に勉学と励んでいるようだな?」


 馬車で、平民街へ出掛けた後、俺はこのままではダメだと反省したのだ。馬車へ乗るときには気づかなかったが、意外と籠が高く、降りるのに苦労したのだ。主にお腹の装甲に邪魔されて、足元が見えづらく転げ落ち、近衛達の前で恥をかいたことにより、どうせ死ぬけど、せめて動けるぽっちゃり位には体重を落とそうと決めたのだ。


「はっ、思うところがございまして、にわか仕込みとなりますが——」

「でだ、ジラハル。そんなお前に、褒美を出そう」


 俺の言葉を遮り、父は本題を切り出した。


「ありがたく、拝領いたします」

「うむ、お前には専用の侍女がおらなんだな? よって、お前に二人の侍女をあてがう事とする」

「二人……ですか?」


 俺の疑問に、父は膨らみ脂で鈍く光る顔にいやらしい笑みを浮かべて答えた。


「喜べ、二人とも元ホランド王国の王女だ。もし、手を焼くのが嫌なら奴隷紋を刻み込んでもよいぞ? 使い方も問わぬ、例え平民街で穢され、死体となっても構わぬし……もちろん、お前専用のおもちゃにしても良い」

「奴隷紋……ですか……」


 奴隷紋、そう聞いた瞬間に、俺は彼女たちのルートを思い出し、言葉を詰まらせてしまう。それを『興味がある』と取られ、更にいやらしい笑みを浮かべ確認してするように父は質問してくる。


「なんだ、奴隷に興味があったか? いますぐ刻むか?」

「いえ、まずは会ってからにしようかと存じます」

「良いだろう、好きにするといい。下がってよいぞ」

「失礼します」


 謁見の間を後にした俺は、そのままの足で二人が監禁されている部屋へと向かい、扉前の兵を下がらせた後、ノックをせずに扉を開け放ち、部屋へと入った。


「! だれっ!?」


 突然の侵入者に驚きソファから立ち上がったアリーシャを無視して、俺は出来るだけ優しい声色で告げる。


「今日から君たち二人の主人となるジラハル・ウル・ブランだ。アリーシャ、ニーシャ二人には専属侍女として俺の部屋に移ってもらう」

「なっ!? 噂の第一王子!」

「専属侍女……?」


 専属侍女と言うのがニーシャには受け入れ難いようだが、この部屋は監視が付いている。もし俺が、彼女達とイチャイチャ出来るほど仲良くなるためには、なんとしても専属侍女を受け入れてもらわねばならない。


 本来、王族の専属侍女は貴族の子女にとっては憧れなのだ。なにしろ、お手付きされれば、妾として離宮に住むことができ、毎月多くの金が手に入るのだから。まぁ、好き好んで悪名高い俺の専属にはなりたがらないだろうけども。


「異論は認めんぞ? これはジェラット陛下の勅命だ」

「嘘……」

「い、いやよっ! 私達はホランド王国の第一、第二王女なのよ? なんで、よりにもよってあんたの専属侍女なんかに!」


 やはり、ニーシャは受け入れられないらしい。だが、このままでは、父へ報告が行き、すぐさま処刑などもあり得るのだ。


 その位、ここの国の現王は色々とぶっ飛んでいる。離宮には三十を超える貴族の子女を侍らせ、子を孕んだらまた別の貴族の子女へと手を出す。そして、それを繰り返すし、拒否をした子女はその日の内に首だけが実家に送りつけられ、身体は穢された状態で衣服を剥ぎ取られ平民街へ晒された事もある程に。


 だから、凶王の息子として、気は進まないが、その威を借りる事にした。


「はぁ。優しく言いすぎたか? 口を慎めよ、もはや国の無いお前達は王女でも、姫でも無い。それともなにか? 奴隷紋を刻まれ、一生俺の家畜になりたいか?」


 出来るだけ重く、冷徹に聞こえるように声色を低くし、二人の身体を舐めるように眺めながらたずねる。


「「——ひぅっ!」」


「はっ! 虚勢を張るなら命を張ってからにする事だな。俺はどちらでも構わんぞ? 好きな方を選べ」


「…………さい」


「なんだ? 聞こえんぞ?」


「貴方の専属侍女にしてくださいっ!」

「アーシャ姉さん……?」


 震えながら、決断したアリーシャを責めるような、どこか失望したような顔をしてニーシャが呟いた。


 やはり、この子は気が強いらしい。そう感じた俺は、ニーシャの心を折る事を決める。そうしないと、どの道彼女には死しか待っていないのだから。


 王の勅令を拒否した事になるのだから。


「ふん、いいだろう。で? ニーシャはどうする気だ?」

「あ、貴方の専属……いや、やだよぉ。だれか、助けてよ……」


 言いかけ、それでも認められなかったのだろう。ニーシャは力無くその場に座り込み、涙を流しながら両耳を塞ぎ首を振り続ける。


 だが、時間があまり無いのだ。もうすぐ諜報員が、動きだすだろう。ニーシャが王への叛意ありとして報告するために。そうなると、もう後は晒し首一直線だ。だから、可哀想とは思いながらも俺は逃げ道を塞いでいく。


「なんだ、家畜が希望か? ならばすぐに手配しよう」

「ちがっ……お願い……やめてっ」

「はぁ、まだ理解できんか? 貴様は誰に口を聞いているんだ?」

「……あぅ——」


 極めて冷徹な声で告げた問いに、彼女はついに言葉を失った。だから、ここで決めないと彼女に生きる道は無くなる。


「答えろ。それとも、身ぐるみ剥いで平民街へ捨てられたいか? さぞ良い思いが出来るだろうな、よし、さっさと身ぐるみを剥いでしまうか」

「いやっ! やめてっ!」


 泣き喚くニーシャのドレスを掴み、一気に引き裂く。白く滑らかな肌に興奮しかけるが、今はその時じゃない。悪役を演じて、ニーシャ生存ルートを掴まないとならないのだ。力無く暴れる彼女の服を無言で引き裂き続け、あと少しで下着だけ、となるところで再度手を伸ばした俺の前にアリーシャが土下座した。


「殿下っ! 愚妹の非礼を代わって私がお詫び致します。なので、どうか、どうかご慈悲を……」

「ほう? どんな詫びをするというのだ?」


「み、見窄らしいこの身の純潔を御身に捧げます、どのような時でも、場所すら……この場でも構いません……ですので、どうか! どうかご慈悲を!」

「だめっ! アーシャ姉さん!」

「黙りなさいっ! 殿下、どうかご慈悲を」


 アリーシャの純潔か、悪くない。というか、むしろ欲しい。だが、これは乗ってはならない流れなのだ。なにしろ俺は、アリーシャとニーシャ、二人を手に入れたいのだから!


「……くだらんな。その程度で対価となると思われているとは、軽くみられたものだ。だが、今回の虚勢は中々見事である。ニーシャ、次は無いぞ? 再度問おう、貴様はどうする?」

「……殿下に、忠誠を誓います。どうか、わたしを専属侍女にしてください」


「無駄に時間を取られたな。移動するぞ、着いてこい」

「で、殿下……荷物は……?」


「そんな時間は無い。後で処分させる、早く着いてこい」

「そ、そんな……せめて、形見の品だけでも——」

「まだ勘違いしているのか? その荷を捨てさせたのは俺ではなく、他ならぬ貴様ら自身だぞ? 早く来いっ! 次は無いと言ったはずだ!」


「「は、はいっ——」」


 まぁ、そこら辺の侍女に指示してこっそり部屋に運んでもらう予定だがな。


 でも、好感度は上がらないだろうなぁ。なにしろ、マイナスを突き抜けた外道ムーブしたしな。

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