第1話
「アロースラッシュ。」
頭に禍々しい角を生やし、黒い瞳の中に鮮血の様な瞳孔をした背中に蝙蝠の様な翼を生やした軽装鎧と燕尾服を組み合わせた装備した銀髪ポニーテールの男は仕込み杖を振りながらそう言って、スキルを放つと巨大な怪物……火炎龍……を倒した。
《種族経験値及び職業経験値を三万獲得しました》
《種族経験値が一定に達しました。レベルが1039に上昇しました》
《レベルが上昇した為、各能力値が上昇しました》
《職業経験値が一定に達しました。職業「剣聖」、「賢者」、「暗殺者」、「魔王」の職業レベルが30に上昇しました》
《職業レベルが上昇した為、各能力値が上昇しました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「戦技;アロースラッシュ」のレベルが100に上昇しました。スキル「戦技;アロースラッシュ」のスキルレベルは上限に達しました》
「なかなか強かったですね。」
ゲームのシステム音声を聞きながらこの男、「ルシフェル=プライド」はそう言った。
別段この名が本名という訳では無い。
彼はこのゲーム「オール・ファンタジー・オンライン」のプレイヤーであり、そのキャラの名が「ルシフェル」という名であるからだ。
「修復。」
「ルシフェル」はそう言ってスキルを使って仕込み杖の耐久値を回復させた。
「ふぅむ。この辺りのモブは経験値が美味しいですねェ。しばらくはココで経験値稼ぎをさせてもらいますかね?」
彼は、そんな事を考えながら次なるモブ……ムーブ・オブジェクト、つまりプレイヤー以外のシステムによって構築された存在……を探して走り出そうとした。
彼が走り出す為、右足を前に出すと同時にまるで黒板を爪で引っ掻いたかの様な音が彼の頭に響いた。
「ガァァァァァァァァ!?!?」
彼は脳をシェイクさせる感覚と共に意識を失っていった。
普通であれば、意識を失った時点で緊急処置として強制ログアウトさせられるのだがこの時はさせられ無かった。
彼はゲームで気絶するのと同時に、理由は不明だが現実でゲーム媒体を付けた状態で死んでいた。
ミミミミミミミミミミミミミミ
「んあ?……此処はどこでしょう?新マップですかね?」
彼が自身の身体に感じるそよ風に気付き目を開けると、周りは見た事も無い木ばかりであった。
最初は、ゲームの新マップかと思った彼だがすぐさま、「何故、そよ風を感じたのでしょう?そして、寝ていたのですかね?」と本来ゲームに機能の無かったモノを感じていた事に気づいた。
「……取り敢えず、ゲームの機能は使えるのでしょうか?システムメニュー。」
彼がそう言うと、彼の目の前にゲームのメニュー画面が表示された。
メニュー画面を調べてみると、「ログアウト」という項目だけがグレーになっていた。
「ふむ。反応しないですか。と、なると……もしかして、異世界転生とかそう言うやつですかね?」
彼は、タップしてみた後、そう言った。
「……取り敢えずお決まりのステータスでも見る事にしますか。」
そう言うと彼はメニュー画面を操作し、ステータスを表示した。
『ステータス』
キャラ名;ルシフェル
種族;〈精魔生命体〉大悪魔・半龍種レベル1039/2500
性別;男
職業;「剣聖レベル30/100」
「賢者レベル30/100」
「暗殺者レベル30/100」
「魔王レベル30/100」
体力;259789/259789
魔力;853792/853792
闘力;756849/756849
筋力;7654
耐久;9847
俊敏;8974
器用;6987
抵抗;7698
精神;9687
知能;9980
スキル;「鑑定 レベル100/100」
「剣聖術 レベル87/100」
「戦技;スラッシュ レベル100/100」
「戦技;ダブルスラッシュ レベル100/100」
「戦技;クロススラッシュ レベル100/100」
「戦技;アロースラッシュ レベル100/100」
「戦技;ラッシュスラッシュ レベル100/100」
「戦技;スペルブレイク レベル100/100」
「戦技;サークルスラッシュ レベル100/100」
「戦技;カウンターアタック レベル100/100」
「戦技;パワースラッシュ レベル100/100」
「戦技;オーラスラッシュ レベル100/100」
「戦技;ソードダンス レベル100/100」
「戦技;ホーミングアロースラッシュ レベル100/100」
「戦技;オーバースラッシュ レベル99/100」
「戦技;アーマーブレイク レベル100/100」
「戦技;ウェポンブレイク レベル100/100」
「戦技;フィジカルブースト レベル100/100」
「戦技;アーマーストレングス レベル100/100」
「軽装 レベル100/100」
「服装 レベル100/100」
「心眼 レベル65/100」
「闘気操作 レベル100/100」
「魔力操作 レベル100/100」
「縮地 レベル100/100」
「超集中 レベル100/100」
「鍛冶 レベル89/100」
「鍛冶;ヒート レベル68/100」
「鍛冶;コールド レベル28/100」
「裁縫 レベル81/100」
「裁縫;ハンドミシン レベル76/100」
「錬金術 レベル100/100」
「錬金;形状操作 レベル89/100」
「錬金;上位変換 レベル39/100」
「錬金;下位変換 レベル28/100」
「錬金;修復 レベル89/100」
「錬金;構築 レベル90/100」
「木工 レベル85/100」
「木工;シャープ レベル68/100」
「金属細工 レベル82/100」
「革細工 レベル78/100」
「魔導具製作 レベル83/100」
「解析 レベル99/100」
「製服 レベル100/100」
「建築 レベル100/100」
「医術 レベル100/100」
「製本 レベル100/100」
「魔法書製作 レベル100/100」
「ホムンクルス製作 レベル68/100」
「ドール製作 レベル65/100」
「採集 レベル100/100」
「採掘 レベル100/100」
「採木 レベル100/100」
「火魔術 レベル100/100」
「水魔術 レベル100/100」
「風魔術 レベル100/100」
「土魔術 レベル100/100」
「光魔術 レベル100/100」
「闇魔術 レベル100/100」
「炎魔術 レベル58/100」
「氷魔術 レベル56/100」
「嵐魔術 レベル47/100」
「岩魔術 レベル39/100」
「神聖魔術 レベル67/100」
「暗黒魔術 レベル57/100」
「空間魔術 レベル34/100」
「死霊術レベル29/100」
「術式;魂魄収集 レベル19/100」
「術式;魂魄収納 レベル17/100」
「術式;骸骨創造 レベル18/100」
「術式;動屍骸創造 レベル12/100」
「術式;死者蘇生 レベル20/100」
「術式;動鎧骸創造 レベル16/100」
「術式;暗黒騎士骸創造 レベル12/100」
「術式;精神掌握 レベル24/100」
「術式;霊体創造 レベル8/100」
「魔力感知 レベル100/100」
「闘気感知 レベル100/100」
「悪意感知 レベル100/100」
「魔法言語 レベル78/100」
「言語学 レベル67/100」
「思考加速 レベル78/100」
「並列思考 レベル67/100」
「魔術耐性 レベル98/100」
「多重詠唱 レベル100/100」
「無詠唱 レベル100/100」
「杖術 レベル100/100」
「飛行 レベル100/100」
「悪路踏破 レベル100/100」
「ダッシュ レベル100/100」
「ジャンプ レベル100/100」
「パンチ レベル100/100」
「キック レベル100/100」
「威圧 レベル100/100」
「見切り レベル100/100」
「投擲 レベル100/100」
「危険感知 レベル100/100」
「危機感知 レベル100/100」
「気配感知 レベル100/100」
「攻撃半減 レベル97/100」
「環境半減 レベル95/100」
「回避 レベル100/100」
「生命感知 レベル100/100」
「気配隠蔽 レベル67/100」
「隠形 レベル70/100」
「戦技;暗殺刃 レベル67/100」
「戦技;隠れ身 レベル89/100」
「暗器術 レベル67/100」
「暗器製作 レベル100/100」
「射出 レベル100/100」
「大悪魔の威圧 レベル37/100」
「大悪魔の威厳 レベル54/100」
「大悪魔の重圧 レベル58/100」
「真偽感知 レベル100/100」
「龍化 レベル100/100」
「人化 レベル100/100」
「性別反転 レベル37/100」
「地形操作 レベル54/100」
「環境操作 レベル56/100」
「魔王の恐怖 レベル37/100」
「道具創造 レベル67/100」
「武具創造 レベル34/100」
「配下創造 レベル19/100」
「建築物創造 レベル34/100」
「魔王の重圧 レベル32/100」
「魔王の号令 レベル53/100」
「ドラゴンブレス レベル31/100」
「ドラゴンノヴァ レベル23/100」
「ドラゴンロアー レベル20/100」
「明鏡止水 レベル38/100」
称号;「大悪魔」
「龍の因子持ち」
「剣聖」
「賢者」
「暗殺者」
「魔王」
「スキルは変わんないけど称号が減ったかな?」
彼はステータスを見てそう言った。
これでも彼は、ゲームの時は「英雄」だとか「公式の魔王」やら「十連王者」などの称号を沢山持っていた。
この世界はゲームとよく似た世界だ。
彼はすぐさまそれを理解した。
そして、この力はいずれ世界に渡ってしまうモノだと。
そんな事を彼が思考していると、遠くの方でモンスター……モブの一種……が何かと戦闘する音が聞こえた。
「……テンプレでしょうかね。」
そう言うと、彼は音のする方向へ小走りで走り始めた徐々に加速しました。
彼は自身のステータスがこの世界でも高い方であろうと予測を付け、環境に被害が及ばない様に配慮して走ることにした。
数分走っていると、車輪の壊れた馬車とその周りを囲む様に守る兵士、そしてその兵士達に対してブヒブヒと鳴き、迫る豚顔の生物達が見えた。
「鑑定。」
彼がそう言うと、豚顔の生物の情報が頭に浮かんだ。
豚顔の生物は「豚鬼」と言い、他種族のメスを攫い繁殖する特徴がある。
豚顔の情報が頭に浮かんだ彼は、それと同時に「気配感知」に馬車の中に少女がいる事が分かった。
そして、兵士達が豚顔達よりも弱い事も。
彼は二つの情報から少女の身が大変だと考えた。
「助太刀する。」
彼は人化してからそう言うと、同時に持っていた仕込み杖を腰から抜き、刃を出すと豚鬼達に斬り掛かった。
しかし豚鬼達と彼では天と地程の差がある為、本能で化け物だと気付いた豚鬼達は身を固くしようとするが、それよりも早く豚鬼達の間をすり抜けていた彼に首を斬り落とされて絶命した。
「弱いな。」
彼はそう言うと、仕込み杖を納刀した。
「……旅のお方、助太刀感謝する。お陰でお嬢様を守れた。」
彼に兵士の一人がそう言った。
その兵士は他の兵士達と比べて良質な装備をしている事が見て取れた為、彼は隊長格かと思った。
「いやなに、戦闘音が聞こえたのでな。手こずりそうに見えたから手を貸したまでだ。」
彼が兵士にそう言っていると、
「君が我々を助けてくれた御方かな。ありがとう、礼を言う。娘を汚されずに済んだ。何か礼をさせてはくれないかね?」
彼にダンディなおじ様がそう言った。
話掛けられた瞬間、彼は
このおじ様は、貴族か何かなのだろう
と結論付けた。
明らかに馬車がお金の掛かった物であるからだ。
そして、おじ様自身も金が掛かった服装をしていた。
「では、わたくしは見ての通り旅の者なのですが、何処かに定住しようかなと思いまして。何処か良い町の場所と職をお願いしたい。」
彼は、おじ様にそう言った。
おじ様は彼の願いを聞き、数秒思考した後、
「あい分かった。このルミファーネス侯爵家当主ハーバント=ルミファーネスがその願い、聞き届けよう!」
おじ様が彼にそう言っていると、馬車の扉がバタンと開き、中からツインテールのドレスを着た少女が現れた。
「お父様!無事なのですか!」
そう言って少女は、ハーバントに抱き付いた。
「ああ、大丈夫だシィーニャ。兵士達も合わせて無事だ。この御方が助けてくれたのだ。」
ハーバントは彼を見てそう言った。
「どうも、ルシフェルと言います。」
彼はそう言ってお辞儀した。
「ありがとうございます、ルシフェル様。お父様、そして兵士達が無事にいられたのは貴方様のお陰です。感謝いたします。」
そう言ってシィーニャはカテーシを取った。
「早速、ルシフェル殿を我が領地に案内したいと思ったのだが……この車輪では動く事さえ困難だな。」
ハーバントがそう言うと、
「ああ、これ位ならすぐ直せますよ。修復。」
彼が車輪に手を置きそう言うと、まるで時間が巻き戻ったかの様に直った。
「なっ!?……ルシフェル殿、つかぬ事をお伺いするが職業は何を選択されておるのか?先程の剣技にこの技術……ルシフェル殿、其方は一体。」
ハーバントはそう言って彼を見ました。
「……見ても嫌わないでくださいよ。」
彼はそう言うと、ステータスを出して、ハーバントとシィーニャに見せた。
「む?!……大悪魔か。それに剣聖、賢者、魔王か。ルシフェル殿のは先程会ったばかりだが悪い奴には思えん。しかし賢者か……我が家の執事をやらないかルシフェル殿よ。其方の様な逸材を他所に渡したくない上に娘をいざという時すぐ守れる人物を探しておったしな。」
ハーバントは彼にそう言った。
「大悪魔であるわたくしでも良いのでしたら引き受けますよ。」
彼はハーバントにそう言った。
「では、領城に戻ったら執事を頼むとするかのう。」
ハーバントはハッハッハッハと笑いながらそう言った。
「お父様、ルシフェル様、出発しますよ!」
シィーニャは馬車の中から2人にそう言った。