プロローグ
何気ない日々が大切だと言う事を君が教えてくれた。
◇◇◇◇◇
「落ち着いて聞いてくださいね」
幼少期から主治医をしてくれている立川先生が真剣な顔つきで言った。
「慧くんはあと持って1年でしょう」
立川先生の口調は穏やかで、一瞬何を言ってるのか分からなかった。
____ガタン
気づくと母さんは俺の手を強く握りしめながら泣き崩れていた。立川先生は唇を噛んで悔しそうな顔をしながら母さんを椅子に座らせた。そして、先生の下唇にはうっすら血が滲んでいた。その一方で俺は何故か先程の言葉を客観的に受け止めていた。
“ああ、俺あと1年で死ぬのか。余命宣告とかやっぱり現実でもあるんだなぁ”
そんな事を頭の片隅で考えて入れるほど冷静なはずなのに、先生のこれからについての話は全く頭に入って来ない。
「慧くんは______________です」
気がつくと話は終わっていた。立川先生は最後に俺たちに向かって『あまり諦めたり、気力を失ったりしないで下さい』と言った。なんでも、希望を持っていたり前向きな方がは病状が安定し、余命が伸びることがあるらしい。母さんは目を晴らしながら『そうなんですか』と少し嬉しそうに言った。母さんは希望が見えたと言わんばかりの顔をしているが、俺は残酷な言葉だなと思い心の中で毒を吐いた。もし、俺が1年経たずして死んだら、余命が伸びなったら母さんはどう思う?やはり希望なんて持つもんじゃないそう思いながらも、前向きに考えられない自分に俺は嫌気がさした。
俺が部屋の外へ出ると、母さんは泣きながら『これからもお願いします』そう言いながら頭を下げて部屋の外に出た。
病院から駐車場へ向かう途中に母さんはやっと泣き止んだ。
「母さん、俺頑張るからさ」
車に乗り込んでからそう言って笑うと母さんはまた泣き出してしまった。
その後家への道のりで俺は桜並木を見ながら、桜を見るのは今年が最後だろうと思いを馳せた。
※連載開始は2021年4月からです。
何か書いて欲しい学校行事があったら参考にしたいので教えて下さい!
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