3話 吸血少女と奴隷商
すみません
また投稿感覚が延びてきています(ーдー;)
気を引き締めねば
3話 吸血少女と奴隷商
「お客様……?如何なされましたか?」
「え?あっ……」
再度、強面な店員さんに声を掛けられた事で、私はハッと我に返りました。
吃りながらも、何とか返事を返す事に成功します。
……少し早口になってしまった事には触れないで下さい。
「い、いえ、すみません。少しボーッとしていました。アポイントメントのお話ですよね?……すみませんが、予約などはしていません。奴隷の購入を前提に来たのですが、事前予約が無い場合は難しいでしょうか?」
「かしこまりました、問題はございませんのでどうぞご覧になっていって下さい。それでは、私共の方で奴隷を見繕いさせて頂きますので、失礼ながら奴隷の雇用用途や、ご予算をお聞かせ願えますか?」
強面な店員さんの申し出に、私は一度深呼吸をします。
そして、大まかにイメージをしていた条件を頭に浮かべながら、それを口にしていきます。
「そうですね……私と同年代くらいの女性であれば種族は問いませんが、冒険者として活動する予定ですので戦闘の心得が欲しいですね。前衛、後衛についても問いません。それと、予算は大体相場の3倍くらい迄で見積もって下さい」
「かしこまりました。他の細かなご要望につきましては奥の部屋にて、実際に奴隷をご覧に頂きながらご指摘頂ければと思いますが、よろしいでしょうか?」
「分かりました」
「ありがとうございます。それでは早速、奴隷の準備、並びに当商会の支配人を呼び付けて参ります。恐れ入りますが、ご案内致します待機室にてお待ち下さい。……こちらです」
「はい」
そうして強面な店員さんに先導されるままに、お店の奥の方へと入って行くと、直ぐに目的の部屋へと辿り着きました。
その部屋は実務的な物こそシンプルに、部屋中央のローテブルを挟んで、向かい合うようにソファが二つ設置されているだけですが、壁や部屋の四隅には煩くならない程度に骨董品、貴重品が飾られており、その全てが非常にお高く仕上げられている事が分かります。
……大商会の名前に恥の無い商談室ともなると、こうなるのでしょうかね?
正直、ソファに座るのも辞退したくなるくらい、私には場違いな空間ですよ。
…………まぁ、強面な店員さんに着席を勧められて、断るわけにもいかずに普通に座ったのですがね。
緊張で手汗が酷くなる事を除けば、ふかふかで座り心地が抜群に良い最高のソファでしょう。
座ると言うよりも、埋まるというような感覚が癖になりますね。
私がソファに腰を掛けた事を確認すると、強面な店員さんは何処から連れて来たのか分からない、一人のメイドさんを私の前に出して一礼をしました。
「それでは私めは商談の準備に取り掛からせて頂きます。専門の給仕を置いておりますので、何か御用が御座いましたら、彼女にお申し付け下さい」
「分かりました」
「それでは失礼致します」
そう言って強面な店員さんは退室していきました。
……外見とは反して、意外と普通の方でしたね。
声を荒げる事もありませんでしたし、武器か何かで脅しをかける事もありませんでしたし……。
寧ろ、丁寧過ぎる接客で違和感を感じたくらいですよ。
人を外見だけで判断してはいけない、という典型ですね。反省です。
そんな風に退室をする強面な店員さんを見ていると、部屋に残ったメイドさんが静々と一度カーテシーをしてから、スキル【アイテムボックス】からか魔道具の『リングボックス』からかは分かりませんが、紅茶用の茶器などを取り出し始めました。
そして、お湯を沸かす所から始めて、一から紅茶を淹れてくれます。
ちなみに、こうして目の前で一から紅茶の準備をするという事は『貴方に対して毒など何も盛っていませんよ』という、宣誓と証明を表しているという事です。
まぁ、本当に効果が有るかはさておき、一種のパフォーマンスですね。
それと、紅茶は程よく渋くてとても美味しいと思います。
そんな至れり尽くせりなVIP待遇を受けてリラックスとは程遠い心境の中、ソファに座って数分間待っていると、コンコンコンとノックの後に一人の男性が入室してきました。
その男性は紳士然とした初老のような外見と言いましょうか?
白髪や白髭がピシリと綺麗に揃えられており、先程の強面な店員さんも着ていた執事服の様なスーツを着ています。
恐らく、強面な店員さんが言っていた支配人がこの方なのでしょう。
上手く言葉に出来ませんが、朗らかな柔らかい笑みを浮かべているにも関わらず、あの強面な店員さんよりもオーラと言いますか、圧力のようなものを感じます。
イメージは仕事の出来過ぎる執事、でしょうか?
……まぁ、本物の執事を見た事はありませんがね。
そうして入室してきた男性と挨拶をするべく私は立ち上がろうとしますが、それは男性に止められてしまい、私は座ったまま挨拶を返す事になりました。
どうやらVIP待遇はまだまだ継続するようです。
「大変お待たせ致しました。私はこの商会の支配人をしております、デジラと申します」
「いえいえ。こちらのメイドさんが丁寧にもてなして下さったので、待ってはいませんよ。……私はトレーネと言います。こちらこそよろしくお願いします」
「これはこれは……トレーネ様、ご丁寧にありがとうございます。もし、こちらの茶葉がお気に召したようでしたら、包みを持たせるよう手配いたしますが如何致しましょう?」
「お気遣いありがとうございます。ですが、お気持ちだけで大丈夫ですよ。……それに、デジラ様もお忙しいでしょうから、早速本題に入りましょうか」
……でなければ、うっかり何か失礼な発言を溢してしまうかもしれませんしね。
と言いますか、何故一見の……それも飛び込みの客一人を相手に商会の支配人さんが出張ってくるのですかね?
カモか何かだと思われて、お金を絞り取りに来られたのでしょうか……?
……全く否定出来ない辺りが非常に悲しいですね。まぁ、後で直接聞いてみましょう。
「おお、これは失礼致しました。お気遣いありがとうございます。ですが、私めに様などと必要はございません」
「そうですか……分かりました。ではデジラさんとお呼びさせて頂きますね」
「かしこまりました。では……失礼します」
デジラさんは笑みを浮かべながら、ゆったりとお辞儀をしてから私の対面にあるソファに腰を下ろしました。
「それでは早速商談へと移らせて頂きます」
「はい、お願いします」
「まずは奴隷雇用契約の条件確認からさせて頂きます。この度のトレーネ様のご要望は、同性であり同年代である者。前後衛は問わずに、戦闘経験やその心構えのある者。ご予算は相場の3倍迄が目安。……これらでお間違いはございませんか?」
「ええ、それで大丈夫です。ただ、戦闘に関しては本人の意志を尊重する事になると思うので、確実にお願いするとは限りませんが……大丈夫でしょうか?」
「はい、問題はございません。では——」
デジラさんはそう言って、右手でパチンと指を鳴らします。
すると、その合図を元に女性のスタッフを先導にして、14〜5人ほどの女性がぞろぞろと入室して来ました。
その女性たちは貫頭衣と呼ばれる物でしょうか?ワンピースの様に一つに繋がった服を着ているのですが、その服はかなり薄くて際どい格好の為、チラチラと先ほどから際どい部分が見え隠れしてしまっています。
そうして私が入室してきた女性たちを見ていると、デジラさんが口を開きました。
「こちらがトレーネ様のご要望に合いそうな者たちです。お時間を頂きますが、一人一人ご説明致しましょうか?」
「そうですね……お願いします」
「かしこまりました。それではトレーネ様から見て、左の者からご説明致します。この者は——」
——と、デジラさんによる奴隷の方々の説明が始まりましたが、実は私には必要のない事だったりします。
と言いますのも、私には【看破】というスキルがあるからです。
このスキルの説明は……まぁ、言うまでも無いですね。スキル名通りの効果があります。
例えば、その人のステータスや、病気の有無、身長に体重、果てはスリーサイズまでの細かな情報に、【隠蔽】スキルで隠匿された情報すらを看破……要は見抜く効果があります。
そしてこのスキルにもレベルがありまして、スキルレベルが高ければ高いほど、より詳細で正確な情報を得る事が出来る様になる訳ですね。
ただ、私がこのスキルを所持している事をデジラさんは知りません。
なので、デジラさんからすると、私は奴隷の契約購入をしにやってきたかと思えば、結局見た目だけで契約購入を決めた、言っている事とやっている事の違う意味の分からない客……という事になってしまいますからね。
説明をして頂く事は必須なのです。
そして、もう一つ理由があります。
それは私の対面に座る紳士然とした初老の男性……デジラさんです。
恐らく大丈夫だとは思いますが、この方が私に法外な金額をふっかけてきたり、嘘の情報を言って誤魔化したりしないかどうか、という判断をしたかったのです。
何せ、商会長が自ら商談をしに来たのですからね。どういった意図を持っているのかさっぱり分かりませんし、それを探るという意味でも必要な事だったと思います。
それに、カモだと思われたままでは女が廃るというものでしょう。
ちなみに、連れてこられた方達は私が種族は問わないと言っていただけにバラバラですが、皆さん共通して容姿の整った方が多いです。
……あまりこういった事を言うのは好ましくありませんが、やはり可愛い方や、美人な方の方が契約購入金が高くなりますからね。
私が相場の3倍までを目処に伝えている事もあってか、綺麗どころが集まっている気がします。
と言いますか、私は年齢を伝え忘れていたというのに、見事に歳の近い方達が集まっていますね。
スキルの【看破】を使われた感じもしませんでしたし、恐らくあの強面な店員さんは私の外見を少し見ただけで辺りをつけた事になります。
流石は大商会の店員さんですね。
人を見る事にかけて右に出る者は居ないようです。
そうして、デジラさんが女性たちを紹介していく中、私は嘘が混ざっていないかチェックしていたのですが、それは幸いな事に杞憂に終わりそうです。
と言いますか、その紹介の途中で目に入ってしまったあるお二人に意識を持っていかれてしまい、半ばチェックどころでは無くなってしまいました。
一人はステータス欄に記載されている、ある異常から。
そしてもう一人は何と言いえば良いのか、本能?が彼女を選べと言っていると言いますか、スキルの【超感覚】が彼女を求めている?気がしたからです。
……本当になんと言えば良いのでしょうかね?
この身体に転生してから、血液に関する嗅覚が異常なまでに敏感になっている気がするのですが、それが原因なのでしょうか?
美味しそう?な匂いがするんですよね……。
そんな事を考えながら奴隷の方達を見ていた所為か、私の視線がチラチラと例のお二人に移っていたのでしょう。
デジラさんは目敏く反応して、紹介を途中で切り上げてでも、私の視線の先のお二人を優先します。
「という事ですので————と、失礼しました。トレーネ様はそちらの者達がお気に召されましたか?」
「えーっと……そうですね。紹介の途中にすみません」
「いえいえ、滅相もございません。……では、他の者の紹介はトレーネ様にとっては退屈でしょうし、他の者の紹介は割愛させて頂きます」
デジラさんがそう言って女性店員さんに目配せをすると、女性店員さんは私の気になっていた二人を除いて、皆さんを連れて退室していきました。
……これは完全に気を遣わせてしまいましたね。
確かに、私の中では既にこのお二人にお願いしようと決めていますが、それをいざ他人に指摘されて良いように提案されてしまいますと、申し訳ない気持ちが湧き出てきますね。
もう少し我慢が出来なかったものでしょうか?自分が情けないです……。
ともあれ、ここまで来て『やはり大丈夫です』と、断りを入れる方が迷惑でしょうし、されるがままに流される他ないでしょう。
そんな風に私が退室する方々を眺めていると、気合を入れ直す為か、私の気を引く為か、デジラさんが小さく咳払いをしました。
……完全に後者ですね。
「それでは、此方の者からご紹介致します」
デジラさんはステータスに変な項目がある方に手を向けて、紹介の続きを始めます。
私もスキル【看破】のお陰で、彼女のステータスは分かっているので、念の為に間違いがないか確認をしていきます。
名前:シエラ
種族:ハーフエルフ
年齢:15
身長:176cm
体重:ひ♡み♡つ
スリーサイズ
B:95(E75)
W:67
H:90
身体能力:D
魔力適正:D
スキル一覧(一般スキル)
剣術:3
回避:3
風系魔法:3
水系魔法:2
特筆禁黙事項:転生者 加藤 詩織(地球、日本)
「彼女の名前はシエラ、元冒険者でございます」
「そうなのですか」
「はい。冒険者のランクはDでして、決して高いランクではありませんでしたが、その昇格速度は早く、将来有望な冒険者であるとして期待も大きな者でした。ですので、トレーネ様のご要望は完璧に満たせている者と、自信を持ってお勧め致します」
「なるほど」
「更に、彼女が奴隷となった経緯も、元を正せば不等な契約による借金でして、特例奴隷法措置を施されるほど人柄も保証出来ます。必ずやトレーネ様のお力添えになるでしょう」
「それは素晴らしいですね」
——と、他にもこのシエラさんのセールスポイント?をデジラさんが口にされますが、失礼な事に私の耳には余り入ってきていません。
と言いますのも……私の視線がシエラさんのある一部に釘付けになっており、目が離せないでいるのです。
……何なのですか?あの胸は?雪ちゃん以上の胸を初めて見ましたよ。
先程まではステータスに記されている特筆禁黙事項ばかりに気を取られていて気が付きませんでしたが、幾ら何でも大きすぎませんかね?下着のカップサイズがE75ですよ?
私が少ししか胸に対するコンプレックスを持っていないと言っても、羨ましく思ってしまいますよ……。
ちなみに、ここへ連れてこられた方たちの中でも、シエラさんの容姿は頭一つ抜けて素晴らしいです。
彫りが深めの西洋風な顔立ちと高身長、多少痩せて見えるものの完璧なプロポーションが相まって、ハリウッド女優さんのようですね。
……あの二つの山を私に少し分けて貰えませんk——
そうして、私がシエラさんに半ば見惚れている内に、デジラさんによる紹介が終わってしまったようです。
私はデジラさんに向き直って、抑揚に頷き返します。
「——以上がシエラの紹介でございます。何かご質問はございますか?」
「そうですね……。これは質問ではありませんが、後で彼女と話をさせて貰えませんか?直接聞きたい事がありますので」
「かしこまりました。それでは、もう一人の紹介が終わった後に対談の席を設けさせて頂きます。宜しいでしょうか?」
「はい、お願いします。その方がテンポが悪くなる事もありませんし、適当だと思います」
「ありがとうございます。それではこちら……オトハの紹介をさせて頂きます」
デジラさんはそう言って、もう一人の女性……オトハさんの紹介を始めました。
ちなみに、後でシエラさんと直接お話ししたい事とは、言うまでもなく特筆禁黙事項についてです。
先ほど迄のデジラさんの様子ではシエラさんが転生者だとは知らないようですからね。流石にデジラさんの前で転生がどうの〜〜といったお話は出来ません。
それこそ、妄想癖のある頭のおかしな娘だと気持ち悪く思われるか、普通は確認出来ないレベルのステータスを見る事が出来るモルモットとして研究所に護送されるかのどちらかでしょうし……。
……どちらも最悪ですね。
私はデジラさんによる紹介を聞きながら、オトハさんのステータスをもう一度確認していきます。
名前:オトハ
種族:狐人族(九尾種)
年齢:17
身長:153cm
体重:ひ♡み♡つ
スリーサイズ
B:85(C70)
W:62
H:84
身体能力:F
魔力適正:D
スキル一覧(種族スキル)
九尾解放:1
神獣化:スキルレベル無し
スキル一覧(固有スキル)
万華鏡:スキルレベル無し
幻影系魔法:1
スキル一覧(一般スキル)
短剣術:1
炎系魔法:3
※注釈※
九尾解放:現在スキルレベルの数だけ九尾の力を解放する。(最大でレベル9)尾の数によって身体能力と魔力適正が倍になる。2本で2倍、3本で3倍……9本で9倍が最大。解放後は解放時間の倍の時間、スキルを含む全ステータスが半減。(九尾種専用スキル)
神獣化:契約中の精霊と心を通わせ、精霊を肉体に憑依させる。身体能力と魔力適正を大幅に上昇させ、無条件に精霊魔法を行使できるようになる。契約中の精霊がいないと使う事が出来ない。
万華鏡:幻影系魔法の適性が上がる。
幻影系魔法:特殊属性魔法。心に作用するまやかしの魔法。実体を持つ事はないが、レベルが上がれば理を捻じ曲げる事も出来る。
注釈のバーゲンセールですね。特殊なスキルが有りすぎて確認が大変ですよ。
え……?シエラさんの時もそうですが、体重ですか……?
……それは乙女のトップシークレットですよ。気にしてはいけません。
「こちらの彼女の名前はオトハ、ご覧の通り狐人族の獣人でございます。この者が奴隷となったのは六年ほど前からでして、理由は親に売られたからでございます」
「親に売られた……ですか」
私は思わず一瞬だけ顔を顰めてから、オトハさんの方を見ました。
彼女はこの部屋に来てからずっと顔を伏せているので表情は分かりませんが、辛そうな雰囲気は伝わってきます。
そんな私の反応を見たからか、デジラさんが補足をする様にお話を続けます。
「はい……ですが悲しい事に、これは珍しい事ではありません。生活が苦しくなって売る……口減らしの対象となって売る……特に、肉体的労働力としては期待が薄く、逆に奴隷としては比較的価値が高い、女性や子供はそういった対象になり易い傾向にあるのです。…………気持ちの良い話ではありませんが」
「なるほど……」
「ですので、このオトハも犯罪歴などはありません。多少人見知りな嫌いがございますが、人柄はとても良いと保証出来ます。また、戦闘面に関しましてはまだ未熟な部分もございますが、そのポテンシャルはかなりのものを秘めていると思われます。特に、獣人特有の五感の鋭さは必ずやお役に立つ事でしょう」
「……それは助かりますね」
「そして、ご覧の通り容姿も悪くありません。トレーネ様には及ぶべくもありませんが、お側に置いて恥はかかぬ者と断言致します」
「私にお世辞は必要無いのですが……そうですね」
私はデジラさんの言葉に釣られて苦笑いを浮かべてしまいましたが、それを収めてオトハさんへチラリと視線を向けます。
すると、私が意識を向けている事にオトハさんも気が付いたのか、バッチリと目が合いました。
先程まではオトハさんが俯いていたので分かりませんでしたが、確かにデジラさんが容姿が良いと言うだけあり、彼女の容姿もとても素晴らしいですね。
肩で切りそろえられたミディアムの金髪に整った顔、目は臙脂色というのでしょうか?私の濃い赤色とは違い、オレンジ掛かった薄めの赤色です。
体つきも痩せてはいますが、しっかりとした線を描いていて、スリムながらもスタイルも良いです。
そして何よりも目を引くのは、もふもふとした耳と尻尾でしょう。
今は彼女の気持ちを表しているのか、どちらもしょんぼりとしていますが、触ればとても気持ち良さそうですね……。
是非、触らせて頂きたいものです。
それと、先程デジラさんも仰っていましたが、オトハさんたち獣人は人族と比較しますと、総じて五感が鋭いという特徴があります。
その中でも更に獣人の種族毎にも特徴がありまして、例えば犬人族や狼人族は嗅覚が特に鋭く、猫人族は視力が鋭く、兎人族は聴力が鋭い……などですね。
そして、オトハさんたち狐人族はそんな獣人の中でも、かなり違った特徴があります。
それは身体能力が低く、魔力適正が高いという事です。
獣人という種族が身体能力が高く、魔力適正が低い事を考えますと、かなり変わった特徴だという事が分かり易いでしょう。
まぁ、身体能力……運動適正とも言える力が低いだけで、嗅覚や聴覚などの五感の鋭さは獣人たちの中では平均的で、決して低くは無いのですがね。
私たちよりもずっと鋭い事は間違いありませんし、スキルや諸々を鑑みてもポテンシャルが高いというのも納得です。
ちなみに、身体能力や魔力適正の程度は下からG、F、E、D、C、B、A、Sと8段階に上がっていきます。
身体能力は読んで字の如く、どれだけの運動能力があるかを指標していまして、魔力適正は……何と言いましょうか?
魔力量ではなく、その質の高さを示している……と説明すると分かり易いですかね。魔力適正が高ければ高いほど、同じ量の魔力でもより高効率に魔法を行使出来る訳です。
……しかし、私の魔力適正(SSS限界突破)は一体何なのでしょうかね?
バグですね。
私はデジラさんへと視線を戻して、一度咳払いをしてから口を開きます。
「すみません、デジラさん。先程お話しした通り、シエラさんと……と言いますか、彼女たちとお話をさせて頂けますか?どうするのかは殆ど決めていますが、最後の決め手が欲しいので……」
「勿論でございます。面談はお一人ずつ行われますか?」
「いえ、お二人共同時にさせて頂いても良いですか?一々外で待って頂くのも面倒なので」
「かしこまりました。それでは私共は一度退室をさせて頂きます。この部屋は魔法による防音仕様でございますので、トレーネ様の会話が外に漏れる事はありません。ご安心下さい。……また、お話が終わりましたら、こちらのベルを鳴らし下さい」
デジラさんはそう言うと、懐から小さなハンドベルを取り出して、テーブルの上に置きました。
「こちらのベルは【共振】という特殊なスキルが込められた魔道具でして、私がどこに居ようとも、所持者である私には音が聞こえるようになっております。その為、防音室であるこの部屋の外に居てもタイミングを計る事が出来るのです」
「へぇ……変わった魔道具ですね」
「ありがとうございます。余り実用的な物ではありませんが、私のお気に入りなのです。……それでは失礼致します」
デジラさんは最後にそう言って、メイドさんを連れて退室していきました。
部屋に残ったのは私とシエラさん、オトハさんの三人だけになった訳です。
さて……一応、盗聴の危険が無いかどうか、部屋に付与された防音機能は本当なのか【闇夜に映る眼】で確認しておきましたが、問題は無いようです。
ただ、本当の問題は何をどうお話ししていけば良いのか、という事でして……。
初対面の方とのお話の切り出し方がさっぱり分からないのですよ。
…………いえ、別に私はコミュニケーション能力に乏しい訳ではありませんよ?
そのような事は無いのですが、私はお二人共を契約購入するつもりですし、お二人には是非とも好印象を持って頂きたいと思っています。
そうしますと、やはり第一声が非常に重要となってきまして、どうお話を切り出して良いのかが分からない……という事なのです。
何度も言いますが、私はコミュニケーションが下手な訳では無いのです。
はぁ…………。
私は内心溜め息を吐きつつ、ゴクリと生唾を飲み込んで覚悟を決めました。
非常にどうでも良い事ですが『強面な店員さん』に
名前:ジェフリー
趣味:あみぐるみ作成、ケーキ屋巡り
の設定が私の中で追加されました
今後の登場予定は一切ありません
変更点1※異世界の国の名前
今更ですが適当すぎんか?と思ったので……
ユーラシア王国→メレフナホン王国
変更点2※異世界の街の名前
同じく適当すぎんか?案件です……
エイジア→アヴァンテル




