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11話 吸血少女と看板娘

明けましておめでとうございますm(_ _)m

……え?もう年明けから三週間も過ぎた、ですか?

……すみません

ぶっちゃけ、正月休みは執筆出来ませんでしたorz

完璧な寝正月でした…


今年も完結を目標に更新していきます!

更新頻度向上は努力目標に……!

 11話 吸血少女と看板娘



 私たち三人はドブロクさんのお店を後にしてから、冒険者ギルドでカルネさんから頂いた地図を元に『南国鳥のさえずり亭』という宿屋さんへと寄り道をする事なく、真っ直ぐに向かいました。

 途中、一度曲がり角を間違えてしまい、少し道に迷ったりもしましたが、おおむねスムーズに辿り着く事が出来ました。


 ……この街の大通りに、魔道具らしき街灯がしっかりと配備されていて本当に良かったですよ。もしも真っ暗だった場合、少し・・では間違いなく済みませんでしたね。

 私は種族的に夜目が利きますが、街の雰囲気が変わり過ぎて余計に混乱していた事に間違いありません。


 ……一応、一度通った道であれば寸分の狂い無く覚えられるのですがねぇ。

 前世では見知らぬ場所に出歩く……という経験そのものが不足していて、地図を見るという事自体が苦手なのですよね。

 そもそものお話、ナビアプリがあったので地図を見るなんて事をしませんでしたし……。


 そうして、なんやかんやと無事に宿屋さんへと辿り着いた私たちでしたが、実は店内に入る事が出来ずに、二の足を踏んでいます。

 と言いますのも——



「流石にお勧め頂いたお店……大繁盛ですね。——と言いますか、これだけ宿泊客が居てはチェックイン出来ないのではありませんかね……?」


「いえ、丁度夕飯時ですし、宿泊客以外が食堂を利用しに来てるんだと思いますよ。大体の宿屋は大衆食堂も兼業してますから」


「なるほど……」


「す、すごい人気店です……っ!」



 紹介された『南国鳥の囀り亭』はそこそこ大きめなお店でした。

 窓の配置を見るに階数は4階建であり、敷地面積も周りにあるお店よりはそれなりに広く取られています。

 その為か、お店の入口も大人が3〜4人は並んで歩けそうな程に広く、そして扉の類が存在・・して・・いません・・・・

 ……はい、扉が無いのです。

 実に開放的でして、一階の喧騒がお店の外に居る私たちにも筒抜けになっています。普通に騒がしいですね。


 と言いますか、防犯を考えるに扉が無いというのは、如何な物なのでしょうか?

 パッと見た感じでは、冒険者ギルドのように何か魔法が付与されているようには見えませんが……何か理由が有るのですかね?

 私にはさっぱり分かりません。

 そもそもこのお店に限らず、他のお店も大体同じようでしたし……。


 ——と、そんな風に私たちがお店の中をチラチラと覗いていた事に、店員さん?らしき6〜7歳程の人族の少女が気が付いたようです。

 彼女はにぱっとした笑みを浮かべながら、こちらまで小走りに駆け寄って来ました。


 そして……私と目が合ったかと思うと、駆け寄って来た用件も忘れて、大声で矢継ぎ早に口を開きます。



「あ、いらっしゃいませぇ!ご飯でs——ぅわぁぁぁああ!!!お姉さんすぅぅぅっごくきれぇぇぇえ!」


「え、えぇっと……え?わ、私の事ですか?」


「うんっ!お姫さまみたい!すごぉぉぉい!!!」


「え、えっと…………ありがとうございます?」


「あの、あの、あのっ!お姉さんも冒険者なの!?それとも、ホントにお姫さまっ!?!?」


「い、いえ、冒険者ですよ。新人ですが……」


「わぁぁあ〜!お姉さんも冒険者なんだぁ〜〜!すごぉぉぉぉい!!!」


「あ、ありがとうございます……???」


「——あっ!わたし、エマって言うの!お姉さんは!?お姉さんの名前は……!?」


「え、えぇっと……と、トレーネと申します」


「トレーネお姉さん……っ!ねぇ!ねぇ!トレーネお姉さん!ここでご飯食べてってよ!もっとお話したいよぉ!ねぇねぇねぇ、だめぇ……?」


「え、ええっと————」



 私は思わず視線を彷徨わせて、脳内から適切な言葉を何とか絞り出すべく逡巡します。


 いえ……決して、迷惑だとか、子供が嫌いだとか、そういった理由では無いのですよ。寧ろ、幼子おさなごらしい無邪気な愛らしさが非常に好ましいと思います。

 ですがこう……何と言いますか、これほどにもキラキラと目を輝かせて憧憬されてしまっても、どう反応を返してあげると正解なのかが分からないと言いますか……。

 今まで、このように幼子から何かを強請ねだられる事が無かったものなので、このハイテンションへの対応が分からないのですよ。


 そんな風に、しどろもどろに言葉を探す私を、シエラさんは見兼みかねたようです。

 彼女はしゃがみ込んでエマちゃんと視線を合わせると、柔らかな笑みを浮かべて話しかけました。



「ねえねえ、エマちゃん。ちょっと良いかな?」


「ぅんぇ……?————っは!お姉さんおっぱい、おっきぃぃ!!こっちのお姉さんはお耳と尻尾がもふもふぅ!かわいいぃぃ!!」


「んふふふ、ありがとう。エマちゃんもとっても可愛いよ」


「ありがとう、エマちゃん。後で尻尾、触らせてあげるね」


「やったぁぁぁあああ!!!」



 え?それはちょっと、いえ、かなり羨まs——あ、はい、すみません。何でもありません。それどころじゃありませんね。

 私のフォローをして下さってるのですし、その張本人がお話を脱線させる訳にもいかないでしょう。


 …………ですが、いつか……いつか一度だけ、私もオトハさんにお願いしてみましょうか。

 あのもふもふは、それだけ魅力的なのです。



「ねぇねぇねぇ!お姉さんたちも、トレーネお姉さんと一緒で冒険者なのっ!?」


「そーだよー?それでね、今日はここの宿にお泊まりに来たんだ。勿論、ご飯も食べて行くよ?だからお泊まりが出来るか、お店の人の所まで連れてってくれるかな?」


「ほ、ほんとっ……!?」


「うん、本当だよ。だからお願い出来るかな?」


「わぁぁぁぁい……!!!分かった!じゃあ着いて来てねぇっ!————おかぁぁさぁぁぁん!!!」



 シエラさんからお願いをされた少女、エマちゃんは両手を挙げて喜びを表現すると、その勢いのままにテテテテッと駆け出して、お店の中へ蜻蛉とんぼ返りして行きました。

 その様子を見て、私はポツリと言葉を溢します。



「…………お二人共ありがとうございました。とても助かりましたよ」


「いえ、大した事じゃありませんし……」


「わ、私は何も出来てませんから」


「そんな事はありませんよ?オトハさんのお陰でエマちゃんの注意が逸れて、シエラさんのお話がすんなりと耳に入った部分もあると思いますし」


「あ、ありがとうございます……」


「……ご主人様は子供が苦手なんですか?雰囲気からして、嫌いっていう訳では無さそうでしたけど……?」


「あぁ……はい、子供はとても好きですよ?ですがこう……あまりのテンションの違いに付いて行けないのですよ。もう少し、私の準備が整ってから来て欲しいと言いますか……。はたから見ている分には可愛らしいのですがね」


「あー、確かにあの超ハイテンションで迫って来られると、熱量に負けちゃいそうになりますよね」


「……その割には完璧な対応に見えましたよ?」


「それは……昔に、子供に囲まれるような環境にいた事がありまして……それで少し」


「なるほど……?オトハさんはどうなのでしょう?」


「わ、私は、その……里に居た時によく小さな子の相手をしてたので……」


「やはりオトハさんもでしたか……」



 私たちが立ち尽くすようにお話しをしていると、私たちがいない事に気が付いたのでしょう。

 エマちゃんが再び駆け足で戻って来ました。


 そして、私の手を引っ張ってお店の中へと誘導します。



「もぉ!トレーネお姉さん!はやく、はやくぅ!」


「え、えぇ、今行きますよ。ですので、そんなに引っ張らないで下さい。……お二人も行きましょう」


「はい」

「分かりました」



 そうして、エマちゃんに半ば連行されるようにお店の中へ入ると、私たちはそのままカウンター席へと案内されました。

 カウンターテーブルの向かい側には、エマちゃんによく似たうら若い婦人が立っています。

 恐らく、彼女がエマちゃんの母親なのでしょう。


 ……と言いますか、少し安心しました。

 まさか、エマちゃんは店員としてこのお店に雇われて・・・・いるのかと思いましたが、場の流れからして家がこの宿屋さんを経営しているので、そのお手伝いをしていただけなのでしょう。

 日本とは生活環境も法律も何もかもが違う事もあって、そういった可能性があるのかと思わず考えてしまいましたよ。



 エマちゃんはカウンター席まで私たちを案内すると、脚の高い椅子をよじ登って身を乗り出しながらカウンター越しに母親へと話し掛けました。

 私の隣の席です。

 ガヤガヤと騒がしい店内に負けないよう声を張り上げている所為か、幼子特有の甲高い声が耳に響きます。



「おかぁさん、おかぁさんっ!トレーネお姉さんたち連れて来たよ!お泊まりしてくれるって!あと、あとご飯もっ!!ねぇ!ねぇ!!ねぇ!!!」


「もう、エマ……?そんなにはしゃぐと危ないわよ。ほら、ちゃんと座って」


「ぷぅ…………はぁぁ〜〜い」


「それでそちらが——っ!?すみません、お客さん。娘が無理を申したようで……」



 エマちゃんのお母さんは私と目が合った瞬間に、何故か少しだけ驚いた表情をしましたが、直ぐに気を取り直して軽く頭を下げました。

 どうやら、エマちゃんが私たちを強引に連れて来たと勘違いしているようです。


 ちなみに、エマちゃんは言われた通りにキチンと椅子に座り直していますが、まるで拗ねていますよ、とアピールをするように唇を尖らせて不満?を露わにしています。

 何ですかその仕草は……可愛すぎませんか?


 私はそんなエマちゃんから断腸の思い?で視線を外して、エマちゃんのお母さんへ向き直りました。

 そして、努めて柔らかく笑みを浮かべながら口を開きます。



「いえいえ、そんな事はありませんよ。元々、ここがおすすめの宿屋さんだと、冒険者ギルドで聞いたので訪ねたのです」


「あら、そうなのですか……?」


「ええ、なのであんまり叱らないであげて下さい」


「そうですね……分かりました」



 私がそう言うと、エマちゃんのお母さんは苦笑いを浮かべて頷きました。

 すると、一度咳払いをして気を取り直し『ボックスリング』か【アイテムボックス】からかは分かりませんが、一冊の台帳とペンを取り出してテーブルの上に広げます。



「こほん……宿泊でしたね。先ず、うちは三人部屋の用意がありませんので、四人部屋を使用していただく事になりますけど、よろしいですか?」


「ええ、問題ありません」


「ありがとうございます。料金は宿泊のみの場合一泊5000アリス、朝夜の食事付きの場合は6000アリスですね。どちらにいたしましょう?また、何泊のご予定でしょうか?」


「あー、そうですね……実は全く決めていなかったんですよね。……取り敢えず、食事付き一週間でお願いします」



 この街を拠点として、奴隷契約をした方たちと冒険者活動をしていく事は既定路線でしたが、それ以外は全く決まっていませんでしたからね。

 基本、その場、その場でのアドリブのようなものです。行き当たりばったりとも言います。

 ですが私としましては、日本にいた時には考えられない、この世界ならではの冒険者たびびとらしい考えで、実はかなり楽しめていたりします。

 何と言いますか、何にも縛られていない感じが好きですね。


 まぁ、この世界に来て、まだ一日すら経過していないので、目新しさにそう感じているだけかもしれませんがね……。



 エマちゃんのお母さんは台帳に何やら記入をすると、台帳を私の方へと向けて差し出し、一緒にペンも渡してきました。

 そして、台帳に記載されている枠を指差しながら、説明をしてくれます。



「それでは、ここの枠に全員分の名前を書いてもらえますか?これは宿泊証明も兼ねているので、必ず記入いただいているものです。あぁ、文字が書けない場合は代筆しますが……必要ありませんよね?」


「ええ、大丈夫ですよ」



 私はそう頷いて、台帳に私たち三人分の名前を書き込みます。

 また、当然と言えば当然ですが、日本語でも英語でも……と言いますか、地球に存在していた文字とは違う物です。


 それを何故私が書く事が出来るのかと言いますと、転生時に精体情報——記憶や性格などの情報に、読み書きなどの常識を上手く刷り込んでいただいたからですね。

 そうしなければ未知の言語を一から習得する事になる訳でして、要は言語解読をする羽目になります。

 それはそれで面白そうですが、転生の完了にどれだけ時間が掛かるか分かりませんね。

 刷り込みが出来るのであれば、転生する私たちからしても、転生させるゼウス様たちからしても、それが一番手間が少なくて済むという事のようです。



 ちなみに、この世界中全体の識字率は日本の義務教育が始まる6歳以上を対象にして、三割から四割弱程度と余り高いとは言えません。ですが、このメレフナホン王国に限って言いますと、なんと六割強程度にまで跳ね上がるのです。

 この世界に於いて、メレフナホン王国が如何に教育先進国であるかが分かります。

 まぁ、それでも地球の先進国には遠く及ばない訳ですが……はっきり言ってアレは異常な水準の高さですよね。


 実際、教育政策を進めるにはお金と時間が幾らあってもありませんからね。

 魔物や魔王という明確な外敵が常に存在しているこの世界に於いて、そこまで金的資源、時間的資源をく訳にはいかないのでしょう。

 こうして世界を離れてみますと、如何に日本の生活環境が恵まれていたかが分かります。


 そして、そんな教育水準の世界だというのに、エマちゃんのお母さんが私は文字の読み書きが出来ると断定した理由は……まぁ、私が着ている服でしょうね。

 こんな見るからにお高そうな服を着ているのですし、教育を受けるだけのお金も有ると判断されたようです。



 私とお母さんのお話を聞くだけでは暇で、大人しく待つ事に早くも飽きてしまったのでしょう。

 エマちゃんは私たちの名前が記入された台帳を、身を乗り出して覗き込んできます。



「えっと、えぇっと……トレーネお姉さんと、シエラお姉さんと——お、おと、おと……オトハ?お姉さん。で合ってる……?」


「ええ、正解ですよ。こちらの背の高い方がシエラさん、獣人の方がオトハさんです。良く読めましたね」



 私はエマちゃんの頭を撫でながら、ニコリと笑みを浮かべました。


 オトハさんのお名前はこの辺りではかなり珍しいので少し悩んだようですが、何とか読めましたね。

 先程、エマちゃんのお母さんは『代筆します』と仰っていましたし、エマちゃんはお母さんから読み書きを習っているのでしょう。



「わぁぁい!トレーネお姉さん、ありがとぉ!あ、オトハお姉さん!後で尻尾触らせてね!」


「うん良いよ、約束したもんね」


「こら、エマ……!度々、本当にすみません……」


「あっ、いえ、気にしないで下さい。私は大丈夫ですから」


「すみません……。エマ?ちゃんとお礼を言うのよ……?」


「はぁ〜〜い!」


「……それはそうと、宿泊費は前払いですよね?いつお支払いすれば良いのでしょうか?」


「あぁ、すみません。でしたら今——」



 ——と、そんなやり取りをしながらも、私たちは宿泊代を支払って部屋の鍵を受け取り、そのまま夕食を注文しました。


 エマちゃんも今日のお手伝いは終了なのか、それとも単にご飯の時間なのか、私たちと一緒に夕食を摂るようですね。

 注文を待っている間、私たちも注文した今日のおすすめについて、一生懸命に説明をしてくれています。……なんとも可愛らしいですね。



 それと、エマちゃんのお母さんのお名前はエンリさん、お父さんのお名前はドーマさんとの事でした。

 お店ではエンリさんがカウンターで接客担当、ドーマさんは厨房で調理担当をしているそうです。

 何でも、エマちゃんのお名前はご両親から名前をもらって付けられたとか。

 実に愛されているようで、こちらまで気持ちが温かくなりますね。



 そんなこんなと、雑談をしながら料理を待っていると、両手にトレーを持ったエンリさんがカウンターの奥から出てきました。



「お待たせしました。こちらが本日のおすすめ『氷鶏こおりどりの香辛煮込みセット』です。こちらが普通盛り、こちら二つが特盛ですね。お熱いのでお気を付けて、召し上がって下さい」


「ありがとうございます。これは……!とても美味しそうですね」


「わぁっ……!ありがとうございます、美味しそう」


「ありがとうございますっ!良い匂いです!」


「おとぉさんの料理、すっっっごい美味しいんだよっ!食べて、食べてぇ!」


「エマ、良い加減になさい。お姉さんたちが困るでしょう……?ほら、あなたのご飯ですよ」



 エンリさんはそう愚痴を溢しながら、キラキラとした目で食事を勧めてくるエマちゃんの前にも、トレーを置きます。

 メニュー自体はまかないのような物なのか私たちと同じ物ですが、年相応に少なめに盛られていますね。


 あぁ、特盛が二つありましたが、誰のものかは……まぁ、説明の必要は無いでしょう。

 お昼ご飯に、600gはあるお肉をペロリと平らげる健啖家たちですからね。特盛にでもしないと、とても足り無いようです。



 ……しかしまぁ、エマちゃんが興奮気味に勧めてくるのも、少し分かる気がしますね。


 パッと見た感じはシチューと肉じゃがの中間のような見た目ですかね?

 大きめの一口大に切られたお肉や根菜などの具材がゴロゴロと転がり、ボリュームは十二分。見た目にも楽しませてくれます。

 肝心のスープと言いますかタレ?は匂いから考えるに、ウスターソースのような調味料をベースに、料理名通りハーブを幾つか組み合わせて煮詰めているのでしょう。

 見ただけでも、タレの旨味が具材にも染み込んでいるであろう事が分かります。

 そもそも、お肉自体も氷鶏……要は鶏肉ですし癖は少ないでしょうから、煮込み料理との相性は抜群に良さそうですしね。期待しかありません。


 そして、付け合わせにパンも用意されていまして、タレと絡み合わせて食べるとより一層に楽しめそうです。

 いえ、寧ろその為に用意されていると言って過言では無いでしょう。

 食べなくても分かる美味しさ、とでも言いましょうか?



「……では、いただきます」


「いただきます」

「い、いただきます!」


「いっただきまーす!」



 私たちはキチンと合掌してから、思い思いに料理に手を付けていきました。

 私は先ずはタレのみを、スプーンで軽く掬って口に含みます。



「……ん!これは美味しいですね」



 私は予想を遥かに上回る美味しさに、思わず笑みが溢れます。


 予想した通り、この煮込み料理はウスターソースっぽい調味料をベースに味付けをしているようですね。

 トロトロになるまで煮込まれた根菜やお肉の旨味がタレにしっかりと溶け出しており、口に咥えた瞬間からガツンと舌に大きなインパクトを与えてくれます。

 しかしそれでいて、喉を通過した辺りでハーブの風味が鼻から抜けていき、決してくどさが舌に残らない程度にも調整されているのです。

 味付けは完璧と言って良いでしょう。



「ふぅ、ふぅ……はむっ……んっ!…………んくっ……!」



 野菜も文句の付けようが無い程、良く煮込まれていますね。

 口に含みますと噛む必要も無いくらい簡単に崩れますし、野菜独特の甘みとタレが絡み合って絶妙にマッチしています。

 大きめに切られている為、物足りなさを感じる事もありませんしね。

 そして——


 私は満を辞して、お肉をスプーンで掬い上げて口へ運びます。



「ふぅふぅ……んっ、んんっ……!〜〜〜っ!!んっく!美味しいです……!」



 これは最早、旨味の暴力とでも表現しましょうか。

 プリプリとした食感のお肉を噛めば噛むほど、肉汁と煮込みタレが口の中で暴れ回り、十全な満足感と幸福感を私に押し付けてきます。

 鶏肉ですし、お肉自体はあっさりした味だと思っていましたが、全くそんな事は無いのです。

 しっかりと重厚感のある肉汁に溢れており、ボリューム感は十分。しかし、牛肉や豚肉のように脂っこいという事もなく、女性ウケも良いであろうとも伺えます。

 また、野菜同様に大きめの一口大に切られているので、プリプリとした鶏肉の食感もしっかりと堪能出来るのです。

 この煮込み料理の主役を張るに相応ふさわしい存在感と言えるでしょう。素晴らしいですね。


 まぁ、ここまで長々と無駄にお話ししましたが……要はとても美味しい、という事ですよ。

 急にちんけな言い回しになりましたが、美味しい食べ物は知能指数を低下させますからね。『美味しい』以外の語彙が全て消し飛んでしまうのです。

 ……こう言いますと、随分危険な食べ物に聞こえてしまいますね?不思議です。



 そうした料理の美味しさに舌鼓を打っているのは私だけではなく、シエラさん、オトハさんのお二人も同じようです。

 お二人共満足そうに表情を緩ませながら、手と口を忙しなく動かしています。

 そして、この料理に夢中な子はもう一人いました。



「んぅぅ〜〜〜っ!!美味しい!美味しいねっ!ねっ!トレーネお姉さんっ!!」


「そうですね。エマちゃんの言う通り、お父さんは料理上手ですね」


「でしょぉぉぉ!!それでねっ、それでねっ————!」



 私たちは嬉しそうに語るエマちゃんと一緒に、夕食を楽しみました。


みんな大好き、ロリっ子の登場です

何故、人類はロリに惹かれるのか…永遠の議題ですねぇ

おねロリ……良いよね( ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾


あと、最後の食レポ紛いのナニカはすっ飛ばしていただいて大丈夫ですw

エロい人が言ってましたが、エロと食レポはよほど修辞技法に長けていないと残念な感じになるとか、ならないとか……?

その一例がちょっと上に載ってます

……練習しますorz



最後に

亀更新で申し訳無いですが、ブクマ、評価ptなど頂けたらとても励みになります!



変更点1※異世界の国の名前

今更ですが適当すぎんか?と思ったので……

ユーラシア王国→メレフナホン王国


変更点2※異世界の街の名前

同じく適当すぎんか?案件です……

エイジア→アヴァンテル

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