動物と話せても
お題、女のアルパカ。制限時間15分。
ふわふわもこもこ、バザバザまつげに、ぱっちりおめめ。
『ちょっと、あなた本気? 女の毛皮を剥ぐなんて』
「物騒なこと言ってくれるな。長すぎてもこもこの暑苦しいお前の毛を刈って、これから雪山に行く俺の防寒具を作ろうってだけだろ」
専用のハサミを持ってアルパカへと近づく。こいつを飼い始めてから随分と年月が過ぎた。毎年この毛の塊には世話になっている。
最初は可愛らしいだけの子供だったが、いつの間にかこいつは口が達者になり俺をやり込めようとしてくる。
「人間と動物の間に、翻訳機なんて必要なかったんじゃないのか?」
命は全て平等という考えから、動物との対話可能な翻訳機が発売されて十余年、いまではすっかり定着している。
『あなた、私に黙れって言うつもりかしら? 残念ね、黙らないわよ。あなたに聞こえなかったってこのつばと一緒に私の言葉を吐き出し続けてやるんだから』
モゴモゴと口を動かす姿はやはりアルパカだ。口がうるさくてかなわない。
『もっと丁寧に刈ってちょうだい。私の玉のお肌が傷つくわっ』
口うるさい女だ。すっかり大人の。
小さかったアルパカは、大人になり、いずれ歳をとる。老婆になっても『私は女よ丁寧に世話しなさい』なんて言い放つのだろう。
動物と話すなんて。俺を先に置いていくのに。