まるで空気男
その後、戦原ちゃんに色々警告されて無事に教室へとたどり着いた。
「はー!朝から災難だー!!」
ドアを開けた途端、教室の全員は静かになった。虐めかい!!流石に悲しいわ!私は急いで席に着いて、授業の準備をした。急げ!そして友達を作れ!!
「あれ、お前もうあの戦馬鹿から逃げてきたの?」
「!」
前からさっきまで聞いた声がした。
「静山君!!」
「なんだ、俺の名前知ってんの?へぇ、意外だなぁ、このクラスで俺の事知ってる人間、先生しか居ないと思ってた。」
ポキ、と静山君はなんか凄いネガティブ発言しながらポッキーをかじっていた。
「ま、まぁ、知ったのはホンの数分前だけど!!」
「あぁ、そう」
「…なんでポッキー食べてるの?」
「朝飯」
「!そ、そうなんだ!」
これは、好機ではないか天初孝美よ!!相手が積極的に!私に話している!!
「私は朝ご飯、目玉焼きモーニングなんだ!」
「へー」
食いついている!!なんか興味無さそうだけど、私、話せてる!!
「でもさぁ、その所為で遅刻しちゃったんだ!やっぱ和食だヤッホイが良かったかな…!」
照れくさくて、不意に静山君の方を見ずに、自分の膝を見ていた。
「昨日の朝ご飯は!」
「あ、そうだ、お前さ、話したい事あるんだけど」
「な!何かな!!」
「出来ればさ、俺に関わらないでくれる?」
「え」
其の言葉に私は直ぐに静山君の顔を見る。
「な!何で!?折角仲良くなれそうなのに…!」
「は?俺にダチなんて要らねえよ、何言ってんの?」
「え…」
さっきまで見えていた希望が、一瞬で地に落ちた。
「俺さ、出来るだけダチ作らないようにしてんだよね
分かる?俺の存在感が皆無な理由。」
自覚してたんかい!
「周りに無駄な関係作りたくないから、俺の事分かった時、あぶねぇって思ったよ
駄目だな俺、全く空気に成れねぇや」
「……」
静山君はそう言って私に微笑んだ。
怖い笑みだ。
「な、何で?
何でそんな事…」
「んー!人間強度が下がるし、目障りだし、五月蠅いし、ウザいし、」
とふざけた様に指で数えていく。
「ああ、それと、トラウマがあるから、かな?以上だ!そう言う事で、よろしくな」
「あ、ちょ…!待って」
言いかけた途端、教科の先生がドアを勢いよく開け、「席に着けー!」と言ってきた。
皆が席に着く騒めきを利用して、静山君は物音無く姿を消した。
空気男の様に。
「……酷くない?」
轢斗への宣戦布告は、難しくなりそうだ。