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朝四時の窓辺にて  作者: ハーベスト
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今日も町は

カナリアの朝は早い。愛らしいその鳴き声が、僅かに日の光が入る私の部屋に朝が訪れたことを知らせる。

シルクで出来た布団の中でうずくまり、外の音を遮断した。微かに残るリネンの香りが思考と行動を切り離し、再び私を眠らせようとしている。頭の中では起きようとしているのだが、布団の温もりとシルクの感触の虜になっている私の身体は布団の中から出ることを拒んでいる。

休日の朝、あと少しだけこの快楽の中で過ごすかどうかという究極の二択で葛藤する私に、突如としてその葛藤を一蹴する魔の手が伸び、布団を無慈悲にはぎ取ってしまった。

「今日はクランペットを食べに行きましょう」

驚くほど淡々と言葉が発せられた。

魔の手の持ち主とは思えないほどかわいいお菓子の名前を発し、その顔は照れているのか、なぜか赤くなっており目を背けている。

その可愛さと唐突さに思わず「はい」とつぶやいてしまっていた。

――悪魔かよ。

渋々、体温の温もりが残る布団を捲りあげ、心地良い体勢と感触を放棄した。

眠け眼を擦りながら見た二本の時計の針はそれぞれⅦとⅫの文字を指していた。

久々の休日にもかかわらず、身体は規則正しくリズムを刻み、すっかり眠気も消えていた。生活リズムが染みついたのは良いことではあるのだが、なんだか少しもったいないと思うところが多少なりともあることは否定できない。まあどちらにせよ休日はルームメイトに無理やり起こされるので寝坊さんになることは無いなとおもった。

日が差す窓を見上げ、新しい一日に胸が躍る。この町の一日は人々に幸福をもたらすために今日も廻り始めたのだ。


豊穣都市ミルフォード――。

天の恵みによって一年中、耕作物などの収穫が保障された豊穣の町。

おとぎ話に出てくるような多彩な石や煉瓦で彩られたこの町は毎日人々の笑顔で溢れかえっている。

古くから騎士の町であったこの町に一般人が住み着くようになってからおよそ五十年が経った。学問とは無縁であった者も多く生活しているこの町にとうとう町で最初の学び舎が建立され、更なる活気と笑顔で今日も賑わっている。



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