真綾の想い_3_2
翌日の放課後、メールの通り、和田は校門の前で待っていた。真綾の姿を確認すると、彼は満面の笑みで大きく手を振った。
「やあ」
と挨拶する和田を、真綾は唇を曲げて見た。つい先日まで小学生だった彼女にとって、同じ中学生とはいえ、3年の男子となれば、身体も風格も大きく見え、どうにも気後れしたような心地を覚えてしまう。
「そんなに緊張しなくていいよ」
緊張した面持ちの真綾を諭すように和田は言う。
「今日、部活はなかったんですか?」
「あんなもの、行こうが行くまいが一緒さ。いつも適当に遊んでるだけだから」
「そうなんですか?」
「あんなもの、練習にもならないさ」
と、和田は冷めた目をして言う。
「さあ、これからどこへ行こう」
「決めてないんですか?」
「まあね。ただ、ふたりして行けるところがいいな。カラオケとかでもいいけど、学生服で目をつけられたら鬱陶しいし――何かしたいことはある?」
「家に帰りたいです」
真綾ははっきりと答えた。和田の顔から、すっ、と表情が消えた。
「なぜそんなことを言う。約束を忘れたわけじゃないだろ」
やけに乾いた声だった。約束って何だろう――と真綾は思った。しかし、和田はすぐに、もとの快活な口調に戻った。
「そうだ。家がいいのなら、僕の家に行こう」
「あなたの家?」
「そうだ。そこなら変に目をつけられることも、余計な口を挟まることもない。決まりだね」
と言って、和田は歩きだした。真綾もしぶしぶそれに続いたが、どうにも気は進まなかった。ふたりで落ち合って、はじめて行く先が相手の家だとか、ハードルが高すぎる。強引に話を進める和田に、真綾は不安を覚えずにはいられないのだった。