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無限回廊  作者: ウー
6/7

6

人気のない北校舎の資料室。

簫子としろがねはいつもそこで昼食を取っていた。

まず誰も訪れることはないから、二人だけの「秘密」を人目を気にすることなく話せるのだ。


「ねえ、私達死んだら天国に行けると思う?」


昼食を摂り終わり、窓からサッカーやバレーをしている生徒達を何気なしに見ていたら、ふとしろがねが尋ねてきた。


「そんなこと、考えたこともなかったけど。」


ここ何百年は、自分が死ぬなんて考えたことなかった。

死にそうになったら巻き戻せばいいだろうし、今まで自分の死に直面することなどなかった。


「私達、地獄に行きそうじゃないかしら。」


ふと、しろがねが隣に来た。

サラリと伸びる長い髪から石鹸の香りがする。


「運命に逆らい、人の魂を閉じ込めている。この無限回廊に。」


薄着の夏服からスラリと伸びる白い肢体、人形のように長い睫。

何故か、欲望に駆り立てられ、衝動的にずしろがねの手を握ってしまった。


「…地獄、そうだね、私達は神が決めた運命に逆らっている。でもこの能力も神より承りしものなんじゃないかな。」


簫子は怪しい笑みを湛えながらゆっくりとカーテンを閉めた。

握る手が自分でも驚くほど熱が篭っており、どちらのものかわからない汗が手首を伝う。



「貴方なんて、近親相姦をしているもの。とんだ背徳行為だわ。」


壁際にしろがねを追い詰めた。

生徒達の楽しげな声が遠くに聞こえる。

薄暗い資料室には二人きり。視線と言えば、飾られてある美術品の人形くらいのものだ。


「そう、そしてまた罪を犯そうとしてる。私、これから貴方を襲うのよ。」


薄く赤みが浮かぶ柔らかい唇に、簫子は貪り付くように強く吸い付いた。

しろがねは拒否もせず、だが受け入れる様子もなく淡々と受け止めている。


「同じことを繰り返すこの世界で、これしか新鮮なことがない。」


しろがねの体を野獣のように責め立てる様子を見て、

もう、地獄にもいけないわね、しろがねは簫子に聞こえないくらい小さな声で、囁いた。





「簫子、悪い。俺はお前をそういう風に見たことがない。」


あるループの際に、いつものように兄に迫ったがハッキリ断られてしまった。

こんなことは初めてで、数百年ぶりに動揺してしまう。


「……そう。」


簫子は兄の部屋を後にし、自室に戻った。

目に入った姿見で自分の姿を見ると、胸元を肌蹴させたシャツから見える下着が、とても下品に感じた。


「まだお兄ちゃん死んでいないけど、巻き戻しちゃおうかな…」


今回の兄は自分の思い通りの「兄」ではない。

いつの間にか自分は兄を選ぶようになっていた。

自分の都合の良いように動く世界。気に入らなければその都度巻き戻せばいい。

だって、永遠の時間が私には許されている。

嫌なことや辛いことなんて回避すればいい。

だって、私にはそれが許されている。

無限回廊はまだまだ続いているのだから。


「バイバイ、お兄ちゃん。」


ベッドの上でぼそりと呟く。

その瞬間、映像が巻き戻り、また高校の入学式の日に戻った。

もしかして、私が神なのか?

入学式の朝のベッドに横たわりながら、簫子は恍惚とほくそ笑んだ。

気が付けば右手は下着の中に入っており、下半身を刺激している。

とてつもない幸福感に包まれ、無意識の内に自分で自分を慰める行為にふけってしまった。

今回のループでは兄は自分の期待に応えてくれる兄だろうか?

そして、しろがねはいるだろうか。早く快楽に溺れたい。生を感じたい。


「あっ…!」


簫子の体が弓なりになり、足がピンと張る。

生を感じている。艶めかしい深いため息を吐いた。


「お兄ちゃん…好き。」


快楽に溺れているとはいえ、愛する兄繋がるのが一番気持ちいい。

早く、早くしたい。


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