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1-1

 

 黒影が目を覚ますと、まず視界に入ってきたのは高くそびえ立つ木々たちと黒影を覗き込むかのように見ている白いツインテールの少女と幼さが残る少年の二人の驚く顔であった。


 …何故だ?

 如何に比較的に楽観的な性格の黒影とは云え、寝起きから見ず知らずの男女が自分の顔を覗き込んでいたら平然としていれる余裕なんかなかった。


 だが、身体は思うように動かない。


 二人は俺の意識が戻ったことに気づいたのか何かを喋っているようだが、全くもってわからない。俺は日本人だ、日本語以外わかるわけがない。



「ΦβηΞΠεπβΟΨβηΞΠεπβΟΨκιββΠεπβΟΨαΞΨζιε」


「подёмтцпоетттч」


 二人は何かを喋っている。

 少年は明らかに困ってような表情して、少女は明らかに喜々とした表情で黒影を覗き込んでいた。


「ηΞΠβηΞΠεπβΟΨεπβΟΨκιβαΞΨζιε」


「ёмтβηΞΠεπβΟΨцпоетттч」


「βηΞΠβηΞΠεπβΟΨεπβΟΨκιβαΞΨζιε」


「подёмтцпоетттч」


 何かを一通り話終わった後、少年は黒影の元を離れ、白い少女は絶望を具現化したかの如き表情を浮かべている。


 彼女は頭を振って思考を切り替えかのようにして

 黒影の手を握り、その後に身体ごと持ち上げる。


「εооёпцιоёедζоεц」


 …さて、俺の身体は約身長180cm体重80キロ弱だ。

 その身体をいとも簡単に持ち上げる彼女はなんなのか?

 俺が知る中でそんな化け物級にデカい人間が二人もいるならとっくのとうにニュースにもなっているだろう。


 少女は俺を抱き上げながら赤子をあやすかのように小刻みに揺らす。


「…чιεцотё」


 美少女は何かを呟きながら辺りを見回してからゆっくりと俺の顔を胸元に近づける。

 俺の顔が彼女の慎ましい胸元に近づくと彼女はゆっくりと片手で着ていた白いワンピースをずらす。


 そうすることによって黒影の前には禁断の甘味。

 白い肌はまるで生クリームのようでその上にはピンクのポッチがさくらんぼのようにのっていた。


 おい、この女は何をしているんだ? 

 やめろ! やめるんだ!!!

 こんな美女のおっぱいを吸う機会などこの先ないのかもしないという欲求と戦うたびに軽蔑の眼差しでこちらを見る朱璃の顔を思い出して踏みとどまる。


 必死の思いで声を出そうとすると赤子のような喚き声がでる。


 すると、彼女はショックを受けたように膝から崩れ落ちる。

 それはまさしく真っ白に燃え尽きたボクシング選手の最後のようにぐったりと…


 あれ? 俺なんかいけないことしちゃった? ごめんね!? なんかごめんね!?


 黒影が謝ろうと自分の身体を動かそうとすると自分の右手が視界に入る。

 それは…


 おい…なんだこの赤ちゃんの手は?

 なるほど、これは考えつかなかった。二人の男女がでかいのではない。

 俺の身体が小さくなったんだ。

 声も赤子のような喚き声ではない。赤ちゃん『の』喚き声だったのだ。


 結論…

 俺は赤ちゃんになっていた。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 side:マリー



 昨日の夜に深淵の森で見つけた赤子は意識を取り戻すことなく。

 既に朝方へとなっていた。


 私は人間の赤子を見るのは初めてだったので、ずっと眺めていると赤ちゃんは起き上がろうとしているのが見て取れたので、急いでアキラを呼ぶ。


 赤ちゃんは私たちを見るなり、驚くような顔をしてから手をジタバタと動かしている。

 それが可愛くて私の頬を綻ばせる。


「目を…覚ましたみたいね?」


 私は顔がにやけてしまうのを必死で隠そうとするが、ついつい顔が綻んでしまうことをとめることはできなかった。


「そうだね? ずっとここにいたらお腹が空いてるかもしれないし、赤ちゃんでも食べれそうなもの探してくるよ」


「あっ、知ってる! 赤ちゃんって母乳をあげるんでしょ?」


「そうだけど…ちなみにマリーはでないからね?」


「なっ…」


 確かに私のおっぱいは小さい。

 だが、おっぱいはおっぱいであるはずだ。

 なぜ私にでないというのだろう? 思い当たる節はやはり小さいからだろうか?

 おっぱいというものは小さいと認められないとでもいうのだろうか!?


 そんな思考が瞬時に頭を過ぎっているなど露知らず、アキラは苦笑いを浮かべている。


「なんで、そんなに世界の終わりみたいな顔してるのさ? とりあえず僕が食料探してくるから大人しくしてるんだよ?」


 マリーは頭を振って一度思考を切り替えることにする。

 何はともあれ今はこの赤ちゃんが第一だ。


 マリーは赤ちゃんの手を握り身体を抱き上げる。


「でも…アキラがデタラメ言ったのかもしれないわよね?」


 未だに頭の中では先程の会話を繰り返しており、やるなら今しかないという思考が頭から離れない。


 思い至ったら即行動。


「ドゥウウウウウウアアア!」


 可愛らしい赤ちゃんには似つかわしくない明らかな拒絶の反応を示す喚き声はデリケートな彼女の心を砕くには十分だった。


 あっ、私はもう女じゃないんだ。

 この胸にあるものはおっぱいではなかったんだ。


 マリーはガックリと膝から崩れ落ちることになる。



 next



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