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マイペース異世界災難記(仮)  作者: 紺(空想野郎)
ギルドと本と古き記憶
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34話 謎の鍵

もうこんなことしてるならちゃんとした小説を書くか筆を折るかどっちかにしなさいという。

 城下町のその先。

 そこにあったのは霧の壁だった。

 いや、この表現は適切じゃないな。街が壁で覆われているように、街と外の堺に霧の壁があるわけではない。城門を抜けて暫く先に、第二の外壁のように霧が立ちふさがっている。しかもその霧は、よく目を凝らすと球状になっており、この街の空すら覆い隠していたのだ。

 さて、ここでいくつか疑問が出てくる。

 この霧は何のために存在しているのかは当然気になるところだが、一旦は考えても無駄なので横に置いておくとして。大事なのは何故この霧に気付かなかったのかと、この街の人が一体どう暮らしているのかだ。

 最初に霧を見た時、街の外周や外を気にしていなかったからと思ったが、空を覆っているんじゃ話が違う。そんな巨大な違和感を見落としていたのは何かしらの理屈があるはずだ。どうやって、に関しては魔法がある世界なのでどうでも良いが、なぜそうする必要があったのか、については考える余地がある。まずこの霧が人為的じゃないなんてことはないだろうし。ただ霧が立ち込めるだけならまだしも、街を覆っててそれに気付かないような効果を持ってるなんて自然じゃあり得ない……はず。異世界だから何でもありと言われればそれまでではあるんだけども。

 ともかく、この状況については誰かが仕組んだものだと仮定しよう。考えに指標がないことにはどうにもならん。

 で、この霧の効果だが、恐らく普通に暮らすだけなら無害。というか普通の暮らしを守っている気すらする。自分の認識を振り返ると、記憶の中では太陽の位置がちゃんと変わっているのだ。太陽なんて見えやしないはずなのに。つまりこの霧はなんらかの手段で疑似的に外の状況を再現しているのだ。

 だからこの街の人はこの状況に違和感を覚えていない……とはいかないのが現状。今の俺の体……人形の性能はそこそこよさげではあるものの、本来の肉体と比べれば全然機能が足りないし、スキル群も使えない。そんな状況でこの霧に気づいたという事は、街の人も気づけるタイミングはあるんじゃないだろうか。

 本体が気づけるようこの人形に細工した、と考えることも出来るが、それでも違和感がある。

 霧が街を覆っている、つまり外界と絶たれているということは、交易等が一切ないということだ。しかも、ぱっとみ川や畑の類はあるものの、町全体を保つにはとてもじゃないが資源が足りないように見える。そして当然こんな街近くに鉱山があるわけないので、鉄等の金属類の入手も困難だろう。

 じゃあそもそも、霧なんだし見えないだけで素通り出来るんじゃない? という疑問はある。ただ暫く街の様子を見ている限りでは街とその外を行き来している人が全くのゼロなのだ。異世界の知識は当然ないし、中世の知識もまともに持っていないため判断材料としてはいささか頼りないにしても、普段から行き来が全くのゼロということはあるまい。ましてやこの世界は魔物と冒険者がいるのだ。遠目から確認したが、この街にも冒険者ギルド自体は記憶通り存在していた。魔物と戦うのが冒険者の全てというわけでもないだろうが、街の外に出ないで冒険も何もないだろう。

 だから、あの霧は物理的にもこの街を隔離していると判断できるし、それに街の人たちが気づいていないはずがないのだ。そこから導き出されるのは、これが街の人からした日常ということ。そうするとこの霧はかなり昔から存在していることになるし、外界との隔離や空の再現以外にも資源を誤魔化すような何らかしかの効果を持っているはずだ。

 例えば霧の中に居れば水や食べ物を摂取しなくてもよくなる、とか。もしくは一定期間で資源がどこかに降ってわいてくるとか。ただ、それで街の人の生活が保たれたとして、冒険者ギルドの存在が解せない。一定期間で外に魔物が湧くとかも考えられなくはないが、それなら別に冒険者で対処する必要性は低いように思える。外からの侵略者を考えなくて良い都合上、兵士とかで対処できそうなもんだ。

 人と会話出来れば楽なんだけどなぁ。この体じゃそれも難しい。誰か一人を対象にして生活をストーキングすれば何か見えてくるかもしれないが、流石に気が引けるし、本体はそこまですることを想定していないはずだ。してたら引くし一発殴りたい。


『ただまぁ、考えてても埒が明かないよなぁ』


 この霧がかなり前から存在し、街の人にとっては日常であること。

 霧は何らかの方法で人々の生活を維持していること。

 この街は外界と隔離されていること。

 一応いくらか仮説は立ったが、今の状況をどうこうできるもんでもない。と、すると。


『……いくしかないかぁ』


 向かうは霧の方、だろう。実際試してみなければわからないこともあるし、行動を起こせるとしたらそれくらいだ。幸い人形の動かし方のコツ?のようなものは掴んできたのもあり、門を通らずとも壁を超えることくらいは問題ないはず。



◆◇◆


『ということでやってきました霧の前』


 街からは体感1kmくらい離れていただろうか。無事街から抜けだし、霧の前には来れたは良いものの何をしたもんかというところはある。本体が何か仕組んでて霧の前までくれば何かイベント発生!みたいな可能性も考えていたが、そんなことはなかった。我ながら気が利かない奴である。俺だったらそんなことしないし、何かしら制限があったのかもしれないけどそれはそれとして恨むぞ本体。


『えい』


 とりあえずそこら辺の石を拾って霧に投げ込んでみると、特に弾かれるということはなく、そのまま霧の壁を貫通していった。

 さて困った。これが物理的にも壁になっているのであれば叩いてみるなり魔力を込めてみるなりやりようがあったが、本当に霧として触れないとなると話が違う。霧に入ったものがどうなるのかさっぱり予測がつかないし。

 考えられるのは某パクパク男よろしく反対側の霧に繋がっているパターンか、霧がどこまでも続いているパターン。最悪霧に入った瞬間お陀仏というのも否定できない。霧内のどこかに繋がっているのであれば岩みたいな大きく分かり易いものを投げ込んでどこかに同じ物が出現していないか探すみたいな方法は取れる。取れるけどしたくないし、それがわかったとてなんだという話になってしまう。


『どうしたもんかなぁ』


 こうなってしまうと打てる手が自分で入ってみる以外思いつかない。

 魔法は発動できそうだし適当に霧の中に投げ入れてもいいが、もし街中に転送されて誰か負傷なりしても目覚めが悪い。今の俺じゃそんなことになっても気づけないしわからないとしてもだ。

 他に何かあるかねぇ。現状どこかに行くくらいしかまともな行動がとれないわけだけど、実は異世界滞在日数がそう多くない俺じゃ何かこの状況に関連しそうな場所が思いつかない。というかそもそも街からあんまり出てないし。


『いや、待てよ』


 体感ではあるが、街から1km。確かこうなった原因の遺跡がある場所も街から1kmないくらいの場所にあったはずだ。そこなら誰かに邪魔される危険性もないだろうし、行くだけの価値はある。


◆◇◆


『ということでやってきました例の遺跡』


 時間的には初めて遺跡に来たのは一日経ってないくらいだと思うが、色々情報量叩き込まれた中で道のりを忘れず順調に来れた。自分の記憶も捨てたもんじゃない。ところでこの遺跡ってなんか名前あるんだっけ? 


『まぁんなことはどうでもいいか』


 とりあえず遺跡があるということがわかったのが大きい。この中に何もないとしても、今いる時間軸等の推測をする情報源になる。

 はてさて、外見は最初に見た時と変わらずしょぼいし劣化具合も同じくらいな気がするが、中はどうだろうか。


『おぉ?』


 苔むした石の道を進んでいくと、最初に入った時はなかった遺物のようなものがそこかしこに落ちていた。古びていて原型を保っていない物がほとんで、鑑定がない今じゃこの遺物達がなんなのかはわからないが、前見た時はなかったこれらが落ちていること自体が重要だ。やはり、という感じはするが、ここはまた過去の世界ということなのだろう。

 さて、一つ情報は手に入れたわけだが、このまま進むかどうか。

 ここから先は正直賭けになるんじゃないだろうか。というのも、確か最初に来た時は壁に挟まれそうになった挙句スキル頼りでどうにかしたはずなのだ。つまり今の体ではそうなった時に対処ができない。

 一方で、この遺跡を紹介してくれたルッタさん曰く、俺らが行った場所には本来階段があるとのことだった。つまり、今行ってみると壁に挟まれることなく先に進む道がありました、という可能性もある。

 潰されるリスクはそりゃでかいが、そもそもあのギミックは本体が作った可能性がでかい。

 であれば壁に挟まれるにせよ対処策くらいは用意しているだろう、と考える外ないか。それにしてもリスクは高いとは思いますけどね!

 でもまぁ、最悪死ぬということはない気がする、というか自信がある。根拠はないし自分でも何故かはわからないが、異世界に来てそういった勘みたいなものが外れたことはないわけで。

 勘もスキル化してたからそれまでだし今はスキルないんだけどね、んなこと言っててもしゃあない。だってやることないし。


『よし』


 意を決して遺跡の中を進むと、果してそこには階段があったのだった。めでたしめでたし。

 いやこれで壁に挟まれたら最悪GAMEOVERだったのだから笑えない。階段があったから良かったけどさぁ!

 何はともあれ階段を下る。外見のわりに、思いの外遺跡内部が広い。

 人形スペックなのか暗闇の中でも視覚が生きているのが幸いだ。もしかしたら変なガスでもたまってて火をつけた瞬間爆発とかになっても困るし。まぁ火以外で明かりを作ればいいだけの話ではあるけど。

 そんなくだらないことを考えながら地下への階段を下りきり、進むこと暫く。


『なるほど、ここにあったんだな』


 ルッタさんから教えてもらった通り、書見台のような場所に聖邪典が安置されていた。

 まぁ話には聞いていたし、過去の時間軸ならこれがあることは何ら不思議ではない。

 後はこいつが謎を解く鍵になってくれるかどうか、だ。


 そう思い、聖邪典に手を伸ばし、指先が触れた、その時。


「なるほど、ここがキーポイントだったか」


 俺の後ろで、聞き覚えの無い声がした。

ここまで読んだんですか?ほんとに?

いやいやまさかそんな人が居るわけ。

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