24話 消えた邪神と武道大会
ぎりぎりセーフ!
スキル―――――暴食
己の階位より低い存在を喰らうことが出来る。
何も自分の方が邪神より上だと思っているわけじゃない。
せめて邪神が起こしたであろう雷くらいなら、ということだ。
期待は外れず暗雲ごとエネルギーとして吸収できた事を感じる。
しかし辺りが晴れる事は無く、近くに居るであろう邪神の姿も見えない。それどころか、漆黒の霧が一面を覆っている。だがこのくらいなら暴食で何とかなるだろう。
暴食は便利とはいえ、仮にでも大罪の一角をなすスキル。当然のように危険が伴う。
スキルの説明から察するに、今の暴食は本来の力ではない。だからこそ、リスクが少ないのだ。とはいえ暴走すると軽く世界が崩壊しかねない。だからできる限り意識の制御下に置くため、吸収対象を選択してスキルを発動しているのだ。
つまりこの霧を吸収できなかったわけではない。単に対象にしていなかっただけなのだ。
暴食を再度発動すると、予想通り霧は吸収できた。
しかし一つ問題が生まれた。
「純也? あんたなにしたの? 邪神の気配がしないんだけど」
そう邪神がいなかったのである。
「ネイリー! 邪神が外に出たってことはありえるか?」
「ありえるけど……いくらここの力を吸収しても、ここの封印から出ることは、ほぼ不可能に近いはずよ」
それなら一安心なのか?
「でもなんで邪神が急に消えたんだ?」
それがわからん。
「あんたが何かしたんじゃないの?」
「失礼な。ただの異世界人の俺に、邪神がどうこうできると?」
ネイリーはただの? と首をかしげているが知らんもんは知らん。
心当たり何て俺には……ってなんかあった気がする。
いやそんなまさか。
さっき吸収した霧が、邪神なわけないよね?
でもそうでもないと、ここに邪神がいない理由がつかない。
とりあえずネイリーに聴いてみよう。
「もしかして、さっきの霧が邪神だったりする?」
「確かにとても強い邪の力を感じたけど、分からないわ。何でそんな事聴いたの?」
「別に、なんでもない」
分からないのか。違ってて欲しい。いや、邪神だった方が後で楽なのか?
「誰も邪神が居る場所は分からないか?」
「僕はわからない」
「俺も、空間魔法が正常に作動しないから分からんな」
「私が一回妖精界に戻って確認してくるわ」
「任せた」
やっぱりネイリーは便利だ。
◆◇◆◇◆◇◆
一回部屋に戻って、万里眼であちこちを確認しながら、ネイリーを待っていた。
「それにしても遅いなー」
「邪神が復活したかも知れないのに、純弥はのんきだね」
「騒ぎになってないって事は、大丈夫って事でしょ」
それに万里眼で見たところ、異常ないし。
「遅いなぁ。もういっそのこと妖精界に乗り込もうかな」
「出来るの?」
「分からないけど、出来そうな気がする」
人間何事もやれば出来るさ。
あ、俺人間やめたんだっけ。もうなんか、怪物でいいや。
「ただいま。って純弥ちょっと顔色悪くない?」
そう簡単にショックは抜けないか。
「いや、何でもない。で、どうだった?」
「もうこの世界に邪神の気配はないみたい。どこにいったのかは知らないけど、まず一安心ね」
どこ行ったのかまでは分からないのか。
「それって他の世界に行ったかもしれないってことなのか?」
「今の所、他の世界からも邪神の気配は感じられないわ」
よかった。
ネイリーが他の世界に邪神が行ってるのに、一安心とか言うようなゲス妖精じゃなくて。
ってその場合は俺が復活したようなもんだから、責任を取らない俺の方がゲスか。
「邪神はとりあえず消えたってことでおk?」
「とりあえずはその認識で問題ないわ。あと最後発音できてないわよ」
よかった。なら、今日は安心して眠れるな。
また何か起きなきゃだけど。
ってこれフラグじゃねぇか! やっちまった。
この後、真剣に運命折曲をとるか十分くらい悩んだのであった。
◆◇◆◇◆◇◆
忘れていたが、武道大会の件については、実力的に十分というか、むしろ相手が可哀想なレベルらしいので、訓練などは免除されていた。
しかしこれといってやることもないし、暇をもてあましている所、ドア付近で立ち止まった気配を感じた。
この気配は多分キラさんだな。
「入っていいですよ」
「まだノックすらしていないのですが」
と驚き、いや呆れながらキラさんが入ってきた。
何のようだろう? この国に余裕がありそうとはいえ、宮殿魔術師なんだから忙しいもんじゃないのか?
「どうかしました? わざわざ宮殿魔術師のキラさんが、勇者でもない俺のところに来るなんて」
「いえいえ、別に何かが起こったわけではないですよ。宮殿魔術師とは言えど、今の所僕たちに仕事はありませんし、この国は治安がいいので緊急出動する事もないですし、もし何かあったとしても宮廷魔術師が居るので」
じゃあ何であるし宮殿魔術師。万が一のためか? ま、俺のしったこっちゃないか。
「で、わざわざここに来たって事は何か用があるんですよね?」
「ええ。武道大会の件で、ちょっとお伝えしなくてはならない事があって」
「武道大会ですか? また訓練を開始するとか?」
「いえいえ、もう訓練を指導できる人材が居ませんから!!」
キラさん……なにもそんな頭がもげそうなくらい、全力で首を振らなくてもいいじゃないですか。なんか魔力まで感じるんですが、魔法使ってませんよね?
「とりあえず落ち着いてください」
「っは! 私は何を?」
記憶ふっとぶくらい首振ってたのかよ。
「そうでした、武道大会の話でしたね」
一部記憶どっかいったままだが。ま、いっか。
「純弥さんはもう大会に出なくてよくなったんですよ」
「どういうことですか?」
もしかしてもう帰れるとか?
「そもそも、何で大会に出なければならないのか覚えてますか?」
「確か、騒ぎを起こさないために大会の優勝商品である、貴族になる権利を手に入れるため、でしたよね?」
だいぶ前の話だった気がするが、実はそんなにたってないんだよな。
「そうです。ですが先日現れた伝説級のモンスターを、純也さんが討伐した事によって、十分に貴族になる条件がそろったのです」
なるほど。でもあのスライムそんな強かったか? しぶとくはあったけど。どちらにせよ、面倒事が一つ減ったからいいや。
あれ?何か忘れている気が……
ま、そんな重要な事じゃないだろ。
「貴族になるってことは何か儀式とか式典的なやつとかやるんですか?」
「昔だったらそうなるのでしょうが、今のこの国にはいちいち文句を言うやからも居ませんし、特にそういったことは必要ありませんよ。なるべく公にしたくないことですし」
それなのに大会出そうとしてたのかよ。
「それだったら無条件で貴族扱いすればよかったのでは?」
「そういう訳にも行かないんですよ。一応建前は必要ってことです」
ふーん。色々あるんだな。中学生の俺にはようわかりません。
「これを持っておいてください」
なにか紋章みたいなのをわたされた。
「名誉貴族の証です。万が一のときにこれを持っていれば国内なら大抵何とかなります」
なくしたらやばそうだな。魔法具に入れとこ。
「用件は以上です。また何処かで」
そう言ってキラさんは出て行った。
なんかしばらくあえなさそうな雰囲気だけど、会おうと思えばいつでも会えるんだよなぁ。
ちなみにネイリー達は妖精界に行った。
光輝と闇暗は魂だけの状態で、精神が強いから妖精界に行けるらしい。
と言っても妖精の力を借りなければ無理だそうだ。
なんで二人を連れて妖精界に行くのかは教えてくれなかった。
いや、別に仲間はずれにされて悲しいとか思ってないよ?
本当だよ?
でもなんで秘密なんだ? 気になるな……
ま、あとで拷mゲフンゲフン聞き出してみますか。
さて、そろそろ夕食の時間だし食堂に向かうかな。
◆◇◆◇◆◇◆
今日も相変わらず謎料理だったが美味しかったのでよしとしよう。
満足しながら食堂を立ち去ろうとしたら、崇が話しかけてきた。
「最近外に出て魔物を倒してレベルを上げてるんだ。俺はもうレベル30までたどり着いた。大会までにはもっとレベルを上げるぜ。絶対に負けないからな」
あ。
「あぁぁぁぁぁ!」
そうだ!
「な、なんだよ急に叫びだして」
なんか忘れてると思ったら崇と大会で戦う約束してたんだった!
どうする? 俺はもう大会に出ないし、あまり公にしたくないって言ってたから、出させてもくれないだろう。だからといって今更言えないよなぁ。あんな高らかに優勝宣言しちゃったし。
「おい、大丈夫か?」
「問題ない。少し混乱してただけだから」
どうすっかなぁ。
ええい。もう素直に言ってしまえ!
「崇……ごめんな」
「なんで謝るんだよ」
「実は俺、大会でない事になった」
「へ?」
「本っ当にすまん!」
「いや顔上げろよ!またいじめてると思われるだろ」
それはまずいな。
「マジですまん」
「いや、いいさ。ぶっちゃけ負けないとか言ったけど、今の俺の実力じゃあどうあがいても追いつけねぇだろうからな。むしろ強力なライバルが減ってよかったさ」
おお。ありがたきお言葉。
いじめっこだったとは思えないな。
「でも、いつかまた勝負してくれよ?」
「もちろんさ」
「じゃあな」
「おう、またな」
いいやつになったなぁ。
まさかここまで変わるとは。
一件落着ですな。よかったよかった。
一安心した所で、部屋に着いたし、魔法でさっと体を清めて布団をかぶった。
◇◆◇◆◇◆
目を覚ますと、そこは黒い空間だった。
「は?」
ここはどこだ?
なんとなく聖邪典の中と似てる気がする。
ということは邪神の攻撃か?
でも邪神は消えたはずだ。
だったら何なんだこれは。
「もしかして夢か?」
それなら納得がいく。
ためしにステータスを開こうとしたら何も起きなかった。ってことはやっぱり夢みたいだな。
いやぁ、てっきりフラグを回収したのかと思った。
『汝が我の主か』
「へ?」
声がした方向を向いてみるとそこには形容しがたい化け物が居た。
「何だお前は?」
『我か? 我の名はグラトニー。大罪の一柱だ』
クソッ!運命折曲取っとくんだった!
閲覧有り難うございました。
急いで書いたので色々おかしいと思います。ご指摘いただけると幸いです。




