20話 聖邪典と過去の勇者達 驚愕の拾
遅くなってすみません。題名はしばらくこれで行こうかなと思ったり思わなかったり。あとこの作品の作者名は空想野郎のままですが、ユーザーネームは変えたので作者ページにとぶ場合は下から御願いします。いないとは思いますが念のため。ではどうぞ。
「闇暗がつかまった・・・ねぇ」
あの後僕達は一度城に戻り四代目勇者に今回の戦闘の報告をしていた。と言っても話ているのはいつもどおり精菜だけど。
「はい。一応生かされているみたいなので少しは安心なんだけどね」
「生かされているからこそ状況が悪くなるかもよ?」
「それは一体どういうこと?」
精菜から膨大な殺気が流れ出した。
「いや勘違いしないでくれ。闇暗が死ねばよかったって事じゃ無いから」
精菜は闇暗が捕らえられたことによって少し冷静になれていないようだった。
「じゃぁどういう意味で言ったの?」
「最後にダネクはまともな魔王はダネクだけということと、闇暗が邪神につかまっていることと生かされていること。この二つの情報に関係してくる」
「その二つのどこに関連性があるの?」
「これだけじゃわかんないか。じゃぁもう一つヒントを上げよう。これもダネクがいった言葉だろう?『利用はされるかもしれない』」
しばし沈黙が漂う。数秒たった後に精菜が口を開いた。
「まさか邪神が精神を操る能力持ってると言うわけ?」
「そのとおり。実際に狂った魔王とは戦ったことがあるんだ。心ここになしと言う感じだったよ。自分の意思で動いていない状態だね」
「でもそれだと精神操作とは別になるんじゃない?」
「たぶん強引に操作してるから心が壊れた・・・と言うことじゃないかな?」
「でもそしたらなんでダネクはまともだったの?」
「彼を操作する必要が無かったのか、彼の心が強かったかのどちらかだね。たぶん前者だと思うけど」
「なぜそう思うの?」
「前に戦った事があってね。その時はまだアビリティも碌に扱えなかったんだよ。でもあいつは『これは面白い玩具だ。時がたったらまた来るからそれまでに強くなっててね』とか言って帰っていったんだ。そんな純粋に戦いを楽しむ奴が洗脳されてるわけがない」
「そういえばラムも『純粋な邪心の持ち主』だって言ってたな」
「そうだね。戦闘を遊びとして、ただただ面白い強敵を求め続ける。純粋な心を持った戦闘狂だ。そんな純粋な心の持ち主だったから、操作しなくても目の前に強敵をぶら下げて言う事を聞かせていたんだろう。だから最後に魔族側の情報を漏らしたんだろうね。ふつうそんな裏切るようなまねしないからね」
「なるほど・・・。そこから考えると闇暗は洗脳されて敵側につくってことになるわけね。そうすると闇暗は次にあうときは狂った状態ってこと?」
「たぶんそれはNOだ」
「なぜ?」
「魔族の言う適格者と敵対者。このふたつは邪への適格者と聖への適格者の事を指す。洗脳はされているだろうけど、適格者なら多分狂ったりはしないだろうね」
「なるほど。それならまた引き戻すことが可能じゃない?」
「洗脳をとければね。どういう方法で洗脳されてるかわからないから難しいけど」
「できなくもないわけね」
「まぁそうだね。だけど洗脳をとく前に闇暗をおさえる力が必要だよ。ということでさっそく訓練だ光輝。時空の部屋に行こう」
「僕だけで良いんですか?」
「良くは無いけど二人じゃないと少し危険だから」
「わかりました」
~時空の部屋到着~
「さて。今回光輝が倒した魔物ども。じつはあれを全て押さえ込むのは無理だと思っていたんだ。しかし君は全て抑えるどころかたおしてしまった。あの魔物たちは結構厄介で手ごわいんだ。それを一人でたおした光輝は今この国中に噂が広がってる。君の事を英雄と呼ぶ人もいる。だから多分今回ので力が解放されたと思うんだ」
「そうですか?実感ないですけど」
「神言はやっぱり切っておいたか」
「神言?」
「スキルを入手したときとかに聞こえる声だよ。今は世界の声って呼ばれてるんだっけ。たぶんこの世界の人がつけたものだと思うけど。たぶん正式名は神言のほう」
「そうなんですか」
「うん。ステータスは常識にあわせられる事があったりするからね。で、切ったのかい?」
「そうですね」
「じゃステータスを見てくれ」
「ステータスにのってますかね?」
「のってると思うよ」
カードを内ポケットから出してステータスを見る。
「スキルがありすぎてぐちゃぐちゃしてて見にくいので、少し時間がかかるかもしれません」
「だったら整理すれば?」
「整理ですか?」
「系統ごとに纏めればいいんだよ。イメージしてそれを形にするように念じれば整理できるはずだよ」
「やってみます」
光系、時間系、回復系、強化系、耐性系、魔力系をそれぞれ束ねる感じで・・・。
カードがうっすら光る。成功したようだ。見やすくなったステータスを覗き込む。
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素質
LV67
HP 百万/百万 数字表記化可能
MP 四百二十万/四百二十万 数字表記化可能
SP 三十万/三十万 数字表記化可能
LUK 300
ATK 325000
DF 10000
能力
光聖術(PS) LV4
時操術(PS) LV3
神聖騎士(PS) LV2
全域治療術(PS) LV2
聖鎧(PS) LV5
魔操術(PS) LV6
異世界人補正(PS)
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「何これ?」
僕が首をかしげると第四勇者がこっちに寄ってきた。
「どうしたんだい?」
「見てくださいよこれ」
カードを差し出す。
「これは・・・スキルが統合してる?」
「そんなことありえるんですか?」
「今までにきいたこと無いけど、出来たんだからありえるんだろう。どんなイメージをしたんだ?」
「それぞれを束ねるような感じです」
「束ねるか。なるほど。でもそれだと前例があるはずだ。他にも何か覚えが無い?」
なにかあっただろうか。考えられることは・・・そうか。イメージでステータスが整理されるなら多分これが原因だ。
「たぶんイメージの強さと鮮明さが必要なんだと思います」
「強さはともかくとして鮮明さって言うのはどういうことだい?」
「例えば僕のスキルだと光属性関係とかで纏めるんじゃなくて、そのスキルによって使える技などの特徴を集めて、束ねる感じです。その一つのスキルのデメリットを他のスキルでどうやって無くすかとかも自然に考えていましたからそれも原因かもしれません」
「なるほど。それだったらもし前例があったとしてもまねできる人が少ないもんね。何人もやってできなかったらそれは嘘だと思われ、情報が間違っていると言うことで処理されるために人々に伝わることも無かったんだろうね」
「そういうことですか。あ、統合した所為でスキルの効果が分からないので、スキル説明見てみますね」
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光聖術・・・光、聖属性などのスキルを統合したスキル。LVMAXなら光属性と聖属性なら結界、攻撃、封印等も大抵使える。邪に対する耐性が働く。邪心を持つ者にダメージが増量する効果がある。その場にある光または聖属性の魔素が多いほど力が増す。光、聖属性を扱うときの負担が減量する。
時操術・・・LVを上げるにつれて様々なことが出来るようになる。LVMAXなら自由自在に時を操れる。思考スピードが上がる。時関連の能力を使うときの負担が減る。
神聖騎士・・・神から与えられた力を中心に強化系スキルを統合したスキル。半神化することにより、全ての能力が跳ね上がる。主に光属性、聖属性の力を持った技が使える。邪なるものと戦闘するとき、能力が大幅アップする。常に能力アップが発動する。
全域治療術・・・回復関係のものを統合したスキル。LVがあがれば大体の治療系スキルを使うことが出来る。MP、HP、SP、の回復スピードを高める。治療系能力を使うときの負担が減る。
聖鎧・・・耐性系能力を統合したスキル。LVに応じて色々なものへの耐性がが上がる。害があるものを全てはじく鎧を召喚できる。召喚可能時間はLVに依存する。
魔操術・・・魔力関連の能力を統合したスキル。魔力の扱いが上達する。LVがあがれば何者にも気づかれないように魔力を操ることも出来るようになる。魔力の負担を減量する。
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「すごいなこれは・・・」
「実際使ってみないと分かりませんけど」
「まぁそうかもね」
「新しく手に入れたスキルは分かりませんけどどうします?」
「目当てのものは使える見たいだし大丈夫だよ」
「封印ですか?」
「そうだね君にはこれから封印の練習をしてもらう。封印するときのコツは自分の魔力でつつんだのを凝縮して鍵をかける感じだ。まずこのボールを使ってやってみてくれ」
第四勇者が懐から出してきたのはただのボール。のように見えるが魔力が感じられる。魔道具かな?
「このボールには封印がかけやすい素材を使っているし、封印に弱くなる魔法が付与されている。教えられる人が少ないから感覚をつかむために作られたものだよ」
なるほど。あれ?魔物の素材をボールにして、それに魔法をかけただけなら魔道具って言うのかな?
「言わないよ。このボール魔道具とは付与の仕方も作り方も少し違うからね」
「そうなんですか」
?
「僕口に出てましたか?」
「でてないよ」
「じゃあ何で僕の考えていることが分かったんですか?」
「光輝の疑問を素早く解決するために僕の力で心を見ていたんだよ」
「そんなことも出来るんですか」
「便利でしょ?」
「便利ですね」
「じゃあそろそろ始めようか」
「はい」
僕はボールにむかって魔力を飛ばして、ボールを包み込むようにし、鍵をかけるような感覚で魔力をがっしり固めた。するとボールが結晶見たいな物につつまれた。
「ひとまず成功かな?封印解除もやってみて。できたらまた封印。解除。繰り返し練習して。僕はその間にあれをとってくるから」
そういって第四勇者はいってしまった。あれって何だろう?後になれば分かることだと思い封印練習に意識をむける。封印は鍵を使う感覚で大体あっているだろう。開くように念じたら封印を解くことができた。しかしまだ封印と解除には時間がかかる。時間短縮のためにも練習に集中しよう。
◇◆◇◆◇◆◇
「・・・輝」
解除封印解除封印・・・
「おい光輝!」
「あれもう来たんですか?」
第四勇者がきたようなので練習をやめる。
「何言ってんだ?取りに行くのに結構時間がかかったし、この部屋ではもっと長くなるから相当待たせたと思うんだけど?」
「そんなに待って無かったと思いますけど?」
僕が待っていたのは練習するには少ないくらいの時間だったと思うけど・・・。僕が第四勇者が来る前のことを思い返そうと思ったときに考え込んでいた第四勇者が口を開いた。
「君はずっと封印の練習をしてたのかい?」
「はい」
「じゃあ一回これを封印してみてよ」
そういって第四勇者が指をさした先にあったのはこの前の魔族だった。あれって魔族のことだったのか。そういえば僕たちに封印させるって言ってたな。というよりあれ呼ばわりか。第四勇者魔族をものとしてしか見てないのだろうか・・・。
「ひどいな魔族全員を物としてみてるわけじゃないよ」
一部は物としてみてるっていうことじゃないか。
「上にあれやれこれやれって言われて、ただ従うことしかできない奴なんて物って言ってもいいでしょ。少しでも抗おうとしているなら別だけど」
なるほど。
「っと話がそれたね。この魔族を封印してみて」
封印をかけやすくした練習用ボールでさっきまで練習していたのに、いきなり魔族を封印できるわけがない。
「僕にはまだ無理ですよ」
「できるできないはともかくやってみてよ。失敗してもいいから」
「わかりました。できるだけやってみます」
魔力の操作に集中して魔族の体を魔力で包む。がしかし包み込もうとしていた魔力があと少しのところではじかれた。やはりボールのように簡単にいかない。でも約束したからにはあきらめずに最後までやるしかない。無属性の魔力を魔族の弱点の聖属性に変える。すると魔力をはじいていた力が弱まり、包むことができた。あとはボールと同じように、と思ったけど生物だと封印方法が違うのかうまくいかない。鍵を差し込んだけど回せないようなそんなかんじ。だったら魔族に薄い結界をはって上から魔力で圧縮するようにして封じ込める。すると今までどんなに力を入れても回らなかった鍵が簡単に動く。ロック完了。つまり封印成功だ。今までしていた集中がとけ、精神に莫大な疲れが襲い掛かる。そのためにリラックスをしていると部屋に拍手の音が響いた。
「すごいね光輝。初めてなのに魔族をこんな短時間で封印してしまうなんて」
「お世辞はいいですよ。こんなんじゃ戦闘に使えないですし」
僕がそういうと第四勇者は少し困ったような、呆れたような顔をした。
「光輝。言ってなかったけど封印は戦闘中にするものじゃないよ?しかもさっきの封印は本来ならものすごく時間をかけて出来るようなもののはずなんだ。ぜんぜんお世辞じゃないさ」
「戦力って言うからてっきり戦闘に使うのかと思ってました」
「ちがうよ。封印すれば解ける人が少ないのと、回復もできないから相手の戦力を減らすことが出来るでしょ?不意をつけば攻撃しなくても封印できる可能性も充分にあるからね」
「なるほど。そういうことだったんですか」
「説明不足だったね。ごめん」
「別に構わないですよそれくらい。ところでなんでいきなり僕に魔族を封印させたんですか?教えてもらいながらなら分かりますけど何で僕一人でやらせたんですか?」
「あぁそれはね僕が魔族を取ってきた時間を君は短い時間といったよね?そんなはずはないんだ。だって僕が出てから片付けられた魔族を見つけるのに一時間。そこにかけてあった結界を壊すのに十分。ここにはこぶまでに二十分くらいかかっているんだ。この部屋の中だったらもっと長い時間になる。で僕が入ってきたとき君はすごい集中していて気づかなかったでしょ?だからもしかしたら封印の練習に集中しすぎて時間をすごく短く感じたのかもしれないと思ったんだよ。長い間集中して練習していたんだったら魔族の封印もいいところまでいくんじゃないかと考えたのさ。まさか完璧に封印できるとは思ってなかったけどね」
集中のしすぎだったから、楽しいことをしてるときのように時間の流れが速く感じられたということだろう。異様に封印がやりやすくなったと思ったのはその所為か。封印しやすかったことはしやすかったけどなにか違和感があった。あれは何だろう?何かが足りないということを何かが訴えて来てる様な。まぁ気のせいだろう。僕は『もうご飯の時間だ。先行ってるよ』といって出て行った第四勇者を追いかけるように食堂へ足を運んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
闇暗がさらわれてから一ヶ月がたった。一ヶ月の間僕たちは膨大な量の食料を僕が魔法で時間をとめて劣化しないようにし、見た目の何十倍も入る『神の鞄』という世界に片手で数えられるほどしかない鞄に入れ、時空の部屋にこもって訓練をしていた。僕たち人間族は魔族の本拠地に行くことは出来ない。なぜなら人間族と魔族の領地の間には絶海があるからだ。絶海は普通の海に比べ魔素濃度が濃いためである。魔素濃度が濃いとその分強力な魔物がわくことになるし、なにより魔素に高い適性が無ければ近づいただけでも危ないためだ。しかし魔族は魔素適応能力が高く、強い魔物を近づかせなくする魔道具を持っているためにこちらに攻めてこれる。なのでこちらに攻めてきたときだけしか魔族を倒す術はない。けれどこの一ヶ月間今までのことが嘘のように平和だった。つまり魔族が攻めてこなかったのである。魔素適応能力が高くなっている勇者なら魔族領に入れるのだが数の問題で不利な為突撃も出来ない。なので来るときに備えて猛特訓していたのだ。そして今日。ついに魔族が人間領に攻め込んでくることが精菜によりわかった。ほぼ全勢力だと思われる大軍で。魔族が攻めてくるにはまだ四日ほどある。そのためこの王国から人間領の全ての王国に魔族が攻めてくる場所を伝えた。争いあっている王国もある。しかし魔族という強大な共通の敵を打ち倒すために全ての王国が協力しあった結果量だけなら魔族に勝てるだけの戦力を集めることが出来た。たった四日。飛行機でも使わない限り間に合わない。そう思っていたが転移使いの勇者が全軍を運ぶということを伝えてきた。僕たち以外にも勇者がいることを改めて感じ、少しだけ安心感が生まれた。だけど油断はしちゃいけない。なんたってむこうには邪神がいるんだから。他国との会議、勇者同士の情報交換、装備の準備などで時間はどんどん流れていった。
~魔族襲撃予想日~
「魔族襲撃予測時間あと約五時間です!戦闘要員はそれぞれの防衛ライン付近にある砦に集合してください!」
各国につながっている無線通信機から情報伝達担当の女性の声が流れる。
「よーし。お前たちが最後だ。さっさと行かないと作戦会議に遅れるぞ」
転移使いの勇者又義が僕たちの前に魔法陣と共に現れ、そう言った。
「了解」
僕たちは又義を中心に広がっている魔法陣に乗り、最終作戦確認会議場所第三砦へと転移した。
◆◇◆◇◆◇◆
会議が終わった後僕たちは第一関所へむかった。会議の内容は各自の配置場所と役割の確認。だいたいそのくらいである。僕の役割はなるべく多くの魔族を倒し、魔王クラスの魔族が出てきたときはそちらを優先してたおす。魔族を蹴散らすだけの簡単なお仕事だ。もし邪神が出たら勇者全員で切り札を惜しまず使う事が決定しているので力を温存しとかなければならないけど。僕たちに配られた物はエリクサー3本、ハイポーション系各20本、身代わりの腕輪一セット、身代わりの指輪二個、小型万能結界発動機5個、封魔石約10個、大魔石2個を『空間拡大袋』に入れたもので、武器、防具は使いなれた物の方がいいだろうという事で配られていない。さて、魔族襲撃まで残り10分をきった。僕の配置場所は最前線で海岸である。魔族は海から来るから当然だけれども。今までは知らぬうちに上陸してたり人間族にまぎれていたりで苦労したらしいが今回は精菜がいたので上陸地点が分かった。ここを上陸地点に選んでいるということは戦闘になることは考えているみたいだけど。というより大勢できてることを考えると隠すつもりはないんだろうね。邪神が理をいじった様子はないということだ。正々堂々全力でぶつかりに来ようとしてきていると予測される。闇暗を手に入れたからだろうか。そのことを考えると心が痛んだ。正気に戻せればいいけど・・・。あいつは意外に人のことをよく信用するタイプだから洗脳とかかかりやすそうだし。もし僕が闇暗と戦うことになったら、いや必ず戦うことになるだろう。その時に全力で攻撃出来る自信ががない。なるべく闇暗のことは考えないほうが良さそうだ。戦闘に支障がでる。闇暗のことを考えすぎるあまり人間族の敗北を呼んでしまったら本末転倒だ。
『魔族軍が南西より海岸へ向かってくるのを確認しました!魔術士は詠唱を開始してください!!』
南西ということは真正面か。頬をたたいて気を引き締め、手を前に出し、魔法発動準備をする。でかいのをぶっ放して船を沈められればかなりの人数を減らせるからだ。今から発動する魔法は僕が使える中で間違いなく最大級の魔法である。がしかしこの魔法は発動できるまでの時間がかなり長いため、戦闘では使用できない。ということで切り札としてとっておかなくてもいいので惜しげもなく使えるわけだ。
《蓄魔力量100%に達しました》
どうやら準備が完了したようだ。
『我は聖なる光の順応者なり。邪なるものを打ち倒すため、我に力を分け与えん。《清邪の降審》』
その魔法名を僕が発した瞬間、魔族軍艦の上空にちょうど全魔族がすっぽりとおさまる大きさのリングが現れ、少し発光したと思ったら純白の光で構成された巨大な槍が出てきた。巨大な槍はその姿を全て現すと目に捉えられないほどの速度で落下した。目に捉えられなかったのになぜ落下したのが分かったのか。それは簡単だ。槍が消えた直後に大きな水柱がたったからだ。
「やったか!?」
「やめて野洲家。フラグだからそれ」
「というか結果は見なくても分かるわよね」
「そうだね」「あぁ」
そう何も視界に頼る必要は無いのだ。魔力を感知すれば残りの人数くらい分かる。
「気をつけてください。一瞬ですが神気を感じました」
クリセリア大王国。ここの王国の名前だ。そしてこの人は小夜観 実花。この王国に召喚された巫女の勇者の職業を持つ勇者である。『巫女の勇者とかおかしくね?』等のツッコミは不要だ。ここは異世界なんだから。
「残り艦数6です!魔族側からの魔法攻撃を確認。勇者様以外砦に避難してください!」
もともとは20隻を軽く超えていたのだからかなりの成果だ。ちなみに勇者を除く人達が撤退命令を出された理由は戦力温存、つまり防衛魔法などの使用によって魔力をつかったり、ひたすら防御して体力をけずったりしないためだ。僕達なら召喚されたときに与えられた加護などの力があるので遠くから放たれた魔法を避けるくらいの体力ならすぐに回復できるし、魔法に当たる確立も少ない。避けて避けて避け続けて相手の魔力を削る作戦だ。
「っておい!なんで獣王が出てきてんだよ!」
「ガハハ!何を言うとるんだ小僧!強敵が、戦が我を呼んでいる。我はそこへ向かうのみ!」
獣王。獣人の王様。今回人間族に力を貸してくれた種族の一つが獣人だ。王様が出てきて大丈夫なのだろうかと疑問に思ったが大丈夫らしい。人間族が敗れれば今度は獣人に向かってくるかもしれないからだという。本心はと聞かれていたときの回答は強者と戦いたいかららしい。戦闘狂である。そんな王様がいる国の住民も戦闘狂が多く、一人が行くと言い出したらぞろぞろと集まって国が崩壊するかもしれないとの事で獣人からは獣王だけが参戦だ。予備の剣だとか道具は結構提供してもらっているみたいだけど。
「!?」
突如緊張が走る。前方に巨大な魔力が感じられたからだ。つまり・・・
「まずい!でかいのが来る!」
誰かがそう叫ぶ。僕達はしゃべる余裕こそあるものの、莫大な魔力を持ったあの闇弾を打ち消せるほどの魔法を放つ余裕は無い。マシンガンのごとく襲い掛かってくる魔法を避けながら対策を考えるが間に合わない。そう思った瞬間かなり近くまで来ていた巨大闇弾が消滅した。なぜ?と思い巨大魔法が近づいていた場所を見ると獣王が魔法を殴っていた。
「何やってんだ獣王!魔法をガードどころか殴って壊すとか馬鹿なの?ねぇ馬鹿なの死ぬの?」
常人がやったらいや僕達でも普通に死ねる。それを軽くやってのける獣王は馬鹿なのか化け物なのか。いやどっちもだな。そうに違いない。だってほら、海を走って船に乗り込んだもん。魔族も予想不可能だったのか魔法を撃つのを中止した。
「あっ沈んだ」
『のこり5隻!』
「・・・こうして獣王は船とともに深い海に眠りにつきましたとさ」
「まだ生きてるぞ小僧!」
大跳躍で跳んできた獣王が言う。もはや跳ぶではなく飛ぶである。
「と冗談はここまでだ。我が一隻沈めた途端自殺をし始めた。こりゃあやばいのがくるぞ・・・」
「つまりどういうことだ?」
「大量の血を生贄にして魔王達を召喚するつもりだ」
その言葉を肯定するように魔法陣が現れ普通の魔族とは別次元とも言って良いほど強い魔力と殺気を持った魔王が出て来る。しかも魔法陣は各地にである。つまり第一防衛ラインなどの意味も成さない。魔族がわざわざ堂々と船できたのはこのためだったのだ。
『真魔王級の魔族がいたると事に召喚されています!範囲は確認できてませんが王国付近にも召喚された可能性があります!手が空いてるものはなるべく王国に近づいてください!』
まずい。邪神の目的は王国。王国の住民を生贄にすれば力は弱くなるだろうが降臨できるだろう
。弱くなるといってもぼく一人じゃ絶対に無理だ。はやく王国に向かわなくてはならない。しかしここにも魔王がいる。相手をしていればかなり時間がとられてしまう。
「ここは我に任せよ!汝らは先に行け!」
「サンキュ。生きて来いよ」
「ありがとう!かんばって!」
「おことばにあまえて」
「急ぐぞ!」
『おう!』
全力で走る。波立つ海を背にして前方の林を潜り抜ける。草原に出たところで足を止めた。いやとまった。そこには一回り大きい魔法陣が二つ浮かび上がっていたからだ。そしてそこから出てきたのはどちらも黒髪の少年だった。片方は闇暗だった。もう片方も異世界人なのか?
「光輝!無事かい!?」
第四勇者が駆けつけてきて僕にそういった後闇暗じゃないほうの敵を睨んだ。
「あの人を知っているんですか?」
「あぁ。人間族の恥だよ。自分から邪神に尻尾を振ったもう一人の適格者。
そして僕の少し前に召喚された元第四勇者、本居 蔵雅だ」
元勇者は僕たちに狂気の笑顔を向けた・・・。
初一話で一万文字達成です。これからもよろしく御願いします。




