2話 召喚か?転生か?いや、転移です。
職業の都合上2週間くらい投稿できませんでした。まことにすみませんでした。
「知らない天井だ」
一回使ってみたかったが、まさか言える機会があるとは。
今はそんなこと考えてる場合じゃなさそうだ。
ここは何処だろうか? これは夢なのか?
幸い所持品がなくなったりはしていなかったので、ポケットに入れていたスマホの地図を開いてみたが『位置情報を取得出来ません』という表示が出るだけだ。オンライン系以外のアプリは普通に使えるということは故障ではなく、電波の届かない場所にいるということだろう。
しかし参った。冷静を演じてはいるが、正直焦っている。ためしに素数を数えてみよう。1、3、5、7
ってこれ奇数だ。
……相当参ってるな。
とりあえず深呼吸しよう。
「スーハースーハー」
よし、これで少しは落ち着いた。
まずはここがどこなのか、調べなくてはならない。まず床。コンクリートのような無機質で硬い物質でできているようだ。天井は目測で5メートルくらい。床と同じくコンクリみたいだ。ということは地下か?
俺の記憶にはこんな場所はない。可能性があるとしたら、隣の実験室で今の科学技術と魔法道具を合体せて、VRMMOを作れないかという実験をしていたらしいから、小説みたくゲームの世界と同じような世界にとばされてしまったとかか。我ながら現実的ではないとは思うが、魔法道具とかあるから否定しきれないのが現状だ。
現実的なのだと、実験失敗で爆発してここに運ばれたとか。しかし、爆発の被害者をこんなコンクリ固めの部屋に放置するとも思えない。もしかしたらあの光は、テロリストの集団とかが投げたスタングレネード弾だったという可能性もある。その集団に連れてこられたのかも。この説が一番現実的だ。やばい。もしかしたら魔法道具目当てで狙われたのかも。あの実験に使ったものと、例のVR以外の魔法道具は今俺が持っているし。
『ほらしっかりしてください!』
人の声? テロリストか!?
『彼が起きましたよ!挨拶に行かなければ!』
やばい。挨拶(物理)が来るかもしれない。
『ガコン!ギ~ガシャン!』
さびた鉄の扉がそんな音とともに開いた。
「はわわわわわ」
人影が見えた。何か言おうと思っても、俺の口からは、「はわわわわわ」しか出てこない。俺が焦っているうちにコツコツと足音と人影が近づいて来る。しばらくして人影は俺の間近にきた。
「我が望むは全てを照らし出す光。今ここに現れよ。『照明』」
うわぁ、いい年いってそうなのに中二病発言ってひくわ、なんて思った瞬間、部屋が明るくなった。
「ふぅ。これで明るくなりましたね。魔法具なしでのこの魔法はやっぱり魔力消費が多いですね」
魔法? ってことはやっぱりここはVRMMOの中? それに魔法具って魔法道具のことか? てかなにこいつKOWAI。
「あれ? どうしました? 顔色悪いですよ」
いやいやどうしましたじゃねーよ。電気も何もない、知らない部屋で、知らない男が、中二病発言したと思ったら急に部屋が明るくなったら誰でも驚くだろ。
「あぁ! この魔法の規模に驚いたんですね! 普通の魔術師じゃ、家一つ位が限界ですものね!」
いや、そこじゃねーよ! 確かに広さはアパートの部屋50個分くらいは軽くあるけどさ! いや、そうじゃなくて
「魔法ってなんだよ!」
ここに来て一番の疑問だよ。
「へ? ご存知じゃないんですか?」
「知ってるわけねーだろ」
魔法自体は知ってるけど、何をやったかよく分からん。
「え? 連絡用発信型魔法陣を使ったんですよね?」
「なにその長ったらしい名前」
「御存知ないということは、貴方は『巻き込まれた者』、『漂流者』、『勇者』、『転生者』のどれかになりますが・・・どれでしょう?」
「知らんわ!俺に聞くな!」
「それはあとで『ステータス』を見れば解るとして、その様子だとここがあなた達のいう異世界ということをご存知ないのですね?」
「!」
ここが異世界……。可能性の一つとして考えてはいたが、はっきりと告げられるとやはり驚きがある。そういうことなら、この男がいっていたことの意味がわかる。
『漂流者』はともかく『巻き込まれた者』はそのままの意味だろう。勇者の召喚に巻き込まれたとか、ファンタジー系の小説ではよくある話だ。
『勇者』はよく小説等で読む、召喚された異世界人のことだろう。勇者の可能性が少なからずあるということは、ここは王城なのだろうか。勇者召喚が街や村で行われるのは違和感があるし。
『転生者』もそのままの意味だろう。
今この場には俺と同じ日本からやってきた者はいないから、『巻き込まれた者』は可能性として捨てていい。『転生者』はたまに小説等で読むのだが、神様がその格好のままで転生させてしまった、ということがあることから『転生者』の確率はまだある。
だが、この中で一番確率が高いのは『勇者』だろう。
おぉ、なんかワクワクしてきたぞ。はやくステータスを見たい。
「焦ると思っていたのですが、ずいぶんと状況理解が早いですね。ここで話すのもなんですし、近くの神殿に行きましょうか」
え? 何故に神殿? ていうか今の『腹へったからコンビニ行く?』的なノリだったよな。神殿って神聖な場所じゃないのか? そんな軽いノリで行っていい場所なの?
「なんで神殿に行くのかというと、ステータスを測定するためですよ。あとコンビニってなんですか?」
「コンビニって言うのはだな…っておいお前。さっきから俺が声を出していないのに、どうして俺が疑問に思っていることがわかるんだ? 心が読めるのか?」
「はい。これでも私、『読心術』を少しかじっているので」
なるほど。読心術とは俺が日本にいた頃のような動作や表情から心を読むのではなく、本当に心を読めるらしいな。異世界ならそんなのがあってもおかしくはない。恐ろしき異世界。
あっ、そういえば魔法やらなんやらで頭がいっぱいだったから、まだ自己紹介していないな。
「あぁ! 私としたことが忘れていました。私はクロニア王国の宮殿魔術師第9位のキラ・マッシェル・ウェルトです。キラと呼んで下さい」
「俺は、日本出身中二病万歳ゲーム大好き、秋原 純弥だ。こっちの世界ではジュンヤ・アキハラっていう言い方でいいんだよな? 呼ぶときはジュンヤでいい」
キラが、中二病? ゲーム? とかつぶやいているが、無視しよう。ほら、目をつぶってまで考えるな、かべにぶつかるぞ。ってかここやっぱり王国(城)だったんだ。
『ガン!』
「いったっ!」
ほら言わんこっちゃない。こいつ意外とドジだな。それに素が出てるぞ。
「いたたた。す、すみません。考え事していると他のことが頭に入らなくなってしまうもので」
「大丈夫ですよ。誰にも失敗はあります、完璧な人なんていないんですから」
「ジュンヤさん、ありがとうござ・・・」
「ってなんかの本に書いてあった」
「はぁなんだか、ジュンヤさんらしいですね・・・」
こ、こいつ短時間で俺の特性を熟知してやがる! こやつやりおるな。
「そんなに驚くことじゃないですよ。心を読めたら誰でもすぐにわかりますよ」
「さっきから思うんだけど、キラが言ってた『読心術』って、ほんとに少しかじっただけなのか?」
「・・・」
「なんか言えよ」
「・・・ところでジュンヤさん、もうすぐで神殿ですよ」
「おい。ごまかすな」
「・・・」
ああもうこれはなにを言ってもダメなやつだな。もうこのことを問うのはやめよう。たぶんこの世界では、戦術とかを知られると命とりになったりするのかもしれないし。
ところで神殿ってどんなところなんだろう。あれ? 俺達一回も外に出てないよな。まぁ王国の城だし神殿とつなっがてたりするのだろうか。
無言を貫きながら、歩いているとどうやら着いたらしい。
「ジュンヤさん神殿に着きましたよ」
なんで『いや~乗り切った~』って顔するんだよ。
しばらく待つと、67歳くらいのおじ様がきた。とてもおっさんなんかとは呼べない、素晴らしい雰囲気の男性だ。
「私はこの神殿に勤めさせていただいております、ロイト・リイマ・ホーリーです。キラ殿のほうから、話は聞いております。ジュンヤ殿ですよね?」
「はい、そうですが」
「それではまず『ステータス』を計測しましょう。こちらへどうぞ」
漫画とかに出てくる、ベタな占い師の部屋みたいなところへ連れてこられた。
「少し準備が必要なので、この本を読んでおいてください」
あれ、そういえば俺はこの世界の文字を読めるのか? この世界の人と言葉が通じているし、大丈夫か?
「大丈夫ですよ。他の世界からやってきた人は、大体『語学の神の加護』が得られますから。文字や言葉が自動的に翻訳されます。まぁ加護のレベルによりますが」
相変わらず恐ろしい読心術だ。
というか加護にレベルとかあるんだ。おぉっとキラとの話で本のことを忘れていた。さっきの感じだと、この本は読んでおいたほうが良いだろう。本と言っても4ページくらいだが。本っていうよりプリントをホチキスでとめたようなものだな。
さて、そろそろ読むか。タイトルは『魔法を使う前の基本』というものだ。ちょっと福雑だったので少し分かりやすくまとめてみた。
『魔法はなぜ発動できるかをご存知だろうか。この本はより魔法を効率的に発動することができるようにするためのものだ。では本題に入ろう。魔法とは魔素という物質を消費して具現化する一部の『神の奇跡』である。この『神の奇跡』を起こすためには魔素を体内から放出できることを前提とする。この知識がなくとも魔法が使えるのは、魔法を使うときに無意識にその行為を行っているからだ。(このことについては一部例外がある)ではこのことを意識して魔法を使ったらどうなるかだが、その前に魔素を体外に放出する方法についてだ。魔素は胸の中心辺りに集まってるとされている。そのことを意識しながら徐々に手のひらに動かす事をイメージすれば、やがて魔素が手のひらに集まる。集まった魔素を手のひらの5cmほど上に球体を作っていくイメージをすると、魔素を放出することができる。これを何回も繰り返せばその行為が素早くできるようになる。さてさっきの答えだが自分で試してみるといい』
という内容だった。なぜだか魔素を体外にだす練習をしたほうがいいと思ったので、待ち時間全てをそれに費やした。
◇◆◇◆◇◆
「お待たせしました。それではこの水晶に魔素をこめてください。初めてですから、焦らなくてもいいですよ」
焦る? どういうことだ? ま、いいか。
集中して魔素を水晶にこめると、水晶の上に半透明なウィンドウが開いた。それと同時に『ステータス可視スキルを手に入れました』とか変な声が聞こえたり、キラとロイトさんが口をあんぐりして驚いてたりしたような気がしたが、それよりも先にステータスだ。
素質と加護と称号という欄がある。
『勇者』とかは称号であろうから称号の欄を見る。
さてさて、俺がここに来た方法は?
召喚か? 転生か?……
いや、どちらでもない。
転移だった。
職業の都合上週一くらいのペースでしか投稿できません。申し訳ありません。暖かく見守ってもらえれば幸いです。
純弥が異世界だと告げられて驚いていたのですが、その前に書いていたように純弥はここが異世界であることを考慮していました。しかし、そのときはすごいパニックしていたので言われるまで忘れていました。