1話 謎の洞窟と魔法道具
よろしくお願いします!
バンッ!
そんな音と共に俺の意識は覚醒した。
と、言うとかっこよく聞こえる。ただ授業中に寝ていた俺を見て、教師が黒板を叩いただけだが。
ハァ。よりによって、短気で有名な櫛凪の授業で寝てしまうとは。いや、体育の後に数学なんてやるのが悪いんだ。俺文系志望だし、こんな公式将来絶対使わん。
「おい! 秋原ァァァ! お前はなんでいつも寝てるんだぁ! 少しは真面目に授業を受けろ!」
滑舌悪いのに大声で叫ぶなよ。何言ってるか分からないんだが。
「おい! 聞いてんのか!」
耳元で叫ぶとか、教師の癖にどんな神経してんだよ。おまけに唾飛んで汚いし。
さすがに我慢の限界だ。
なので、立ち上がって机を叩こうとしたが、タイミング良くじゃなくて悪く、顔をのぞきこんだ櫛凪に爽快な音を響かせながら、平手打ちを決めてしまった。
「純弥! てんめぇ! いい加減にしろよ!」
廊下に放り出されてしまった。まぁ仕方ない。逆切れだし。
そして昼休み、呼び出しをくらった俺は校長室にいた。
7日間の停学処分らしい。俺は昼休みのうちに家に帰された。
普通停学処分はごめんだろう。
しかし俺としてはラッキーな事だ。
何故なら、俺は1日で終わるかわからない、とある調査をしたかったからだ。
調査、というのは単純に言えばふさがれた洞窟の探索ということになる。ただの中学生である俺が、何でそんな事をしようと思ったのか。
それは最近出てきた昔のメモが原因である。
魔法は科学の発達により無くなってしまった、という説を何処かで聞いた事がある。その事から、魔法に関するものが地の底に存在しているのでは、という話も聞いたことがある。
普通に考えれば馬鹿馬鹿しいと一笑するところだ。
しかし俺には心当たりがあった。いや、できたというべきだろう。
昔、この辺りで、どの地図にものっていない、謎の洞窟があったのだ。
その洞窟は、その時代の科学では解き明かせない物が掘り出されたりしたことから、[不思議な洞窟]ということで、一時期ネット上で有名になった。
しかし、その洞窟はある雨の日、土砂崩れをおこし、入れなくなってしまうと同時に、洞窟に関する記憶が、人々の頭の中とネット上から消え去ったのである。
理由は分からないが、俺やその頃子供だった人はこのことを覚えていた。
時が経つにつれ、皆記憶がなくなったのだが。
しかしその事をメモっていたらしい俺は、そのメモを最近見つけ、記憶を取り戻したのだ。
と、言う事で俺は洞窟の調査に出かける事にした。
俺は自分の書いたメモと懐中電灯、そして父の仕事場からいただいてきたドリルとシャベルを持ち洞窟に向かった。ん? 盗んだんじゃないよ。ハハハ、ソンナコトスルワケナイジャナイカ。
◇◆◇◆◇◆
黙々と作業を続けているとドリルが何かに当たった。それが傷ついたり壊れたりしてしまったらいけないので、シャベルで丁寧に掘り進めていった。
◆◇◆◇◆◇
「しゃあッ! ついに見つけたぞ!」
そう、俺はついに目的の物(だと思われる物)を見つけたのだ。
が、しかし。
「どうすっかな、これ」
俺は頭を悩ませていた。
それは単純に洞窟の出口が土で埋まってしまったからだ。
ここまで来るために消費した体力を考えると、掘り返す事もできまい。
何か打つ手はないものか。
色々と考え込んでいるうちに、疲労しきった体はもう限界だった様で、俺の意識は遠のいていった。
◆◇◆◇◆◇◆
目が覚めると、懐中電灯の電池はもう切れてしまったらしく、辺りは闇で覆われていた。
どのくらい時間がたったのだろうか?
とりあえず立ち上がろうとして、何かに手をかけたその瞬間、俺は夜空の下にいた。
「へ?」
驚きのあまり、間抜けな声を出してしまった。それにしてもここは何処だ? この景色見覚えあるような・・・そうだ、洞窟の上だ!
ということは、さっき手を掛けたのは転移できる魔法道具なのかもしれない。
そうと分かれば実験だ。家からビデオカメラを持ってこよう。
◆◇◆◇◆◇◆
実験の様子が写ったビデオを見た俺は感動していた。ビデオには、家の中にいたはずの俺がかすみ、消えた映像が映っていた。この映像をブログにのせた4日後の朝、ポストに目を疑うような手紙が入っていた。
純弥殿へ
君の見つけた魔法道具と思われるものについて。
国立科学研究所と協力して貰いたい事がある。詳しくは今日の午後13時のTVの2chを見てくれ。
総理大臣より
というものだった。
マジかよ!ここまで話がでかくなるか? もしかしたらただの映像を編集してるだけかもしれないのに、ここまでするか普通・・・
◆◇◆◇◆◇◆
俺は手に持っていたリモコンを落とした。テレビには、魔法道具を発見した者は義務教育が指定されている年齢でも学校をやめ、国立科学研究所で魔法道具の研究の仕事についてよい。という法律が出来たと発表されたのだ。
おいおい。衆議院も参議院もこんなの賛成したのかよ! 法律ってこんな簡単に出来ていいものじゃないだろ!
ともかく魔法道具を発見した者には、国のお偉いさんから電話がくるということらしい。
しばらくすると電話から着信音が鳴る。
俺は急いで受話器をとった。
「もしもし?純弥様のお宅でしょうか?」
「あ、はい俺が純弥です」
「突然だが、純弥君。君は国立科学研究所に勤める気はないかい?」
「と、いいますと?」
「魔法道具を国立科学研究所で研究する一員になって欲しいんだ」
「それならもちろん、勤めさせてください」
面白い話に食いつかないわけがない。
「それなら後日迎えにいきますので」
そこでぷつんと電話はきれた。いつ来てもいいように、俺は支度をし始めた。
◆◇◆◇◆◇◆
チャイムがなった。ドアに向かって一応確認を取る。
「どちら様でしょうか?」
「国立科学研究所から派遣されました平野 優太と申します。純弥君を迎えに来ました」
「わかりました。今行きます」
俺はバックを持って玄関に向かった。
「こちらへ」
車まで誘導され純弥は高級車っぽいなと思いながら車に乗った。
「30分くらいで着きますので、適当にくつろいでてください」
30分って近すぎないか?と思い窓の外を覗くと、なんと専用道路ができていたのだ。
そこまでやるか普通!と俺は心の中でつっこんだ。
というか工事の音なんて聞こえなかったんだが……。
◇◆◇◆◇◆
俺は国立科学研究所についた。
俺は会議室に連れていかれた。なんか今後のことについて説明するらしい。俺はこういう堅苦しいのは嫌いだ。司会者っぽいやつが言っていた説明を俺なりにまとめてみた。
1,魔法道具を科学で解き明かす。(純弥が見つけた魔法道具は、全部で18個。壊れたものを入れると30個)
2,科学で魔法道具が再現できないか試す。
3,壊れた魔法道具を復元できないか試す。
4,俺が発見した魔法道具の中で唯一、壊れていないのに作動しなかった物を科学で補い作動させる。
以上だ。俺も魔法道具を作動させる方法は発表した。あと俺がつくのは4番の仕事のようだ。
研究室に着いた俺は、唯一作動しなかった魔法道具をバックの中からだした。
黒いマットの上に魔法陣のようなものが描かれた物だ。
ボタンらしきものも見つからなかったし、魔力(?)を入れても作動しなかった。
え、なになに?「魔力なんてあるわけないじゃん」だって? いやいや、ほかの魔法道具で手から何かを出すイメージをしたら作動したやつがあったんだよ。自分でも信じられなかった。まぁ、魔力と科学を合わせれば何かおきるんじゃないか、と考えられたから4の仕事につくことになったんだけどね。さあそろそろ実験を始めようか。
実験すること数時間
俺達はなんの成果も得られなかった。そして今日はもう寝ることになった。俺はここに泊まることになった。
実験開始から1ヶ月後
ようやくいつもどおりの実験に変化がみられた。魔方陣が光りだす、という。ささやかな変化だがこれで十分だ。実は、この魔法道具をX線で見てみたのだ。
すると、内部に管があるのがわかった。実験を繰り返して、この管が魔力(?)でしか動かせないことがわかった。これをさっきつなげてから実験をしたら、うっすら光ったのだ。
さて、これをあと1ヶ月以内に成功させなければならない。俺がいた学校(俺はもう辞めている)の奴達が1ヵ月後に見学に来ることが決まったのだ。この日までに成功させないと、同じクラスの奴達に愚痴を言われる。なんとしてもこの日までに成功させなければ! 俺はそう誓った。
また1ヵ月後
結果から言うと・・・駄目だった。結局1ヶ月前から何も変わっていない。
他の魔法道具の研究も難航しているようだ。このままでは皆に会わせる顔がない! こうなったらぶっつけ本番だ!俺はとにかく天に祈った。
ついに学校の奴達が来た。
やばいやばいヤバイヤバイヤバイ。
俺は、この部屋に研究員がいなければ尻尾を巻いて逃げ出していただろう。
もうどうにでもなれ! と思いながら、俺は震える手でマイクを取った。
「え~、おれ…いや、私が今から実験の解説をさせていただきます、純弥と申しましゅ」
ああー緊張しすぎて最後かんだ!生徒が吹き出している。やばい、視線が痛い。
10分後
とりあえず説明は終わった。次は魔法道具の作動に挑む。たのむ! 成功してくれ! そう願いながら実験開始のスイッチを入れた。
そして俺は魔方陣に魔力(?)を流す。
ん? なんか力が抜けていく、と思った次の瞬間。魔方陣が直視できないほどの光を放ち、俺の意識は途絶えた。
ありがとうございました。