第九十二節 マタタビの町だね~……その2
「ここが、そうだな……」
オヤジさんに教えて貰った場所には、
『玲紋総打組』とデカデカ書いてある……
とりあえず扉を確認してみると、鍵は閉まっているようだ。
窓から覗き込んでみるが、中には誰も居ない……
これは、どこかに行っているようだな……
私達は、建物の影から様子を伺った。
やがて、下品極まりない大きな笑い声が聞こえてきた。
どうやら、奴等が帰ってきたようだ。
遠目からでも、その柄の悪さが良く判る……
ん?
なるほどね……
やはり、そうか……
……
私の表情を見て、皆はネコミミカチューシャを装備した。
そして、遥子が呟いた。
「なるほど……魔物だったのね……」
「あぁ……だが、これで遠慮なく奴等を潰せるな……」
それに皆は、不敵な笑みを浮かべていた。
奴等が入るのを見届けてから、皆で静かに移動する。
そして扉を、一気に蹴り破った。
「な! なんだぁ? な……殴り込みだぁ~!」
目の前で、見るからに下っ端そうな奴が腰を抜かしている。
その時、妙に低い声が響いた。
「あぁ? そりゃ、どこの大馬鹿野郎だ?」
奥から、偉そうな奴が出てきた。
いかにもと言う目付きで、こちらを威嚇してくる。
「なんだ? お前等、どこのモンだ? ここを、玲紋総打組と知っての……」
話が終わるのも待たず、遥子達の白い閃光が炸裂した。
私は、おもむろに剣を引き抜く……
……
いや……どうやら、剣は必要なかったみたいだ……
私達の目の前には、それはそれは綺麗な景色が果てしなく広がっている……
奴等は、見事に建物ごと消滅してしまった。
そう……何1つ残さずに……
……
ふと安が呟いた。
「何も……無くなっちゃいやしたね……」
私は、大きく溜め息をついて言った。
「だな……ってか、どんだけ威力あるんだよ……その魔法……」
ゆっくりと遥子達に視線を向けると、
「いや~、思いっきり遠慮したんだけどな~? おっかしいな~?」
魔法三人組は、頭を掻きながら首を傾げていた。
私達が宿に戻ると、オヤジさんが入り口で待ち構えていた。
「おぉ、兄ちゃん! 無事だったか! ほら、中に入って……」
そのまま入って行ってしまったので、私達も付いていった。
食堂のテーブルに腰掛けると、オヤジさんが聞いてきた。
「それで、どうなったんだ?」
神妙な表情を投げかけてくるオヤジさんに答える。
「もう、奴等は来ませんよ」
それにオヤジさんは、え? と言う顔をした。
「来ないって? 上手く、話が付いたのか?」
「いや……もう、奴等は居ないんです……」
私が続けるように答えると、オヤジさんは少し考えるように視線を外している。
そして、かなりの間を置いてから私に視線を戻した。
「居ないって? まさか、町から追い出したのか?」
そう言いながら、おもむろにビールのような飲み物を口に運ぶ。
「いや、そうでは無く……この世から、出て行って貰ったと言うか……」
その時、オヤジさんが突然に飲み物を噴出した。
「そりゃ、おめぇ! 殺しちまったって事じゃねぇか! それも、あの人数を全員?
そんな無茶な!」
飛び散った飲み物などお構い無しに、私を凝視した。
それに私は、少し引き気味に遠慮しながら答えた。
「いや……奴等は全員が魔物だったんで、遠慮なく……」
そのまま私を凝視していたオヤジさんだったが、いきなり笑い始めた。
「おいおい……本当かよ! そりゃ、すげぇな~! まったくよぉ!
兄ちゃん達にゃビックリだぜ! はっはっは! こりゃ愉快だ!」
そのままオヤジさんは大笑いをしていたが、何か様子が変だ……
どうも笑っているようには思えなくなっている。
いったい、どうした?
大丈夫か?
その様子を伺っていると、
「く~……本当にビックリだぜ……これで……これで、あそこを続けられるんだよな……ありがてぇ……本当に、ありがてぇ……くぅ~……うぅ……」
オヤジさんは、そのまま泣き崩れてしまった……




