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第八節 塔の攻略ね~……その2

 遥子が、また私の元を離れていく。

「あれは、何?」

私には見えない何かを目指して、ひたすらに歩いて行ってしまう。

「ダメだ! 行くな!」

私の言葉も虚しく遥子はあっと言う間に、闇に包まれ消えていった……

くそ……

私は、おもわず舌打ちをする。

一体どういうつもりだ?

先ほどから、こんな事の連続だった。

まるで、幻覚を見せられているとしか思えない。

今まで何とかして遥子を引き止めていたが、

私から勝手に離れて行く度合いがみるみる多くなっていった。

かく言う私も、何度もありえない物を見せられて全く先に進めないで居た。

そして遥子が居なくなった瞬間から、幻覚は完全に消えて元の塔に戻っている……

この塔は螺旋状の階段を上がると次のフロアがある単純な構造だ。

どうやっても一本道なのでハグレそうにはないのだが、

いくら見て回っても遥子の姿は見当たらない。

どう言う仕掛けなのか良く判らないが、そんなに私達を引き離したいのか?

実際この塔の仕掛けは相当に卑劣で、

油断すれば腕の一本も持っていかれそうな勢いではあるが、

さすがに殺意までは感じられない。

かなり根性の曲がった奴が仕掛けた事は確実だが、クリアする為の道筋は確かにある。

RPGを少しでもプレイした事があるなら、何とか解決できるレベルだ。

決して、無理ゲーでは無い。

と言う事は、人によって試練の度合いと内容が違う可能性も否定できないな……

こうなれば、それぞれに試練に立ち向かわなければいけない。


 少なくとも、遥子はゲームに関して素人では無いはずだ。

私の買ったRPGゲームが、すでに何十本も行方不明になっている。

「いつ返すつもりだ?」と聞いてみたら、

「そのうち、まとめて持ってくるわ」とアッサリ答えやがった。

まぁ、私はすでにクリアした物だから大した問題では無いのだが……

ひとまず、あれだけのゲームをクリアしているのなら

この塔の仕掛けなど、屁でもないだろう。

それでも、下手をすれば怪我で済まないのは確か。

私としては、心配でならない……

なんとか頑張ってくれよ、遥子……



 私は、ひたすらに謎を解き上へと登って行った。

そう、急がなければならない事情がある。

ゲームの定番とまでは行かないが、ここまで来て確信めいた物を感じていた。

この嫌らしいトラップを仕掛ける奴であるなら、

きっと最後の階は二人が一緒でなければクリアが出来ないはず。

少なくとも、奴は完全にゲーム感覚で仕掛けを作っている。

そこまで一人で攻略しなければならないのなら、最後は尚の事巧みに仕掛けるはず。


 さらに他の可能性を考えれば、強敵と戦う羽目になるかもしれない。

それは、いわゆる塔のラスボスだ。

その場合は、一人で勝つ事は不可能である場合がほとんどだ。

ゲーム等では、それと気付かせない為に中ボスを用意している。

またかと思って戦ってみたら、あっという間に全滅する事など良くある話だ。

そんなトラップを事前に察知するには、よほどゲーム慣れしていなければ無理だろう。

遥子の性格は、基本的に突撃型だ。

それに、あっさり引っかかる可能性は高い。

もしそんなトラップがこの先にあるのなら、

せめて私が先に行って待って居たいのが心情でもある。

今の私達に、失敗は許されない。

いつものように、リセットボタンは無いのだ。


 何かが居る……

白っぽい鎧を纏った騎士のようだが、何かこう……どこか頼りない感じがする。

微妙に猫背だからだろうか?

私が慎重に様子を伺っていると、奴が声を上げた。

「貴様を待っていたぞ! 私が最初の守護神だ!」

最初とか紹介しちゃってるよ、コイツ……

わざわざ、私を待っていてくれたとはご丁寧な……

って、どこの糞ゲーだよ……

私が呆れていると、さらに続けた。

「私の名は、ゴハンマ・ダカイ。いざ尋常に勝負だ!」

ボケ老人ですか……

しかし、この展開では戦うしか選択肢は無いだろう。

だが、武器はどうする?

何か無いか?

辺りを見渡しても、これといったものは無い……

これは困った……

ん?

ちょっと待てよ……

あいつ、いざ尋常にって言ってたよな……

そうか! そう言う事か!

「おい、守護神!」

私が呼ぶと、奴は何か驚いている。

「なんだ! 何か用か!」

「私は武器を持っていない丸腰だ! これで尋常に勝負が出来るのか?」

その問いに、奴は言葉に詰まっている。

「同じ条件で戦う事が出来ないのなら、貴様は卑怯者だ!」

ビッと人差し指を向けると、奴は一瞬ビクッとした。

「ならば、貴様に剣をやろう! それなら同等だろ!」

これは、ありがたい。苦労せずに、武器が手に入りそうだ。

「その剣で、私が勝てたら良いのだな?」

その言葉に奴は笑みを浮かべると、私の足元に一本の剣が投げられた。

滑るように足元まで来たそれは、白を貴重にしたデザインでスッキリとしているが

なかなかカッコイイ感じだ。

だが剣と言うよりも鞘の微妙な曲がり具合からして、それは日本刀に近いようだ。



 私は、剣を拾う動作を始めながら考えを巡らせてみる。

やはり、中ボスのパターンのようだ……

自己紹介で、最初の守護神とか言ってるし……

そうなると当然、二人目が居るはずだ。

だが、さすがにヒント出し過ぎだろ……

これを仕掛けた奴は、卑劣な割には馬鹿なのか?


 私が、スローモーションに一時停止を混ぜたような遅い動作をしていると奴が叫んだ。

「早く拾え~!」

何やら、だんだん泣きそうになって来ている……

このまま泣かせてみるのも楽しそうだが、さすがに可哀想か……

いや、ちょっと待てよ……

何で、泣きそうになっているのだ?

今、私は何をしている?

ゲームにしてみれば、規格外な行動か?

規格外か……なるほどねぇ……

面白そうだな……


 私は剣を拾うと、これ以上無いほどに不気味な笑顔を浮かべて奴に言った。

「私は、この世界を滅ぼそうとしている者だ……」

奴は、え? と言う顔をしている。

「この剣を渡したが運の尽き! 犬のように死ね!」

自分でさえ言っている意味が良く判らないが、

それに何やら複雑そうな顔をしているので更に続けてみた。

「貴様如きが、この私に勝てるとでも思ったか! この愚か者めが! ふはははははは!」

完全に、奴は引いているようだ。

もうこの際、勢いが大切である。

「さぁ、どうする? 私に綿ゴミのように殺されてみたいか! ぬぁあはははははは!」

もはや、自分でも全く意味が判らない発言になっている……

さて、そろそろ仕上げと行くか。

私は高笑いを続けたまま奴を凝視すると、そのまま前へ歩みを進めた。

それに、奴は泣きそうになりながら恐れおののく。

「来るな! うわ~! 来るな~!」

奴が、私を恐れて背中を向けた。

今だ……

私は、一気にダッシュする。

「ウギャ~!」

背中から思い切り斬りつけられた奴は、そのまま床に倒れこんだ。




















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