第七十九節 大丈夫かよ……
それから、伯爵がどうしても行ってみたいと言う秘湯を
3箇所ほど回ってからデヴォンニャー邸に戻ってきた。
ポリニャー伯爵が、部屋のドアを開けながら言った。
「只今戻りました~、どうもお待たせ……しぃ?」
そのまま固まっているので、何が起こったのかと覗き込んでみると
皆が口に人差し指を当てている。
私達が静かに入って行くと、隠し部屋の方で何かが行われていた。
その時、ダッツが小声で言った。
(丁度、これから実験が始まります。静かにするようにとのお達しです)
なるほど……
始まったようだ。
ビーは、魔法陣の中に立たされている。
その前でセント・ネコデスは、本を片手に棒のような物を持って
真剣な表情でそれを見ている。
その後ろでは遥子達、魔法3人組が鈴のような物を手にしていた。
セント・ネコデスが大きな声を上げた。
「浄化儀式、第1~」
おいおい……ラジオ体操かよ……
その声に続いて、
「シャン! シャンシャン!」と鈴をテンポ良く鳴らし始めた。
そして広げた本を見ながら、3人で揃って何かを唱え始めた。
「アーノクターラーサンミャクサンボーダイコーチーハンニャーハラー」
ん? 何だ? この妙に聞き覚えのある感じは……
その時、セント・ネコデスが何かの粉をビーの上に撒き始めた。
それに反応するかの如く、魔法陣が鼓動を打つように光り始めた。
真剣な表情で、その様子を確認している。
しばらくすると、またセント・ネコデスが声を上げる。
「浄化儀式、第2~」
その言葉で、魔法3人組の動きが変わった。
何やら、手の平を交互に上げながら魔法陣の周りを並んで歩き始めた。
「ハイや! ハイや! ハイやいやいや!」
その光景は、どう見ても盆踊りだ……
これ、本当に大丈夫かよ……
セント・ネコデスは、おもむろに手にした棒を上に掲げる。
指揮者のように棒を動かすと、魔法陣の鼓動が徐々に大きくなっていく。
そして、建物が振動する程の重低音が波を打つように響き始めた。
セントネコデスはそれに頷くと、また大きな声を上げた。
「浄化儀式、第3~」
3人組は、素早く下に置いてあった槍のような棒を拾う。
それを下に叩き付けながら、その場で足踏みを始めた。
「フンダバダ! ハンダバダ! ア~~エ~オ! フンダバダ! ハンダバダ!」
それは、いったいどこの部族だよ……
はたから見ている限りは、とても真面目にやっているようには思えないのだが
その期待を大きく裏切るように変化が現れた。
ビーの首に下げられた浄霊石が、激しい光を放ち始める。
それは辺りに広がり、見てはいられない眩さに包まれて行った……
やがて光が弾けるように消えていくと、静かにセントネコデスが言った。
「うむ……完璧だ……」
ホンマかいな!
突っ込みどころ満載の儀式だったが、まずはビーが心配だ。
私達は、一斉に魔法陣に駆け寄った。
ビーが、気を失って倒れている。
いったい、どうなった?
セント・ネコデスは、首筋と手首に指を当てて様子を見ている。
「大丈夫か?」
思わず私が声を上げると、ビーが少し動いた。
「ん? え? あ、もう痛くて痛くて……僕は、いったいどうなったんでしょう?」
気が付いたようだ……良かった……
「あれ? 僕は生きているんですね?」
ビーがこちらに顔を向けると、私達はそのまま固まった……
「あれれ? どうしました?」
その時、安が一番に声をあげた。
「それは……反則でやすよ……」
うむ……確かに反則だ……
そこには、言葉では言い表せない程の超美少年が居たのだ……




