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第七十節 ポリニャー伯爵って……

 だいぶ落ち着きを取り戻した伯爵は、書類を整理しながら私に問いかけてきた。

「そう言えば、北はどうでした~? イイ温泉があったでしょう~?」

「えぇ、白骨化温泉と言う所に行ってきました」

「あ、あそこはナイスですよ~。それを一番に選ぶとは、さ・す・が!」


 しばらく温泉話に花が咲いたが、話の合間を見て切り出してみた。

「それで東の城の件なんですが……

これまでの報告と合わせて、内密にお話したい事がありまして……宜しいですか?」

伯爵は頷きながら、どうぞとばかりに手を差し出した。



 私はこれまでの経過を説明し始めると、伯爵はそれを黙って聞いている。

そうは言っても、女神ネコミミやトナカイ辺りの話をマトモに伝えれば

無駄な混乱を引き起こすだけだ。適当にハショリながら話を進めて言った。

だが、東の城の奪還を伝えると伯爵の目付きが変わった。

「え? 今、奪還に成功したって言いました?」

「えぇ……ソコスベリー候と騎士達はすでに城に戻っています。

そして避難所に居た城下町の皆さんにも戻って頂きました。

現在は、魔物の襲撃で破壊された建物の復旧作業が連日続いています」

「いや、ちょっと待ってください? そうすると、もう城に魔物は居ないと?」

割って入ってきた言葉に頷くと、伯爵は大きく息を吐いて考え込んでいる。

そしてしばらく間を置いてから、はっ! としたように言った。

「あ! 中断させてしまって申し訳ない……まだ、続きがありそうですね」

私は一つ頷いてから話を続けた。

「ソコスベリー候より、オークス伯爵の救出を依頼されました。

そちらが、人質になっていたフローラ・オークス令嬢です」

手を向けた先に居るフローラに視線を移すと、伯爵は、目を丸くした。

「え? そうだったんですか? これは気が付きませんでした。

私がポリニャーでございます」

おもむろに挨拶のポーズをすると、

フローラもそれに答えるようにスカートを持って挨拶を返した。

貴族的なやり取りが済むと、私は続けた。

「それと関連して、セント・ネコデスについての真相も聞き出しております。

私達は二人を救出するつもりで戻って参りました。

そして、こんな事をお願い出来るのは伯爵を置いて他におりません。

どうか、彼等の救出を手伝って下さい」

私達が頭を下げると、伯爵は考え込むように息をついた。

「なるほど……そこまで掴んできましたか……さすがは、あの沙耶さんが

認める人物だけの事はありますね~。では、宜しいでしょう!」

何かを思い立ったように勢い良く立ち上がると、

暖炉から火の付いた木を持ってきてロウソクを付けて回っている。


 伯爵に、カーテンを閉めるように促された。

「そこの奥の方! 入り口の鍵をシッカリ閉めちゃってくださいね。ほら貴方も!

そっちもジャンっジャン閉めちゃって下さいね~」

ロウソクの明かりに照らされる中、伯爵は本棚をいじり始めた。

何やら音がする……

なんだ?

その時、本棚から一筋の光が溢れた。

いったい、何事だ?

本棚が横に動いて行くと見ていられないほどの光が溢れる。

それに思わず腕を翳した。

光に目が慣れてくると、ようやく事態が理解できた。

何だよ……これは……

目の前に現れた隠し部屋に驚いていると、伯爵が声を上げた。

「さぁ、こちらに……」

中に入ってみると、天井が蛍光灯のように明るく光っている。

どうやって光っている?

電気は無いはずなのだが……

周りを見渡すと、凄い数の立派な本が綺麗に本棚に納められている。

この人、何者だよ……

その時、翔子が声を上げた。

「これは……失われた遺産じゃありませんか!」

「おやおや……お嬢さん、良くご存知ですね~」

笑みを浮かべる伯爵とは対照的に、首をかしげている私達に向かって

翔子は興奮しながら言った。

「これは、公式には消失したとされている遠い昔に研究された魔法の数々です。

ですが、それ等は何処かに残されていると言う伝説もあって……

まさか、本当にあったなんて……でも、どうしてここに?」

それに伯爵は、不敵な笑みを浮かべた。

「いいですか~? これは、絶対に内緒ですからね~?」

口に人差し指を当てながら、私達に同意を求めてくる。

私達が頷くと、静かに言った。

「私の先祖は、勇者と共に戦った魔法使いなんですよ」

ん? 勇者だと?

「それは、もしや信心ルイの事ですか?」

私の言葉に、また笑みを見せた。

「おやおや……これまた、良くご存知ですね~。勇者と共に戦った私の先祖は、

一つの遺言とこの魔法書を残しました」

遺言?

伯爵は魔法書を見渡しながら言った。

「遠い未来、魔王は必ず現れるだろう。その時、新たな勇者もまた生まれる。

その者が現れるまで、この書を封印するのだ!」

しばらくの沈黙が辺りを包むと、伯爵は背中を向けたまま話しだした。

「子供の頃から散々聞かされていましたけどね、

そんな夢みたいな話があるものかと思っていましたよ……ですが、どうです?」

突然に振り返って、私達を指差した。

「それが、貴方達なんですよ!」

私達が固まっていると、ふと笑みを浮かべた。

「まさかね~、本当だとは私も思っていませんでしたよ~。

でも、貴方達は間違いなく勇者です! もう、断言しちゃいましょう!」

おいおい……












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