第六十八節 次の作戦だね~……
私がトナカイと話していると、後ろから声が聞こえた。
「ここに来てたんですか、探しましたよ」
振り返れば、そこにダッツとナーヴェが居た。
「お、早かったね。それで、どうだった?」
問いかける私に、二人は頷いた。
「えぇ、奴のアジトを突き止めました」
「マジで? さすがだね~……となると、意外に近くに居たか……」
おもわず腕を組む私に、ダッツは話を続けた。
「はい……城より南の山腹付近にある、古い石作りの建物でした。山道から見た限りでは、
生い茂る木々で発見されないでしょう。恐らく戦争時代に使われていたものかと思われます」
なるほどね……潜伏するには絶好の場所か……
「そしたら、作戦会議と行くか」
トナカイに軽く挨拶を交わして、私達は部屋に戻った。
「お? 皆いるようだな」
部屋に入ると、すでに皆はテーブルを囲んで座っていた。
ひとまず私達も椅子に座って、現状を説明し始める。
ダッツとナーヴェが奴のアジトを突き止めた話題に入ると、突然に遥子が立ち上がった。
「それじゃ、一気に片を付けちゃいましょうよ!」
それに私は、腕を組みながら答える。
「いや……奴を追い込むのは、まだ後だ」
遥子は私を睨み付けた。
「どうしてよ!」
いきり立つ遥子の気持ちも解るが、それにはまだ早い。
一息ついて、私は答えた。
「今行ったとしても、アジトには誰も居ないだろうさ。それに、あれは所詮こすい詐欺師だ。
放っておいても問題はないさ」
「詐欺師?」
首を傾げながら椅子に座りなおす遥子に、話を続けた。
「あぁ、それが奴のやり口だ。ソコスベリー候が使えない今となれば、他に協力者を求めるだろう。
奴としては、やはりこれまで手に入れたソコスベリー候に関連したネタを存分に使いたい所だ。
だが、西の平和な土地には反旗を翻しそうな権力者は居ないので論外。
そうなれば、必然と権力争いが多いデヴォンニャー邸に当たりをつけてくるはず。
何か次の手を打つとしたら、それが一番妥当な選択だ」
しばらく間を置いて、遥子は溜め息混じりに言った。
「そうすると、奴は向こうに現れるって事?」
それに私は、おもわず笑みを浮かべた。
「あぁ、その通りだ。そしてデヴォンニャー邸に潜入するとしたら、やはり一番の早道は
オークス伯爵だろう。彼が協力していると言う、他の魔物との連携も十分に考えられる。
まずは、このパイプを潰す事が先決だ。
まぁ状況によっては、それを利用する事も視野に入れてはいるがな。
いずれにしても、セント・ネコデスとオークス伯爵の救出が最優先事項だ。
それまでは、奴を泳がせておいても大した問題ではない」
遥子は何度か頷くと、真っ直ぐに私を見た。
「それじゃ、急がないといけないわね」
「あぁ、さっそく出発だ!」
私の掛け声と共に、皆が立ち上がった。