第六十四節 懲りてないね~……
私達が宿に戻ってしばらくすると、ダッツとナーヴェも戻ってきた。
笑顔が無いところを見ると、大体予測は付くが一応聞いてみるか……
「それで、どうだった?」
私の問いに、二人は大きく溜め息をついた。
「えぇ……勇太さんの予想通りです。ソコスベリー候は魔物と連絡を取っています。明日の午後、あの者と会うつもりです」
やはりか……
まったく、懲りない爺さんだ……
さて、どうしたもんだか……
その時、遥子が勢い良く立ち上がった。
「ねぇ? その魔物を捕まえちゃったら?」
まぁ、確かにそれも一理ある……
私は少し間を空けてから答えた。
「恐らく、ネンコウジョ・レツと言う魔物は幻術を使うはずだ……一筋縄に捕まえられるとも思えない……それに、もし逃がしてしまったら後が大変だぞ? このまま泳がせるのも手だと思うが?」
それに遥子は反論する。
「でもそれじゃ、あたし達の動きが筒抜けじゃない!」
確かにその通りだ……
私は、大きく息をついて言った。
「よし! まずはソコスベリー候を懲らしめておくか!」
それに皆は強く頷いた。
さて……今日のうちに、もう一仕事だ。
私達は城に訪れると、避難所で遥子が脅かした騎士に声を掛けてみる。
「当主の側近も含めて、この城の全員に集まってもらう事は可能かな?」
「はい、見張りと護衛勤務の者以外でしたら集まる事は可能ですが……」
なるほど……
「では、それで構わないので早急に集めて頂きたい。重要な案件とだけ伝えて欲しい」
案内された場所は、見たところ食堂も兼ねた休憩所のようだ。
騎士達が私達を確認すると一斉に立ち上がる。
「いや、挨拶は無用に。どうかそのままで……」
私の声で、彼等は気が抜けたように元の体勢に戻る。
隅の席に座って彼等を眺めていると、普段の重々しい雰囲気とは違って
皆が笑顔で雑談している。
まぁ騎士と言えども、これが本来の姿だよな……
しばらくすると、他の騎士達が続々と入ってきた。
「今集まれる人員は、これで全てです」
「では、始めましょうか……」
さっそく、騎士団達に大きなテーブルに集まってもらった。
まずは当主の行動を、彼等が何処まで把握しているかだ。
「皆さんは、明日の当主の予定をご存知かな?」
皆、何を言われているか良く判っていないようだ。
しばらく間を空けて、少し雰囲気の違う兵士が言った。
「私は当主のお側に仕えております。明日の午後は重要な人物が来客との事で警戒を強めるようにとの沙汰がありました」
なるほどね……
「それが何者かは、誰にも知らされていないと?」
私の問いに、兵士は素直に頷く。
「では明日の午後、当主が例の魔物と会うと知ったらいかがなされるかな?」
その言葉に騎士達は驚き、ざわめきが起こった。
その時、一人の騎士が立ち上がり私に聞いてくる。
「それは……真でございまするか?」
私達は素直に頷くと、他の騎士達も口を開き始める。
「な……なんと! 当主は、またあの魔物と!」
「そんな……次は、どうなる事か判らぬぞ!」
「さすがに、それは黙認できん……」
うろたえる騎士達を制止するように私は立ち上がった。
「そこで、皆さんに相談なんだが……」
多大な被害をもたらした魔物の襲撃。
その原因が当主にある事は、すでに騎士達は理解していた。
それでも文句も言わずに、黙って仕えているのだから大した奴等である。
しかし、さすがに次は無い。
更に悲惨な状況を招きかねない当主の行動は、彼等もさすがに見逃す訳に行かない。
そうかと言って、それを進言したとしても当の本人は聞く耳など持たないだろう。
だが、そんな騎士達の据えかねた気持ちも私には好都合だった。




