第六十二節 探しますか……
かなり日も暮れてきたが、出来る限りの事は今日のうちに終わらせておきたい。
ひとまず、浮遊鉱石について情報の入手だ。
町で、発掘に詳しいと言う老人の居場所を教えてもらったので
そこに向かっている。
しばらく歩いていくと、一軒の家が見えてきた。
その作りは、何だか妙にラフで手作り感が満載だ。
良く見ると、玄関の横に置いてある椅子に誰かが腰掛けている。
あの人がそうだろうか?
近くまで来てみると、確かに老人だ。
私は声を掛けてみた。
「あの……発掘に詳しいと聞いてきたんですが」
何も、反応が無い……
もう一度声を掛けると、はっ! としたようにこちらを見た。
「ん? 婆さんか?」
いや……違いますが……
この人、大丈夫かよ……
「浮遊鉱石の採取について教えて頂きたいんですが、宜しいですか?」
その言葉で、突然に老人の目付きが変わった。
「ほぅ……浮遊鉱石のぅ。うむ! まぁ、入りなさい……」
そのまま家の中に入って行ってしまった。
私達も付いていくと、老人は丸めた紙を持ってきた。
それをテーブルに広げると、どうやら地図のようだ。
その上を、おもむろに指で丸く示す。
「まず場所じゃがの! まぁ、この辺りかのぅ?」
いや……それ山より大きいですから……
「まぁ、あれじゃ! ボゥっと光っとるからすぐ解るわい!」
なるほど……
「それで、発見した浮遊鉱石を採取するにはどうすれば?」
老人は、それに一つ頷きながら答えた。
「それは、あれじゃ! パッとやってホッとすればチョチョイじゃよ!」
それじゃ、全然わかんね~よ……
「う~ん、わからんかのぅ……それじゃ、ほれっ! コレ持ってけ!」
何やら、道具箱を渡された。
「これは息子の形見じゃ……ちゃんと揃っとるぞ」
「え? いや……そんな大事な道具……いいんですか?」
「な~に! 道具なんてものは使ってナンボじゃよ!」
本当に良いのだろうか?
だが、せっかくの好意だ。ここは受け取るべきだろう。
「では……ありがたく、お借りします」
老人は手をヒラヒラとさせていた。
まぁ場所は良く解らなかったが、道具を借りられただけでもラッキーだ。
とにかく行ってみよう。
ブットビ山を登りながら、ビーに聞いてみた。
「この辺りで、光っている岩なんて見たことあるか?」
「えぇ。すぐそこに、ありますよ!」
あるのかよ……
多い茂る木々の上空を、おもむろに指差した。
その先に見えるのは、岩がむき出しになった崖といった感じの所だ。
あんな所まで、どうやって行くんだろう?
ビーは突然左に曲がったかと思うと、草むらに向かって進んでいった。
慌てて私と安も、ビーに付いて行く。
「ここは一本道に見えますが、判り難い脇道があるんです。ここを行けばすぐです」
容赦なく被さってくる草を避けながら後を付いていくと、
さっき見た崖の下に辿り着いた。
「これです」
ビーが指差した岩肌は、確かにボンヤリと光っていた。
夕暮れ時の薄暗さも幸いして、それが良く判る。
これは昼間では見つけ難いだろう。
「なるほど……これが浮遊鉱石か……」
町の人の話によると、浮遊鉱石の原動力は魔力らしい。
鉱石に魔力を注ぎ込む事よって浮き上がる力を与えるそうだ。
試しに、どのくらいのサイズが必要なのか聞いてみると
移動船の為に採掘されるサイズは大きくても人の頭くらいらしい。
おもわず首を傾げたが、その大きさで十分に飛ぶ事が出来るらしいのだ。
まぁ、余裕を見ても抱えて持ち切れる大きさがあれば十分と言う事だ。
さてと……
出来るなら夜までには、作業を終わらせてしまいたい。
おもむろに道具を出した。
形状的にはノミやハンマーと言った類のものだ。
これで周りの岩を砕いて採掘するのだろう。
まぁ、この手の道具は私も持っていたので
使い方に困る事は無い。
手にしてみると、どれも手入れが行き届いている。
おもわず、使うのが勿体無くなるくらいだ。
あの老人……やはり凄い人なのかもしれない……
ふと聞いてみた。
「安は、こう言うの使えるか?」
それに素直に頷く。
「えぇ。以前に鍛冶屋を手伝った事があるんで、道具は手足のようなもんでやすよ」
ほう……それは心強い。
「そしたら。左右から掘り進んで行こう」
安はそれに頷いた。
周りから地道に岩を砕いていくと、徐々にその姿が現れてくる。
これは、なかなかの大きさだ。
物が割れないように慎重に、尚且つ豪快に作業を進めていった。
気が付けば、すでに汗だくだ……
この手の作業は、本当にハードである。
だが隣を見れば、安もひたすらに作業をこなしている。
ここは、勝手に休む訳にも行かないだろう……
ん?
今、手応えがあったぞ?
何かがズレたような感じだ。
これは、もしや……
試しに浮遊鉱石を押してみると、若干ではあるが動いている。
「もう少しでやすね」
安の言葉で、顔を見合わせて微笑んだ。
その一撃は、ほぼ同時に打ち込まれた。
鈍い音がしたと思うと、ノミを打ち込んでいた付近の岩が一気に崩れて大きな岩が手前にズレた。
「おぉ、出てきたぞ……これが、そうか?」
私の言葉に、安が続ける。
「いや、まだ要らない岩がこびり付いてるでやすよ。慎重にコソギ落としやしょう」
なるほど……
本体を傷つけないようにノミを当てていくと、ようやくその姿が見えた。
「これは……凄いな……」
見た感じは、なんと言うか……エメラルドと言えるほどの気品は感じられない。
巨大な剥き身のギンナンと言った雰囲気だろうか?
半端に透き通った緑色がボンヤリと光る様は、何とも言えない雰囲気を漂わせていた。
まぁ、間違いなく浮遊鉱石であろう……
ひとまず道具を仕舞うと、それを持ち上げてみる。
「お……結構重いぞ、これ……」
体感で30キロほどだろうか?
持てない事は無いのだが、長い距離は歩けそうに無い。
浮遊鉱石を一旦下に置くと、持ってきた大きな布を広げた。
その上に鉱石を乗せて包み込む。
左右に余った布の両側を縛り上げた。
簡単に言えば、風呂敷の要領だ。
それを肩から掛けてみると、さっきほどの重さは感じられない。
これで、いくらかは楽に移動できるはずである。
「さて、戻ろうか……」
私達は、そのまま老人の家を目指した。




