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第六節 出発してみる?

 あぁ……出発前から憂鬱だ。

まず、名前が良くない。

何だよ、コジュウ塔って……


 教子が、町の外まで一緒に来てくれた。

そして町の外にある道まで出ると、教子が何気に遠くを指差した。

「あれが、コジュウ塔です」

って近っ!

すぐそこじゃないですか、お嬢さん……

と言っても、冷静に見れば一山を超えるくらいはありそうだ。

しかし、山より高い塔とは凄いな。

私は、思わず聞いてみた。

「あれは、誰が作ったの?」

「サクラガ・キレイダを作った、パクチーと言う偉大な建築家と聞いております」

はい……聞いた私が、悪うございました……


 私達は、教子に何かを手渡された。

何だ? これ……

「それは、私達の国では旅の出発の時にお渡しする風習があります。お守りのような物です。どうか身に着けていてください」

いっ寺?

そこに書いてある寺の名前を見て、二人で噴出してしまった。

「あの……何か、おかしかったですか?」

教子が、不安そうに見ている。

「いや、ごめん。ありがとうね、大事にするよ」

私が言うと、安心したように笑顔に戻った。

「じゃ、行ってくるわ」

私達が軽く手を振ると、これでもかと言うくらいに手を振り返してくる。

それは、どこの子供だよ……

手の振り合いが三度目に突入した時、遥子が呟いた。

「終わらないわよ、これ……」

「だな……」

これでは、出発できるのかさえも怪しい……

この際、教子の事は放置しておこう……

私達は新たな道を切り開く為に、コジュウ塔へと向かった。


 歩きながら遥子に、あの時どうして私の後から飛び込んで来たのか尋ねてみた。

遥子の話によれば、落ちて行く私は何やら眩しい光に包まれていたらしい。

それで、おもわず飛び込んだそうだ。そして死ぬとも思って居なかったらしい。

安易だ……あまりに安易だ……

生死を決定する瞬間に、普通は飛び込まないだろう……

その神経だけは理解できない……

「もう、二度と無茶はするなよ……」

私が言うと

「あんたもね……」

冷たく、あしらわれてしまった。



 それにしても、この山道は意外に険しい。

崖とまでは行かないが、それなりの傾斜が続いていた。

木の根や岩を頼りにひたすらに登ってきたが、もう、どのくらい歩いただろう?

遥子が、バテ始めている。

「少し、休憩するか?」

私が問いかけると、何も言わずに何度も頷いている。

こりゃ、キテルな……

私は休めそうな場所を探すと、そこに遥子を座らせた。

「大丈夫か?」

私の問いかけに、ただ手を上げる。

ふと来た方向を指差して言ってみた。

「なぁ見てみろよ、なかなか良い景色だぞ。ほら、街があんなに小さく見えるぜ?」

遥子は、ゆっくりと視線をそこに向けて景色を見る……

……

ダメだこりゃ……反応が無い。

とりあえず、教子が持たせてくれた水筒のお茶を飲ませた。

何気にコジュウ塔を見ると、まだ半分くらいはありそうだ。

しかし、この位置ならもうすぐ下りになるはずだ。

そうすれば、遥子も何とか付いて来られるだろう。

とりあえず、これは一日がかりになりそうだな……



 辺りも暗くなる頃に、ようやく到着した。

目の前まで来ると、その大きさに圧倒されてしまう。

イメージとしては巨大な丸い鉛筆が立っているような雰囲気だ。

窓はあるようだが、全体的にツルッとしている。

材質は石だろうか? 白っぽい表面の感じはコンクリートにしか見えないのだが……

「しかし、デカイな……」

私が声を上げると、遥子が不安そうに答えた。

「本当に大きいわね……まさか、これを登るの?」

「そう言う事に……なるだろうな……」

私が言うと、遥子はガックリと肩を落としていた。





 さて、とにかく入らなければどうにもならない。

こんな森の中で野営するよりは、遥かにマシなはずだ。

「まずは、扉を確認しよう……」

私が声をかけながら視線を向けると、その顔はすでにゲッソリしている。

「そうね……」

もはや能面のようなのだが……

大丈夫だろうか?

扉の前まで来ると、一度立ち止まる。

遥子は、私を抜いていった。

「おい! ちょっと待て!」

私の声に答える事も無く、ユックリと振り返る。

「確認もしないで近寄ったら危ないぞ。すでに試練は始まっているかもしれないし……」

それに、糸の切れたマリオネットにように頭を下げた。

これでは、今日中に登り始めるのは無理そうだな……

「ちょっと待っていてくれ、確認してくる」

何とか立ってはいるが、頭を下げたまま返事が無い……

この中に、休める場所があると良いのだが……




















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