第五十四節 東の城か~……
今、私達は東の城を目指している。
トナカイに事情を話した所、少しでも雪のある地域ならば
十分に移動出来ると言うので、それに甘えさせてもらった。
本当に助かっている。
しかし空の移動は、とんでもなく速い。
何日も掛けた道程を、ほんの数時間で行ってしまうのだから
まさにビックリだ……
出来る事なら、このまま魔の大陸まで飛んで行って欲しいくらいである。
海を渡れないのが、本当に残念だ……
ん? 誰かが後ろから私を突付いている。
何だ?
「旦那~……」
なにやら、安が悲しそうに私を見ている。
「ん? どうした?」
「魔王を倒したら、帰っちゃうんでやすか?」
「あぁ……一応、その予定なんだが……」
「そんな~……」
安は、激しく悲しそうな顔をしている……
「そう言われても、元々この世界の人間じゃ無いからな~……
だが、これからどうなるかもまだ判らないんだ。今から気に病んでも仕方ないだろ?」
「それは、そうでやすが……」
う~ん……例え、この世界で暮らせと言われてもピンと来ないしなぁ……
まぁ、まだ時間は十分にあるのだ。
それまでに、判ってもらうしかなかろう……
「あれが東の城だ」
トナカイの言葉で視線を向けると、
遠くからでも判るほどに城が破壊されている。
そして下に広がる城下町を見ると、まるで空爆でもされたような状態だ。
そこには、人の姿は全く見当たらない……
「これじゃ、廃墟だな……」
おもわず言葉が漏れるが、それに誰の反応も無い。
皆が静かに、その町を見下ろしていた……
確かに、戦争に悲劇は付き物だ。
それが現実でもある。そのくらいは良く判っているつもりだ。
しかし、いくら何でもこれはやり過ぎだろう……
私は、心の奥から静かに込み上げる怒りを実感していた。
「もはや問答無用だ……奴等を叩き潰すぞ!」
皆は、私に熱い眼差しを向けると一度だけ強く頷いた。