第四十五節 サンタ?
いったい、どうなっているのだろう?
町は妙に人が少ない。まるでゴーストタウンのようだ。
全体に雪が被っているので判断しずらいが、どこも基本は木造建築のようだ。
目新しい特徴は無いが何か懐かしい感じの作りだ。
大きさは様々だが、似たような雰囲気の家が立ち並んでいる。
お? あれは宿……だよな……
『猫又民宿』と看板が掛かっているので間違いは無いだろう。
宿の前に馬車を止めてみると、窓枠に角材を打ち付けている体格の良いオバちゃんがいる。
何やら一心不乱に頑張っているので声を掛け辛いが、こうしていても仕方が無い。
私は話しかけてみた。
「あの……泊まりたいのですが」
「あぁ? 今は休業中だよ! こっちゃ忙しいんだい! 他を当たりな!」
いきなり怒られてしまったが、このままと言う訳にも……
もう一度聞いてみた。
「いったい何事です?」
オバちゃんは、こちらをキッ! と睨み付けた。
「サンタだよ! サンタ! まさか、知らないのかい?」
その言葉の後に、私の風体を冷たく流し見て続けた。
「あぁ……旅のお方じゃ、知らなくても無理はないねぇ……」
ズンズンと建物の中へ歩いて行くと、一枚の紙を持ってきた。
「ほらっ! これあげるから、とっとと行きな!」
強引に紙を渡されると、また木を打ち付け始めた。
何が、どうなってるんだよ……
とりあえず、渡された紙を見てみる。
何々?
『サンタ狩り参加者求む!
今年も、サンタの季節がやって参りました。
我こそはと言う、勇敢な方々をお待ちしております。
申し込み資格。
年齢、性別、出身国問わず。
武器の扱いに長けている方、優遇有り。
応募は、対サンタ防衛本部まで』
なんだこりゃ……
理解に苦しんでいると、遥子が紙を覗き込んできた。
「何? これ……」
「いや……全く、わからん……」
二人で、首を傾げるばかりであった。
しばらく宿を求めて町を走ってみるが、どこも同じような反応で
チャックイン出来ないどころか、完全に門前払いだ。
挙句は他の店や民家にも拒絶されて、もはや食料さえも手に入りそうに無い。
これは困った……
泊まる所が見つけられなければ、この寒さの中で野宿しなければいけない。
少なくとも、それだけは避けたい所だ。
「どうする? このチラシの場所に行ってみるか?」
「う~ん……仕方が無さそうよね……」
ひとまず、対サンタ防衛本部へ向かってみた。
プレハブのような簡易的な作りの建物には
『対サンタ最終防衛作戦本部』と看板が掲げてある。
その目の前に馬車を止めて入り口まで来ると、数人の怒鳴り声が聞こえてきた。
「もう我慢できねぇ! 一人でも行ってやる!」
「馬鹿野郎! 命を粗末にしてどうする!」
「だってよぉ! もうダメだよ……」
「まだ諦めるな! 俺達が諦めちゃいけねぇんだ!」
おいおい……こいつ等、何と戦ってるんだよ……
それを聞いた、遥子が取り乱している。
「何? サンタが悪いの? ねぇ? サンタが悪い人なの?」
「どうやら、そう言う風に聞こえるよなぁ……」
あまり関わり合いになりたく無い雰囲気が充満しているが、
もはやここに入ってみるしか手は無い。
スライド式のドアを開けて中を覗きこんでみた。
「あの、すみません……」
私の声に反応するように、獣の革で作ったような上着を着込んだ
柄の悪そうなオッサン達が一斉に睨みつけてくる。
しばらくすると、ここを仕切ってそうな雰囲気のオッサンが口を開いた。
「何のようだ……」
募集してるんだから、威嚇するなよ……
まぁ、そんな突っ込みは置いておいてと……
「我々は北を目指して旅をしていますが、宿を見つけられずに困っています。
もはや、この紙しか頼る手段が無く……」
私が紙を見せると、オッサンの顔色が変わった。
「我々の戦いに、加わってくれると?」
いや……今、かなり話が飛んだぞ……
「宿を探しているだけなんですが……」
「そうか! 仲間になってくれるなら頼もしい! 歓迎するぞ!」
いや……だから、そうじゃなく……
「宿さえ教えて頂ければ、すぐにでもここを出て行きますが……」
「旅のお方は、武器が使えそうだな! 我々は大歓迎だ!」
オッサン話聞いてねぇだろ……
ほぼ強引に仲間にされてしまった私達であったが、
話を聞いてみると、とんでもない事態になっているようだ。
この地域では、毎年この時期になるとサンタの大群が攻めて来ると言う。
毎年防衛隊を結成して撃退していたが、サンタは年々その勢力を増して行った。
特に去年はその数が異常で、半数以上の戦士が犠牲になってしまったと言う。
さらには町にも侵入され、惨殺が繰り広げられた
その惨状をデヴォンニャー公爵に報告して応援を要請したそうだが、
東の城で騎士団は大打撃を受けた為、ここに増援は出せない。
彼等は、もはや何の対策も無いまま戦いに挑むしかないらしい。
試しに数えてみると、防衛隊の戦士達は15人しか居ない。
この人数で大群を相手にするとなれば、到底勝ち目など無いだろう。
皆、死を覚悟してはいるが、やり切れない想いだそうだ。
しかし、そこに私達が加わった所で総勢23人にしかならない。
それでは、屁のツッパリ程度にしかならないだろう……
さて、どうしたもんだか……
まずは防衛対策として、どう考えるか……
サンタは、ソリに乗って飛んでくるそうだ。
一般的に考えて、対空砲火があったとしても空からの攻撃が有利な事は明らか。
つまり、魔法で迎撃したとしても我々が不利な状況は変わらない。
彼等の仲間が命がけで調べたと言う、奴等のアジトが記された地図を見ながら
考え込んでいた。
突然に、防衛隊の一人が声を掛けてきた。
「おい、兄ちゃん。大丈夫か?」
ん? あぁ、また固まっていたようだ。
「いや、なかなか難しくて……どうか心配しないで下さい」
「それならイイがよ……」
やはり、まずは飛行手段を奪うべきだろう。
となると、トナカイがキーポイントだ。
さすがにトナカイが居なければ、奴等も飛ぶ事が出来ないはず。
しかし、敵の状況が判らなければ何も手が打てない。
ならば、まずは偵察だな……
「安、敵陣偵察に行くが来るか?」
「がってんでやす!」
私達は防寒装備で固めると、敵陣へと歩いて行った。




