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第四十三節 全く、こいつ等は……

 どうも、良く判ってくれないらしい……

困った物だ……

偉大なるロマンが伝わらないとは、まったくもって嘆かわしい……


 そんな事を思っていると、女性陣が風呂から上がって来た。

皆、満面の笑みを浮かべている中、遥子が言った。

「ふ~……いいお湯だったよ~」

「そうか、それは良かった。それじゃ、湯冷めしないうちに先に宿へ戻るか?」

「うん、そうするわ。じゃ、後でね」

皆、笑顔で手を振って戻って行った。

「それでは、私達も入るとするか」


 すごい湯気の中を進んで行くと、そこは岩風呂になっていた。

「へぇ……これは粋じゃないか」

お湯を見てみると、かなり白い。

白骨化ねぇ……

何となく入るのに躊躇うが、ここまで来て入らない訳にも行かない。

とりあえず身体にお湯を掛け、全身を洗い流してから足を入れてみた。

うん……冷えている足には痛く感じるほどに熱いが、なかなか良い。

体まで湯につかって行くと、おもわず唸り声が出てしまう。

「これは確かに、いい湯だ!」

「いや~、温泉なんて久々でやすね~」

少し熱めな湯加減に、安も満足げだ。

これは、来てみて良かったかもしれないな……

ここから先は、極寒の地だろうし……

さて、どうしたもんだか……


 突然に、安が声を掛けてきた

「何を考えてるんでやす?」

ん? あぁ、また固まってしまっていたか。

「あぁ、これからの事をちょっとな。北へ向かえば、それこそ極寒の地だろ?

今まで以上に、困難になるのは目に見えている。少し心配でな……」

「大丈夫でやす!」

何を根拠に……

「出発前に、十分過ぎるくらいに準備をしてたのを見てるでやすよ。きっと大丈夫でやす」

そう言ってくれるのは、ありがたいが……

「まぁ気をつけるに越した事は無いが、安の言う通りかもな。今から考えても仕方ないか」

「そうでやすよ」

私達は、湯気の中で笑顔を浮かべた。


 そして温泉を満喫した私達は身支度を済ませると、

湯冷めする前に急いで宿に戻った。


 宿に戻ると皆はすでに食堂に集まっていたが、

何やらワイワイ騒いでいる。

「ん? どうした?」

私の問いに、遥子が答えた。

「ねぇ、次の町の近くにも温泉があるよ! 次はここにしようよ!」

おいおい……こいつ等は……

あそこがイイ、ここがイイ、とハシャギまくる女性陣を呆れ顔で見ながら、

暖かくて美味しい食事を頂いた。



 そして次の朝……



 出発前に会計を聞いてみると、

「4万4千800エンです」

ん?

2泊の8人分だろ?

「何か、計算間違ってない?」

「いえ、お一人様一日2800エンですので」

おいおい……安すぎだろ……

まったくこの親子は、どういう金銭感覚してるんだか……

それに朝方の寒い中で、少女が一生懸命に馬車を拭いていたのを私は知っている。

そこに、10万エンを置いた。

「え? 多すぎます……」

いや、これでも今までのクソ宿より遥かに安いのだが……

奴等に、この少女の爪の垢でも飲ませてやりたいくらいだ。

「いや、馬車を手入れしてくれたろ? それのお駄賃だよ」

赤くなった手と一緒に、それを包み込んだ。


 さて、出発だ。

今は、ひたすらに進むしか道は無い。

準備を済ませると、二人に挨拶をした。

「帰りには、また必ず来ますので宜しくお願いします」

「おうよ! 待ってるぜ! 気をつけて行って来いよ!」

オヤジさんの景気の良い掛け声と、少女の笑顔に見送られて

私達は次の町へと向かい始めた。










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