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第三十六節 長旅だね~……

 途中で休憩を挟みながらひたすらに進んで行くが、

この大陸は本当に長い。

そして最初は驚いた広大な景色にも、いい加減に嫌気が差してきた。

何時までも同じ景色と言うのも、困ったものである。


 後ろで声がした。

「ねぇ!」

激しく不機嫌そうな、遥子の声だ……

「いつ着くのよ!」

「そう言われてもなぁ……今、何時だ?」

「1時よ!」

「じゃ、あと3時間だな」

後ろで、バタッと倒れる音がした。

おもむろに地図を広げて、遥子に言ってみる。

「言っておくが、こんなのが後5回はあるぞ?」

「嘘でしょ~……」

どうやら、その一言でトドメを刺されたらしい……

だが、今は静かな方が助かるのは確かであった……



 ようやく宿場に辿り着くと、遥子は言った。

「もう嫌! こんなの絶対に嫌! 誰か、飛行機作って……」

また、無茶な注文を……

「そんな物、出来る訳が無いだろう?」

私が言うと、ダッツが言った。

「それは、飛ぶ物ですか?」

「あぁ、そうだが?」

「もしや、飛空移動船の事でしょうか?」

「え? そんな物あるの?」

おもわず聞き返すと、ダッツは続けた。

「かなり珍しいですが、存在はします。話によると浮遊鉱石が必要らしいですが……」

出来るのかよ……

「その情報、詳しく教えてくれない?」

「いや、それは……」

ん? 何だ?

そうか、なるほど……

「さては、沙耶に口止めされてるな?」

その言葉に、二人は目を見開いた。

やはりな……

だとすると、魔の大陸までの移動手段は、その飛空移動船を使うつもりか。

「それ作る手段を教えて欲しいんだけど、ダメかな?」

それに、激しく困った顔で頷いた。


 ひとしきり説明を聞くと、私は言った。

「これをネタに、沙耶と交渉しようと思う」

二人は、固まった。

「いや、送り届けてくれるのは嬉しいが、出来ればその船を所有したいんだ。

無駄な戦いは、出来る限り避けたいからな」

それに、二人は頷く。

「だから、私達だけの飛空移動船が欲しいんだよ」

二人は顔を見合わせて、揃って頷きあうとダッツは言った。

「あの……申し訳ありませんが、その交渉は必要無いと思います」

「ん? どういう事だ?」

私が首を傾げていると、ダッツはナーヴェに目配せをする。

ナーヴェが静かに頷くと、ダッツは話を続けた。

「もう、ここまで判ってしまったので言いますが、

沙耶様は、今現在秘密裏にその船を新造しているのです」

新しくか……

「つまり、それは貴方達に使って頂こうと考えているのだと思います」

マジで? 沙耶にしては、サービス良すぎね?

「それは、何故?」

私が問うと、話を続けた。

「私達は勇者となりえる人物を探して調査を重ねて来ましたが、

すでに魔王と戦える資質を持つ者は

この世界に存在しないと言っても過言ではありません。

沙耶様はいつもあんな風に振舞っていますが、真の目的は魔王の討伐と世界平和なのです。

そして、貴方達の事をとても買っておられます。

いえ……もはや、貴方達しか居ないとも言っておられました。

私達は、何故に沙耶様がそこまで入れ込むのか理解できませんでした。

突然の如く現れた貴方達に、ずっと疑念を抱いていたのも事実です。

しかし目の前であれだけの実力を見せられてしまっては、もはや認めざるをえません。

今となっては沙耶様の見る目を疑ってしまって、本当に恥ずかしい限りです。

そして……これも、沙耶様に固く口止めされていた話でして……」

なるほどね……


 私は、しばらく考えてから答えた。

「判った……ひとまず、この話は無かったことにしよう」

それに、笑顔で頷いてくれた。

「もう一つ聞くが、いいか?」

時間差で、頷くのを確認すると話を続けた。

「この、長旅の目的は?」

また、二人は固まった。

「これは、私の予想でしか無いのだが……」

その言葉に、姿勢を正し向き直る。

「私達が魔の大陸へ出発する前に、この大陸から魔物を一掃するつもりではないか?」

しばらくの、沈黙を置いてから言った。

「そこまで、お解かりでしたか……」

私は笑みを浮かべると、それに続けた。

「だが女神ネコミミの祝福を、誰が受けられるのかは判らん。

それは、行ってみてのお楽しみなんだろ?」

顔を見合わせる二人に、話を続けた。

「しかしな、例え女神が相手と言えども交渉にネタは必要だ。

魔物一掃が今回の作戦だとするなら、

あんな小さな鏡が一個増えた所でお話にならないはずだ。

事を有利に進めるには、前もって全てを話しておいて欲しい物だな」

それに、二人は大きな溜め息をついた。

「貴方は、本当に何者なんですか?」

「私か? 私は何処にでも居る、美の探究者だ」









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