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第三百四十五節 さて、行ってみますかね~……その2

 闘技場の中に入って行くと、以前と違って驚くほどに人が溢れている。

天井付近に視線を向けると、かなり先の方に投票所と書いてあるので

多分あそこで馬券を買うのだろう。

だが、この人込みでは前に進めそうに無いよな……

しかし騎士団長とエラクナさんは、それが見えていないかのように

平然と歩みを進めて行く。

すると、そこに居た人々は二人の姿を驚いたように凝視した。

そしてザワメキが起こり始めると同時に、不思議なくらいに綺麗に道が開けて行く。

まぁ騎士でもビビるくらいなのだから、ある意味自然な流れなのかもしれない。


 最前列まで辿り着くと、そこには沢山の窓口が並んでいる。

その一つの前まで来ると、騎士団長はそれを覗き込むように言った。

「サイクロン号に2千万だ!」

ん? それが全財産? ちょっと、少なくね?

いや、ちょっと待て……まずは、冷静に考えてみよう。

2千万だぞ? 思いっきり大金だよな。

ただ単に、私の金銭感覚が麻痺しているだけだよな?

うん……きっと、そうだ。そうに、違いない。


 騎士団長に続くように、エラクナさんが窓口を覗き込む。

「俺はサイクロン号に500万だ」

だよな……普通そうだよな。いや、あれでも実際はありえない位にメッチャ多いよな。


 いや、ここは思いだすべきだ……

あの時、1点1000円の三角買い勝負でどれだけ寿命を縮ませた事か……

私のやっていた事を、良く思い出すんだ。

あれは、どう考えても異常すぎる大金だ……



 そして遥子が窓口を覗き込むと、囁くように何か言っている。

「えぇ~?!」

その声は、窓口の中から聞こえてきた。

だが、騎士団長とエラクナさんは買った馬券を嬉しそうに見つめていて

それに気付いていないようだ。


 やがて遥子が戻って来た。

私は囁くように聞いてみる。

「買えたのか?」

すると笑顔で、その紙を見せてきた。

いやいや、どこまで0が続いてるんだよ。コレ……


 その時、騎士団長が声を掛けてきた。

「ん? 君は、もう買ったのか?」

「え? えぇ、大丈夫です。もう買いました」

「そうか、それなら安心だな。うん」

そして騎士団長は、また嬉しそうに馬券を見つめた。



 しばらくすると、上の方に掲げられていた白いボードが入れ替えられた。

良く見てみると、どうやら倍率が書いてあるようだ。

それを騎士団長がふと見上げると、驚いたような声を上げる。

「何~? 倍率が半分になっちまってるじゃねぇか! 誰だっ! そんなに掛けた奴は~!!」

その言葉に私と遥子は、おもわず眉を上げる。

これは、黙っているしか手が無いよな……


「所で、どこで観戦するんです?」

話を逸らすように聞いてみると、総左遷丈はハッとしたように私を見た。

「あぁ……私達は、貴賓席で観戦だ。確かに、そろそろ移動しておいた方がイイな。では、付いて来てくれ」


 長い階段を上がって行くと、大きな扉の前にピーとナッツが居た。

「あれ? こんな所で、何してんだ?」

私が声を上げると、二人は驚いて聞き返してくる。

「いや……貴方達こそ、どうして……」

すると不思議そうに、騎士団長が話に入ってきた。

「なんだ? 君達は、知り合い? ん? って事は?」

そう言い掛けた所で、突然のように騎士団長が大笑いを始める。

そして、腹を抱えながら私を指差した。

「そうか! そう言う事か! あの時の騎士は、君だったのか! いやいやいやっ、そう来たかっ! あはははっ! まさか、そこから関わっていたとはな! まったく、油断も隙もあったもんじゃない! こりゃぁ、どう転んだって完全に完敗だっ! はっはっは!」

笑いが止まらない騎士団長に、伺いを立てるように私は言った。

「まぁ、その話は……」

「あっ……確かにそうだった……今、話す事では無かったな……いや、すまんな。だが、それにしても君にはやられたよ」

何かバツが悪そうな表情を浮かべて首筋を掻いてから、

「まぁ、入ろうか」

まるで誤魔化すように、笑みを浮かべて扉を指差した。



 貴賓席に入ると、王とアレモが目を点にしている。

「お……おぉ……これは勇者殿ではないか」

「一体、どうしたんです?」

驚いている二人に私は言った。

「今日は騎士団長の口添えで、私達もこちらで観戦させて頂ける事になりました」

「おぉ、ならば一緒に観戦しようではないか! さぁ、座ってくれたまえ」

笑みを浮かべる王とは対照的に、アレモは驚いたような表情を続けている。

この雰囲気だと、アレモは二人から何か聞いてるな?

ふと後ろを振り向くとピーが居たので、私は小声で囁く。

「問題は解決した。彼は、すでに私達の仲間だ。安心してくれと、アレモに伝えてくれ」

「はい……わかりました」

ピーが気配を消しながら目立たないように移動すると、アレモに何か伝えている。

それに数回頷くと、アレモは私に笑顔を見せた。












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