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第三百三十六節 いったい何事? その2

 私達が駆けつけると、そこにはすでに沙耶達が居た。

ホワイティのアジトを見上げれば、二階部分が見事なまでに吹っ飛んでいる。

「ちょっと……大変な事になったわね」

沙耶の言葉に、私はハッとした。

「とにかく見てくるよ」

急いで建物に駆け寄るが、階段まで瓦礫が溢れている。

だが、何とか通れるだけのスペースはあるようだ。

慎重に瓦礫を避けながら二階に上がって行くと、

もはや何処が部屋だったのか解らないほどにレンガやら柱が散乱している。

「ホワイティ! どこに居る! 返事をしろ!」

私は叫ぶように声を上げるが、返事は帰ってこない。

そのまま歩みを進めて行くが、まだ何も反応が無い。

「まさか……本当に、死んじまったのか?」

おもわず呟くと、奥の方から微かに声が聞こえた。

「いやいや、旦那……そう簡単には死にませんよ」

「ホワイティ! どこだ!」

また私が叫ぶと、倒れ掛かった大きな柱と瓦礫の隙間からヒョコっと蹄が出てきた。

「ここです! ちょっと重くて扉が開かないんです……すみません、何とかしてください」

「解った! すぐに出してやる! ちょっと待ってろ!」

私と安で大きな柱をどけようと試みるが、とても人力では動きそうも無い。

その時、遥子が言った。

「ちょっと、どいて!」

「おい、マジかよ! ホワイティ! すぐに手を引っ込めろ!」

その蹄が引っ込むと同時に、辺りは白い閃光に包まれる。

遥子の魔法で大きな柱と瓦礫が綺麗に消し飛ぶと、

奥には頑丈そうで巨大な金庫がドンと置いてあった。


 金庫の扉を開けてみると、皆して所狭しと入っていた。

その姿に安心して私達が大きく息を付くと、ホワイティも安心したように言った。

「いや~、咄嗟に皆でココに飛び込んだのが良かったようで……何とか助かりました……ですが、ちょっと開けてみたら何かドサーっと流れ込んで来て……ゲホゲホッ!」

真っ黒になったホワイティ達が、埃に咳き込みながらヨロヨロと金庫の中から出てくる。

これじゃブラッキーだな……


「怪我は無いか?」

ホワイティが皆を見渡すと、それに素直に頷いている。

「大丈夫です」

とりあえず、皆が無事で良かった。



 一体何が起きたのか聞いてみると、ホワイティは静かに話し始めた。

それによればホワイティ達はあれからずっと中途才洋の調査を続けていたそうだが、

どこからか情報が漏れたらしく急遽調査を中断していた。

そして今日、私達が飛空移動船の工場に向かった後に

中途才洋の部下が近くの工場跡地で待つと伝言を持って来たと言う。


 ほぼ罠であろう事は予想していたそうだが、それも覚悟の上で

皆して武装を固めて向かったそうだが指示された場所には誰も居なかった。

そして仕方なくココに戻って一息ついた時、突然に部屋の床が光ったらしい。

コレはヤバイと皆で金庫の中へ非難して、今に至るとの事だった。


 その話の流れからして、何らかの魔法陣が発動したと考えるのが妥当。

そして、それはホワイティ達が外出している間に仕掛けられたと言う事になる。

つまり奴等は、かなり本気で殺しに掛かって来たと言う事だ。


 試しに床に転がる瓦礫をどけてみると、確かに魔法陣が書かれていた。

その時、遥子が呆れた声を上げる。

「何コレ?」

「ん? どうした?」

おもわず聞くと、遥子は首を振りながら怪訝そうに言った。

「これは、酷い魔法陣ね……少なくとも、魔導士が書いた物じゃないわ。いくらなんでも、あまりに詰めが甘過ぎるわよ。でもさ……もしこんなのをマトモに使ってたら、この一帯が綺麗に吹っ飛ぶわよ?」

「え? そんなに凄いもんなのか!」

私が驚くと、遥子は頷いて続ける。

「えぇ……術式自体は古いけど、半端じゃないわ。だけど、コレを書いたのは素人でしょうね。ほら、そこなんて思いっきり間違ってるし……でも、それで威力が落ちたのは確かよ」

なるほど……

ある意味、そのお陰で助かったと言う事か。


 しかし私が気軽に頼んだ一件が原因で、この事件を引き起こしてしまったのは確かだ。

ひとまず犠牲者が出なかった事だけは良かったが、大切な仲間が襲われた事は

紛れも無い事実。

中途才洋と言う魔物に対して、私の中には相当の怒りが芽生えていた。


 その時、ホワイティが気を使って声を掛けてくる。

「あの……」

その言葉に続けるように私は呟いた。

「その、中途才洋とか言う魔物……」

「はい……」

「私が、必ず抹殺する」

ホワイティに視線を向けると、何故か目を丸くして固まっている。

どうしたのだろうか?

すると、遥子が慌てたように駆け寄って来た。

「ちょっと! この子、驚いちゃってるじゃない! そんな怖い目で見るのは、辞めなさいよ!」

「あぁ……すまない」

私が頭を掻きながら言うと、ホワイティは激しく引きつった笑みを浮かべていた。












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