第三百三十四節 無事に終わったね~……
工場に戻った私達は飛空移動船を降りて、いつもの場所に集まった。
「ひとまず、良い結果が出たわ。これで、魔の大陸へ行くのも問題無いわよね」
満足そうな笑みを浮かべる沙耶に聞いてみた。
「それよりさ……まずは私達には、やる事があるのは解ってるよな?」
「えぇ、それは解ってるわ。だけど、すでに計画は立ってるんでしょ?」
不敵な笑みを見せる沙耶に、私も笑みを浮かべた。
「まぁな……ただ、楽勝と言う訳では無いと思うがな」
「それは、そうでしょうね。だけど、そっちは任せてあるんだから下手な問題だけは起こさないでよね」
そう来たか……
だが裏を返せば、それだけ信頼されていると言う事にも繋がるしな……
まぁイイか……
私は、ふと聞いてみた。
「そう言えば、一人紹介したいと思っているんだが?」
それにも沙耶は、不敵な笑みを浮かべる。
「えぇ、解ってるわ。ホワイト・イベリコの事でしょ?」
おいおい、何で知ってるんだよ!
まったく、どんだけ情報網あるんだか……
「彼等は、間違いなく有能だ。是非、使って貰いたいと思ってね」
私の言葉に、沙耶は納得したように頷いて続けた。
「そう言うと思ったわ。でもね……彼等の事は、私達も以前からマークしてたのよ。悪くない提案だわ。近いうちに、こちらからコンタクトを取ってみるから安心してイイわよ」
「そうか……まぁ君に、そう言って貰えるなら安心だ」
私は、それに納得して頷いた。
その時、加瀬朗さんが不思議そうに言った。
「ところで俺達は、これからどうすればイイんだ?」
「そうね、出来ればここに居て欲しいわ」
そんな沙耶の答えに、更に不思議そうに聞く。
「だが、俺の船はどうするよ?」
それに、親方が答えた。
「それなら、俺の造船所に入れちまったらどうだ? 整備もしといてやるぜ?」
「あぁ? 造船所? んな立派な名前の所は、海軍のしかねぇだろうよ!」
怒ったような加瀬朗さんに、親方はキョトンと答える。
「おう! あそこは、俺が仕切ってるが?」
「マジかよ!」
目を丸くした加瀬朗さんに、親方は不敵な笑みを浮かべた。
「まぁ、問題ねぇだろ?」
「いや、イイのか?」
「今更、何言ってやがるよ兄弟! 運命は、共同体だって良く言うだろうがよ! 何しろバグッタを超えた英雄の船だ! 皆こぞってイジリたがるだろうぜ!」
「いや……俺としては、あんまりイジって欲しくねぇんだが……」
不安な表情を浮かべる加瀬朗さんの言葉など、親方は聞く耳を持たずに大きな声を上げた。
「そうと決まれば、さっそく行くぜ!」
ノリノリで歩き出す親方を横目に加瀬朗さんは何とも情けない視線で
私達に助けを求めてくるが、この勢いはとても止められそうも無い。
「まぁ……きっと先鋭揃いでしょうから、大丈夫だと思いますよ」
同情したように言葉を掛けると、渋々ながら加瀬朗さん達は親方に付いて行った。
沙耶が、軽く息を付きながら私を見る。
「さて……私達は、次の作業に取り掛かるわ」
「ん? まだ何か付けるのか?」
「そうじゃないわ……ちょっと意外な問題があったのよ」
そう言って、暗い表情を落とす沙耶に聞いてみる。
「どうしたんだ?」
すると、ふと飛空移動船を指差した。
「それがね……コレを塗る塗料が問題なの」
塗料?
「もしかして、耐久性が無いとか?」
おもわず聞くと、複雑な表情を浮かべて沙耶は答える。
「確かに、それもあるわ。でも一番の問題は、重量なのよ」
ほう、なるほど。
私が納得すると、沙耶は飛空移動船に目をやって続けた。
「過酷な条件に耐える塗料となると、ビックリするくらいに重くなるのよ。それで今、揮発性の高いまったく違う成分を使った新しい塗料を開発してるわ。そろそろ試作品が出来てる頃よ」
「それは凄いな」
私が少し驚くと、沙耶は笑みを見せて言った。
「まぁ近いうちに完成するわ。心配は無用よ」