第三百三十節 飛空移動船ですね~……その5
操作レバーを駆使しながら、親方に指示された台へ向かっていく。
そこで問題が起きた。
この運転台からは、下が何も見えないのだ。
おもわず聞いてみた。
「あの……下が全く見えませんが、どうすれば?」
「んなもん、勢いに決まってるだろうがよ!」
そう来たか……
感覚で降ろせってか!
しかし、そう言われたからにはやるしかない。
全身の感覚を研ぎ澄ませて、慎重に機体を下ろして行く。
やがて重い金属音を響き渡らせて、無事に機体は台の上に降りた。
「イイじゃねぇか~! やるね~!」
やたらと嬉しそうに親方は続ける。
「そんじゃ、交代だ! お前さんもやってみな!」
それに安は驚いた表情を浮かべた。
「今のを、やるんでやすか?」
「あぁ、そうらしいぞ?」
そう答えながら運転席を立つと、安は目を丸くしている。
だが、しばらくすると割と素直に席に座った。
「えっと……こうでやしたっけ……」
ブツブツ言いながらも少し上昇させると、機体はやたらと不安定に揺れ動いた。
「わっ! わっ! 困ったでやす!」
パニックになりかけた安の肩に手を当てながら私は言った。
「まぁ落ち着け。まずは板の上に丸い球が乗っているような想像をしてみろ」
「え? 球でやすか?」
不思議そうに聞いてくる安に続けた。
「あぁ、板の真ん中に良く転がる球が置いてある。油断するとコロコロと転がって行くからな。それを安定させるように左手を動かしてみるんだ」
「がってんでやす」
すると不思議なくらいに機体が安定してきた。
「そうだ、イイ感じだぞ」
「なんか、解ってきたでやす」
徐々に自信を取り戻した安は、深く頷いて続けた。
「では、行くでやす」
私もそれに素直に頷いた。
ゆっくりと元止まっていた位置に戻してくると、安は真剣な表情で
機体を下ろす事を試みる。
やがて金属音を響かせて着陸した。
それと同時に、安は大きな溜め息を付いて席に項垂れた。
それを、ずっと見ていた親方が言う。
「兄ちゃん、スゲェな。そんな教え方今まで見た事ねぇが、一発で出来ちまうとは大したもんだ! 二人とも上出来だぜ!」
ひとまず親方に合格点も貰った所で、安に言った。
「安は本当に、こう言うの得意そうだよな」
「馬とか生き物はダメなんでやすが、道具の類なら得意なんでやす」
なるほど。
その時、親方が大きな声を上げた。
「それでよ! 二人のどっちかが船長にならねぇとな」
話によると、操船の全ては船長が判断して指示するらしい。
まぁ、客船みたいな物か。
この状況だと、私か安のどちらかになるのは確実だしな。
とりあえず皆に聞いてみた。
「船長が必要らしいんだが、誰が……」
私が言い終わるのを待つ事も無く、全員が揃って私を指差している。
「それでイイのか?」
一応念を押すと、皆は納得したように頷いた。
私は呆れながらも安に視線を向ける。
「そうなると、操船は安の担当になるが宜しくな」
「がってんでやす」