表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/359

第三十三節 長そうだね~……

 国境を通り過ぎようとすると、警備の人が声をかけてくる。

「どちらまで?」

馬車を止めて、それに答えた。

「オニャン公国まで、仕入れです」

「遠くまで、ごくろうさん。お気をつけて」

警備の人は、笑顔で見送ってくれた。


 私達は、いつものように商人になりきって馬車で移動している。

馬車の横には、

『有限会社 今野商店』と書いた看板を取り付けてある。

パンツェッタ港に向かっていた途中で、警備の人に止められた時に

「ちゃんと、会社名は書いとかなきゃダメだよ! 疑われちゃうよ?」

と笑顔で言ってくれたので、大いに参考にさせてもらった。

まぁ出発前にちゃっかり商人登録を済ませてあるので

最悪の場合でも登録書を見せれば何も問題は無いのだが、

考えようによってはコレだけで誰もが商人として見てくれるのだから楽な物だ。


 先日の橋が見える所まで来ると、まだ軍の奴等は橋の上に取り残されている。

ついでに見てやろうと思って、小さな望遠鏡を買っておいた。

見た目は小振りで、いわゆるオペラグラスのような感じだ。

構造もガリレオ式の簡単な物で、倍率も3倍程度しかないが

何も無いよりは遥かにマシである。

長く使うなら7倍くらいは欲しい所だが、

残念ながら売っていなかったので仕方が無い。

それでも遥か遠くの山々にも余裕でピントが合うので、

観劇用に作られた訳では無さそうだ。

もしかしたら、星見用なのかもしれない。


 それで見てみると、兵士達は完全にうなだれている。

中には、大の字で寝てしまっている者も居るようだ。

救援待ちも、大変である……

しかし、あまり構ってる時間は無い。

とりあえず、橋は崩れていないので一安心だ。

私は、また馬車を進めた。


 山道を越えてサイバエの領地に入ると、その景色は一転した。

「なぁ、見てみろよ。凄いぞ」

私の言葉で皆が外を見ると、

「わ~、広~い!」

辺り一面は、田畑に覆われている。。

所々に住宅密集地があるが、

遥か先を見れば、そこは地平線と空が綺麗に分かれている。

目の前に広がる、果てしない平地に皆が圧倒されていた。

「こんな景色、見たこと無いよ」

それに遥子達が頷くと、ダッツとナーヴェは笑顔を浮かべていた。

「あれ? 二人は、来た事あるの?」

私が聞くと、

「えぇ、仕事でなんですけどね……」

何か残念そうな表情を浮かべた。

「そうなんだ……ちなみに、サイバエって名所とかあるの?」

その質問に、二人は首を振っている。

これが、全てかよ……この国は……

「でも、宿くらいは、あるよね?」

それに、頷きながら答える。

「えぇ、この通りは物資の輸送以外に駅馬車も走りますので、

定期的に開けた所があります」

なるほどね……

「お、あった。ちょっと休憩しよう」

私が見つけたのは、無人の給水場だ。

馬は車と違って、時折水を飲ませてあげないとバテてしまう。

人も休めるようにトイレなども設置してあるが、本当に簡易的な物だ。

まぁ、どちらがメインかと言えば、馬なのだから仕方が無い。

私が馬車を点検していると、

「ねぇ、あれ何?」

歩いて行く方向を見ると、

何やら作物らしき物が積んである。

「お~い、勝ってに触るなよ~」

声を掛けてみるが、聞く耳を持たないようだ。

「お芋かな?」

「きっと、そうだよ!」

その時、男性の大きな声が聞こえた。

「What time is it now!」

それに、遥子が腕を見て答えた。

「10時半ですよ」

おいおい……芋の事だってば……

ってか、腕時計してたんだ……


 何やらお互い言葉が通じていないようなので、私はすぐに駆け寄った。

とりあえずチェックのネルシャツみたいな服を着た人の前に立つ。

どこかの芸人が外人に変装したような雰囲気を醸し出している農家の人に

悪気が無い事を伝えてみた。


 しかし何だ? このアメリカ訛りみたいな言葉は……

「ハジメ~テダトハ~、シリマセンデシ~タ」

激しく、聞き難い……

これから、こんなのばっかりだったら嫌だな……

話しついでに、聞いてみた。

「これは、貴方が作っているんですか?」

「ソ~ウデ~ス」

「へぇ、立派な芋ですね」

「Alligator」

その時、遥子が突然飛び上がるように取り乱し始めた。

「何? ワニでしょ? どこ? ワニどこ?」

いやいや……

「彼は、ありがとうって言ったんだよ……」

私の言葉に、遥子は胸を撫で下ろした。

こんな時は、下手に英語が聞き取れると厄介である……


 馬車の準備が終わると、彼は芋を10本ほど分けてくれた。

「ありがとうございます」

私達は、笑顔で別れを告げて出発した。


 彼の話によると、この先で問題が起きているらしい。

聞き取るのは、大変だったのだが……


 それよりも問題と言うのは、この先で5日前に爆発騒ぎが起きたそうだ。

それによって検問が出来ているので、通るのが面倒になっていると言う。

ここを通る駅馬車も、この数日は見ていないそうだ。


 だが火薬の無い世界で、爆弾と言うことは無いはず。

何かしらの、魔法が使われたと考えるのが妥当だろう。

ならば、魔法テロか?

何を目的としているのかは知らないが、私達にしてみれば大迷惑でしかない……

かなり心配である。














評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ