第三百二十七節 飛空移動船ですね~……その2
光が消えて行くと、そこは飛空移動船の工場前だった。
ふと横を見ると、加瀬朗さん達は目を丸くして驚いている。
「おいおい、どこだよココ……ってか、何が起きた?」
「この中に、飛空移動船があります。それは以前に、加瀬朗さんの船で使った魔法ですよ」
「あぁ、あの真っ白くなるのがそうか! しかし姉ちゃん、とんでもねぇ事しやがるな!」
腕を組みながら納得する加瀬朗さんに、遥子は笑みを浮かべていた。
とりあえず工場の中へ歩いて行くと、飛空移動船を覆っていたカバーが外されていて
妙にキラキラした機体が見えた。
当初は木製の機体だったが、完全に金属化されたようだ。
さらに全体がふた回り程大きくなっている気がする。
だが違うのは、それだけではない。
後ろにはロケットのようなドデカイ噴射口のような物が4つデ~ンと付いている。
何つうモン作ったんだよ。ミサイルじゃないんだから……
「おい、アレがそうか?」
それを見て目を輝かす加瀬朗さん達に、私は頷く。
「さっきまで覆いが掛けてあったので、私達も見たのは初めてです」
「そうか! 何かスゲェな……」
そんな言葉に、私は改めて頷いて呟くように言った。
「ですね……」
私達が歩みを進めて行くと、沙耶達が見えた。
徐々に近づいて行くと、沙耶が気付いて手を振っている。
私達も、それに答えるように手を振り返した。
目の前まで来ると、沙耶は加瀬朗さんを見て言った。
「おひさしぶりね、相変わらず元気そうじゃない?」
「おうよ! 俺から元気を取ったら何も残らねぇからな!」
その時、親方が不思議そうに聞いてきた。
「なぁ、あんた。もしかして、あの海奈良間加瀬朗さんかい?」
「おう! 俺が加瀬朗だ!」
元気良く答えると、親方が目を丸くする。
「そりゃスゲェ! バグッタを超えたって噂は聞いてるぜ~! いや~、こんな所で会えるとは思ってなかったな!」
すると、加瀬朗さんは照れるように笑みを浮かべて答えた。
「いや~……アレを超えられたのは、この兄ちゃん達のお陰さ! 俺達だけじゃ無理だったろうさ」
その言葉を聞いた親方は、私に視線を向ける。
「ほう……そりゃたいしたもんだ。いや、驚いたね~」
その時、沙耶が話に割り込むように聞いてきた。
「それより、一緒に乗ってくれるんでしょ?」
「あぁ、そのつもりで来たぜ?」
加瀬朗さんが答えると、沙耶は親方に視線を移す。
「だったら教えてあげないとダメなんじゃない?」
すると、思いだした様に答えた。
「おう! そうだな! じゃさっそく来てくれるか?」
親方に案内されて、付いて行く加瀬朗さん達を見送りながら沙耶に声を掛ける。
「ちょっとイイか?」
「何?」
不思議そうにする沙耶から視線を外して、飛空移動船を指差す。
「なぁ? あの後ろにあるのは何?」
それに自信に満ち溢れた表情で答える。
「あれはアフターバーナーよ。世界初の試みだわ」
「え? 試作なの?」
おもわず驚くと、沙耶は呆れたような表情を浮かべながら答えた。
「あたりまえじゃない! そもそも、あんな大きい浮遊鉱石で飛ばした事例なんて無いんだから! 他の装備も全部初めての試みばかりよ!」
マジッすか……いきなり大爆発とかしないだろうな?