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第三十二節 奴等からの視線

 その時、怒号が響いた。

「何? 伊蔵が殺されただと? どういう事だ!」

頭を下げて並んでいる部下の一人が、雑誌を開いて渡した。

「あ? ヨウジョ・ジャパンだ? こいつ等に、殺されたと?」

それに、揃って皆が頷く。

「ふざけんじゃね~! 判ってるなら、とっととブッ殺してこい!」

その声に、動く者は誰も居ない。

「この、腑抜け共が!」

近くの台に、雑誌を思い切り投付けた。

その時、並んでいる一人が怯えながら言った。

「あの伊蔵様が、一瞬にしてやられたのです。もはや我々では、勝ち目など無いかと……

ここは、あちらに報告するべきではないでしょうか?」

それに、怒りを露にした。

「馬鹿野郎! んな事したら、俺達が始末されちまうだろうがよ!」

「いや……しかし……」

「しかしも、カカシもあるか! 向こうに知られる前に、その何とかって奴等を抹殺するんだ!」



 宿の前まで辿り着くと、そいつは言った。

「間違いなく、ここなんだろうな?」

「はい……それを見れば、判るかと……」

そこには『勇者ご一行様 宿泊施設』と書いてある。

「んなこたぁ判ってら! 行くぞ!」

カウンターまで来ると、呼び鈴を連打する。

「誰か、いねぇのか?」

奥から一人のウェイター風の男が、慌てた様子で走ってきた。

「はい! お泊りですか?」

「そうじゃねぇ。ここに、勇者の一行が居るって聞いたが何処にいる?」

それに、男は残念そうな顔を浮かべる。

「申し訳ございません。今朝、早くにお発ちになりました」

「あぁ? いねぇだと? いったい、何処に行ったんだよ!」

そいつはカウンターに身を乗り出して、男の胸倉に掴みかかった。

「いえ! 行き先は、聞いておりません! 申し訳ございません」

それを聞いて、投げ付けるように手を離した。

「ちっ! 他を当たるぞ!」

そいつ等は、諦めきれない様子で宿を出て行った。


 一人が、また怯えながら言う。

「何処かに行ってしまったのなら、このままでも宜しいのでは?」

その一言が、また怒りに火をつけた。

「馬鹿野郎! 草の根分けても探し出すんだ! さっさと見つけて来やがれ!」

部下達は蹴散らされるように、人込みの中へと散らばって行った。



 そして、数時間後……



 アジトで、そいつは怒りに燃えていた。

「だから、何で見つからねぇんだよ!」

その怒号に驚き、萎縮しながらも状況を説明する。

「ですから、全く足取りが掴めないんです……」

「んな訳ねぇだろ! どう考えても、目立ちそうなもんだろうが!」

間髪居れずに怒鳴りつけるが、部下は他に答えようが無い。

「それが、まるで消えたようでして……」

「消える訳あるか! この馬鹿者が! 誰かしら見てないのか!」

「いえ……町外れの警備も、そんな目立つ一行は見ていないと……」

そいつは、台を激しく叩き付けた。

「ちくしょうめ……奴等、いったい何処に行きやがったんだ……」









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