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第三百十五節 会いに行きますかね~……その2

 案内されるまま建物に入って行くと、地味な外見とは違って中は凄く綺麗だ。

周りを見渡すと可愛らしい絵が描かれた壁に子供達の絵などが沢山貼り付けてあって、

何となく幼稚園のような雰囲気に思える。


 園長に付いて行くと、ふと振り向いた。

「こちらが面会室になっております。お話が終わりましたら、声を掛けてください」

「本当にありがとうございます」

また深く頭を下げると、園長は神妙な表情を浮かべて言った。

「いえ、こちらこそ申し訳ございません。最近、子供達を巧みに誘う輩が多いもので……本当に申し訳ございません」

「そうなんですか……それは危ないですね。それならば、警戒するのも致し方ありません」

私の言葉に同調するように、園長は怒りを露にする。

「本当に困ったものです。子供を騙すなんて許せませんわ!」

そう言った所で、ハッとして続けた。

「あっ、年恰好が貴方に少し似ていたもので……ごめんなさいね~」

私は、それに素直に頷いて聞いてみる。

「それは、どんな奴なんです?」

すると困ったような表情を浮かべながら、手の平を私に向けて下に降ろした。

「それがね~……黒いマントに魔法使いみたいに大きな帽子をかぶってて、鼻がクチバシみたいに高い人らしいのよ~」

どこが似てるんだよ! それ怪し過ぎるだろ! 

遥子がケラケラと笑っているのを横目に見ながら、私は園長に言った。

「では、もし見かけたら捕まえておきます」

「それは助かりますわ~、お願いしますね~」

そう言って去っていく園長を見送ってから、私達は面会室に入った。



 部屋に入ってみると、そこは飾りっ気がなく相当に地味な雰囲気だ。

妙に事務所的なソファーに腰をかけながら、彼に聞いてみた。

「色々ドタバタしていて、君の名前を聞くのも忘れていた。教えてもらってイイかな?」

「あっ! そう言えば、そうですよね! 僕は間留洋マトメ・ヨウです。皆には、洋って呼ばれてます」

私は、それに頷いて続ける。

「では改めて洋に聞くが、外泊なんて出来るか?」

「え? いや、外泊ですか……それは、よほどの事情が無いと無理です。外出なら何とか大丈夫ですが……」

なるほどね~……

「そうか……ならば、当日に迎えに来るしかないか……」

私が腕を組んで考え込むと、洋は心配そうに聞いてきた。

「あの……どうしたんです?」

「あぁ……パンツェッタの魔法学校に、魔物が集まる時が近づいている。そこに総左遷丈も来るはずだ。私は、この機会を逃したくない」

すると、真剣な表情を浮かべて聞いてきた。

「どうするつもりなんですか?」

「君に、総左遷丈を説得してもらいたいんだ」

「え? 僕がですか?」

驚く洋に、私は頷いて話を続ける。

「洋の話で、これまで疑問に思っていた事が理解できた。つまりパンツェッタに集結する魔物の中には、総左遷丈の考えを理解できるような味方など居ないと考えて良いだろう。私はこの機会に、大陸に潜む魔物どもを一掃するつもりだ。だが、総左遷丈を殺す気は無い。しかしその状況で、私が何を言っても本人が納得するとは思えないんだ。それを可能にするには、洋の協力が必要なんだよ」

私の言葉に、洋は神妙な表情を浮かべている。

そして、しばらく間を置いてから答えた。

「わかりました……でも、説得できなかったら?」

そう来たか……

「あまり考えたくないが、説得に応じなければ敵として見るしかない。つまり……斬る事になる……」

すると洋は、寂しそうに微笑んだ。

「そうですよね……やっぱり、そうなりますよね」

「なるべくなら、そうしたくないんだ。それだけは、解って欲しい」

その言葉に、洋が突然に怒った。

「どう解れって言うんですか!」

私は、おもむろに人差し指を立てる。

「実は総左遷丈を説得する役が、もう一人居るんだ」

「はい?」

キョトンとする洋に、私は続けた。

「それは騎士団を実質的に仕切っている人物で、エラクナ・リテイゼと言う騎士だ。彼は、総左遷丈の直属の部下でもある」

それに洋は、驚いて目を見開いた。

「あっ、聞いた事あります。鬼のエラクナですよね? まさか、知り合いなんですか?」

「あぁ、そうだ。実際、彼にはこれまで随分助けられているんだ。そして、彼は今回の説得にも快く応じてくれた」

ふと視線を落とした洋は、静かに息を付いて呟く。

「そこまで準備していたなんて……」

そして、私に視線を戻した。

「お気持ちは、本当のようですね。解りました、僕が説得してみます」












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